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    適正管理の森林 国際団体がお墨付き

    五輪施設で認証材の利用推奨

    • 重機を使った県有林の切り出し作業。2か月かけて9ヘクタール分を伐採、出荷する(7月31日、山梨県北杜市で)
      重機を使った県有林の切り出し作業。2か月かけて9ヘクタール分を伐採、出荷する(7月31日、山梨県北杜市で)

     環境に配慮して管理されている森林に対して国際団体などがお墨付きを与える「森林認証」を取得する動きが国内で広がっている。

     「伐採後の植林が適切か」「生物多様性が守られているか」などの基準を満たした山林から切り出された木材には認証マークが付けられ、一般の木材と区別して販売される。2020年の東京五輪・パラリンピックで、認証材の利用を促す方針が示されたことが、取得への追い風となっている。(小林雄一)

    ブランド力

     山梨県北部の北杜市。標高1600メートルの山中で、1台の重機がうなりを上げていた。アームを動かし、運ばれてきたカラマツをつかみ上げ、切断する。県有林の出荷作業だ。作業を任されている木材生産会社「山梨中央林材」の内田吉郎さん(45)は「県有林には認証というブランド力がある。必ず売れるから、一年中、仕事が途切れることがない」と汗を拭った。

     県土の3分の1を県有林が占める山梨県。昭和30年代に植林されたカラマツやヒノキが多く、伐採の適期を迎えている。同県は03年、全国の公有林では初めて、国際的な森林認証「FSC」を取得。県有林の9割にあたる14万3000ヘクタールが認証を受けている。

     同県の県有林課は「認証は、国際基準により山林が適正管理されていることの証し。環境保護への意識が高い企業などに販路が広がってほしい」と期待を寄せる。コンビニチェーンの一部では、木造店舗の建設時に山梨県の県有林を使用。また住宅メーカーや製紙会社からも注文が相次いでいるという。

    国内森林の8%

     国際的な森林認証は、ドイツに本部がある「FSC」と、スイスの「PEFC」の2種類がある。日本の林業団体は、国内の小規模経営の山林に合わせた独自基準「SGEC」を定めており、相互承認で国際的にはPEFCとして認められる。

     認証は、森林管理部門と加工・流通部門の2種類に分かれ、林野庁によると、森林管理部門の16年の認証林面積はFSCとSGECを合わせて計195万ヘクタール。国内の森林全体の8%で、10年前の約3倍まで増えた。山梨県のほか、林業が盛んな北海道や静岡県で認証の取得が進んでいる。また、民間の森林組合や製紙会社などが持つ山林にも広がっている。

     認証では、環境コンサルティング会社などの認証審査機関が山林や木材加工業者などに出向き、現場を確認する。SGECでは、約100項目の審査基準を設定している。例えば、森林管理部門では、「伐採で沢に土砂が流出しないか」「植林の際に土壌浸食の防止などの保全策がとられているか」など、細かな手順を点検する。

     取得後も年1回の監査、5年ごとの更新が必要だ。林野庁は「山林の管理水準が向上し、木材を輸出する際のアピールポイントにもなる」と認証取得を後押ししている。

    木材「五輪特需」

     東京五輪・パラリンピックでは、主会場の新国立競技場の建設に国産材が使われる。選手村など各種施設の建設も相次ぎ、木材需要が一気に高まるとみられている。大会組織委員会は昨年、「持続可能性に配慮した木材の調達基準」を公表し、認証材の使用を推奨する原則を示した。

     東京大学の白石則彦教授(森林経理学)は「かつては作業道を作るために沢を土砂で埋めたり、伐採した木の枝を沢に捨てたりしていた」と林業現場での問題点を指摘した上で、森林認証について、「環境への影響が厳しく審査されるので、現場の意識が変わる。それが山林の全体を守ることにつながる」と評価。認証を得るために木材生産業者と山林所有者が連携することで、「間伐などの作業が効率化し、木材の安定出荷にもつながる」とみている。

    2017年08月14日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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