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    国立公園 廃屋撤去しイメージ改善

    • 廃屋の撤去などが進む日光国立公園
      廃屋の撤去などが進む日光国立公園

     環境省や自治体は、全国の国立公園内で廃業したホテルや食堂などの施設が放置されて景観の妨げになっていることから、廃屋の撤去に本格的に乗り出した。

     国立公園を重点的に整備する「国立公園満喫プロジェクト」の一環。電柱の地中化や新たな観光施設の整備も進めることで訪問者数を増やし、自然保護の意識向上につなげたい考えだ。

    景観悪化

     青森、岩手、秋田県にまたがり、景勝地として名高い十和田八幡平国立公園内にある十和田湖畔。南岸に位置する「休屋やすみや地区」を歩くと、玄関や窓に板を打ち付けた食堂や廃ホテルが目立つ。雄大な自然や、詩人で彫刻家の高村光太郎が作ったブロンズ像「乙女の像」を楽しむことができ、かつては修学旅行生をはじめとする観光客でにぎわっていた。だが、東日本大震災後に廃業が相次ぎ、廃屋が十数軒に上るようになった。

     「暗いイメージがつく」など、地元関係者らの声を受け、同省は同地区の国有地内にある廃屋の撤去を進めることを決めた。2020年度までに撤去し、跡地には開放的な芝生広場などを整備することで、廃屋で遮られていた湖畔の景色を見やすくする。

     休屋地区で飲食店を経営する男性(47)は「景観改善は待ち望んでいた。寂れたイメージを変えるきっかけになるかもしれない」と歓迎する一方、「一つ二つ解体しただけでは人気は回復しないだろう。整備の継続と、人を呼び寄せるソフト面の対策も必要になる」と課題も指摘した。

    人気に格差

     国立公園は現在、全国に34か所あるが、交通の便や知名度によって人気に差がある。ピークの1991年には、国立公園全体を延べ4億1596万人が訪れた。同年の訪問者は、富士山のある富士箱根伊豆国立公園は同1億1434万人、十和田八幡平は同1067万人、阿寒国立公園(北海道)は同697万人だった。

     その後の景気の冷え込みや東日本大震災の影響などで、14年には全体数が同3億5218万人に減少。だが、富士箱根伊豆の人気は衰えず、逆に1億2390万人に増えた。一方で、十和田八幡平は474万人、阿寒は360万人に減って差は広がった。

     十和田八幡平だけでなく、訪問者数が伸び悩む地方の国立公園などで、廃業後の施設が放置されるケースは多く、訪問者から「寂れた地域」「がっかりポイント」などと酷評されることもある。現状を重く見た環境省は、各公園内の国有地内に残されたままの廃屋を撤去または改修し、広場や観光施設などに活用してもらうこととした。各自治体の土地や私有地内の廃屋については、自治体に交付金を活用してもらうなどして再整備を促すことにした。

    訪問客増を期待

     大山隠岐国立公園(鳥取、島根、岡山県)では、鳥取県大山町が、公園内にある寺院の参道周辺で景観改善に取り組んでいる。2年前に廃業した飲食・宿泊施設を国の交付金を活用して改修し、今年7月、観光案内所やカフェを備えた施設として生まれ変わった。また、廃業した山荘の解体作業中で、跡地に来年度、商業施設をオープンさせる予定だ。さらに同県は、大山の眺望を遮る電線・電柱を地中化することを検討している。

     日光国立公園(福島、栃木、群馬県)では、温泉地にあるバスの停留所前で、廃業後に放置されたガソリンスタンドを撤去する予定だ。同省関東地方環境事務所の担当者は、「バスを降り立った観光客を、すぐに落胆させたくはない」と話す。阿寒では温泉街の廃屋の撤去方法を検討中。阿蘇くじゅう国立公園(熊本、大分県)では、見通しを遮る立ち木の伐採などを行う予定だ。

     環境省の担当者は「国立公園の目的は、貴重な自然を保護すること。ただ、影響のない範囲で多くの人に美しい風景に親しんでもらい、自然保護への理解につなげてほしい」として、訪問客増に期待している。(野崎達也)

    国立公園満喫プロジェクト
     国が財政支援し、自然の景観に溶け込むリゾートホテルの誘致や、長期滞在型の自然体験ツアーの拡充などを進め、海外などに発信する取り組み。環境省は2016年に「阿寒」や「阿蘇くじゅう」など8の国立公園をモデルに選定。16、17年度予算で計約200億円を計上している。
    2017年07月31日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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