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    風力発電の適地探せ…騒音、景観など考慮

     導入が拡大する風力発電をめぐり、あらかじめ騒音や生態系への影響、風速などを調べ、立地に適した場所を探る「ゾーニング」を行う自治体が増えている。住民らの意見を聞きながらゾーニングを進めることで、騒音や景観悪化を理由にした反対運動を未然に防ぎ、風力発電を円滑に導入できるようにする狙いがある。環境省も昨年度から、ゾーニングの拡大に向けたモデル事業を始めた。


    地域に合う可能性

    • 風速を観測する装置を説明する鳴門市職員の岩下さん(6月30日、徳島県鳴門市で)
      風速を観測する装置を説明する鳴門市職員の岩下さん(6月30日、徳島県鳴門市で)

     渦潮で有名な鳴門海峡を望む徳島県鳴門市の海岸近くに、1辺が約50センチのサイコロ形の白い機器が置かれている。洋上風力発電所を建設するのに適した海域を探るため、市が環境省の支援を受けて昨年12月に設置した風速測定器だ。

     上面から空に向けてレーザーを照射し、海岸付近の上空を常時観測している。1年を通じて平均6・5メートルの風が吹いていることが採算の目安。評価対象となる市南東の沖合約57平方キロ・メートルの海域は、航行する船舶が多く、漁業も盛んだ。鳴門市に隣接する町には空港もあるため、航路への影響も考慮する必要がある。

     現地を案内してくれた市環境政策課長の岩下彰秀さん(48)は「冬には鳴門海峡を抜けてくる強い北西風も期待できる。漁業者とも意見交換しながら、約5万キロ・ワット分の風力発電を想定した適地を示したい」と話した。

     鳴門市は今年5月、世界自然保護基金(WWF)ジャパンなどと協力して、陸上での風力発電の導入可能性を評価して、色分けしたマップを公表した。地元の動植物に詳しい専門家と協議を重ね、渡り鳥が飛ぶ経路や、特に自然の保護が必要な地域を抽出。市内の自治会長約70人の意見も聞き、騒音や、景観の問題が発生する地域を設定した。

     その結果、市の面積の約8割が「原則として立地不可」の「赤」で、最も導入の可能性がある「黄」は1割未満にとどまった。調査を担当したWWFジャパンの市川大悟さん(33)は「陸上に適地が少ないことがわかり、洋上風力という次のステップに進むことができた」と語る。

    紛争防ぎ円滑に

     環境省や日本風力発電協会によると、全国の風力発電の設備容量は2015年度、約320万キロ・ワットだったが、環境影響評価の手続きが完了、または実施中の計画段階の設備容量は、その2・5倍以上に当たる約820万キロ・ワットに達した。風力発電の導入拡大に伴い、計画に反対する住民との紛争も目立ち始めている。

     村山武彦・東京工業大教授(環境計画)(56)の調査によると、12年までの風力発電計画155件の約4割に当たる59件で紛争が起きていた。野鳥が風力発電施設に衝突する「バードストライク」の影響や、回転する風車の騒音、景観悪化などを理由とする反対運動が多く、うち30件は、計画の中止や凍結に追い込まれたという。

     ゾーニングの過程に住民の意見を聞くプロセスがあるため、紛争が生じそうな場所を避けて、立地計画を進める効果が期待されている。村山教授は「ゾーニングは地域にどれぐらい風力発電を導入できるかを見積もる重要な手段。風力発電の導入が進むほど適地は限られてくるため、ゾーニングの意義は大きい」と指摘。環境省の担当者は「結果として、着工までの期間短縮にもつながる」と期待する。

     市川さんによると、風力発電の導入が進む欧州では、自治体によるゾーニングはすでに一般的になっている。ドイツでは、連邦政府の導入目標が各州に割り振られ、州政府が目標を達成するため、ゾーニングで適地を設定している。

     環境省は鳴門市のほか、北海道石狩市、長崎県西海市など10自治体でゾーニングのモデル事業を進めており、得られた知見を基に、自治体向けのマニュアルを来年度中に作成する方針だ。(大山博之)

    2017年07月17日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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