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    勢力伸ばす外来害虫

    身近な場所に 生態系脅かす

     南米原産で強い毒を持つ「ヒアリ」が各地で発見される中、ほかの外来種も分布を広げている。20年以上前に日本に侵入した外来種の毒グモ「セアカゴケグモ」や、攻撃性の強いハチ「ツマアカスズメバチ」といった外来害虫は人の生活圏でも生息し、健康や生態系を脅かしている。環境省はこれらの特定外来生物がこれ以上拡大しないよう、防除などの対策を強化する方針だ。

    44都道府県で発見

     「発見した場合には、触らずに近くの警備員にお知らせください」

     東京ビッグサイト(東京都江東区)では8月上旬、敷地内などでセアカゴケグモが34匹発見され、注意を呼び掛けるポスターが掲示された。開催中のイベントを訪れた都内のパート女性(37)は、「聞いたことのあるクモだと思った。毒があると思うと怖い」と不安そうに話した。

     セアカゴケグモは、かんだときに神経毒を出すメスが体長0・7~1センチ、毒のないオスは同0・5センチ程度。豪州が原産だが、1995年に大阪府高石市で初めて確認された。海外から輸入されたコンテナに付着していたとみられ、その後、兵庫や和歌山など関西を中心に分布を広げた。環境省幹部は「発見当初は外来生物法が出来る前で、外来種に対する理解も低く、初動が十分とは言えなかった」と振り返る。

     環境省や各都道府県の発表をまとめたところ、8月末現在、青森、秋田、長野の3県を除く44都道府県で、セアカゴケグモが見つかっている。暖かい場所を好むとされてきたが、この5年で一気に北海道、東北や北陸にも広がった。東日本大震災の復興や、新幹線の建設のために運搬された大量の資材に付着して広がった可能性がある。

    痛みや呼吸障害

     国内でセアカゴケグモにかまれて全身の痛みや呼吸障害を起こした例は多数報告されているものの、死亡例はない。今年6月には福岡市で、6歳の男児がセアカゴケグモにかまれたとみられる痛みなどの症状が出たが、すぐ回復した。

     住宅街や学校など身近な場所で見つかることが多い。臆病で、攻撃してくることは少ないが、かまれた場合は血清による治療が必要な場合もあるため、すぐ医療機関に相談した方がよい。

     国立環境研究所生態リスク評価・対策研究室の五箇ごか公一室長は「発見時は騒がれたものの忘れられ、いつの間にか増えてしまった。根絶は難しいが、庭や公園といった人が多い場所からは排除するよう対策を進めるべきだ」と指摘する。

    少ないうち駆除急ぐ

     長崎県・対馬で分布が広がり、九州本土でも見つかり始めたのがツマアカスズメバチだ。

     中国、東南アジアなどが原産で、何度も攻撃を繰り返すどう猛さを持ち、繁殖力も強い。国内では2012年10月に対馬で初めて確認され、島内で定着してしまった。これまで北九州市で巣が、宮崎県日南市で女王バチが見つかっているが、定着しているのは対馬だけとみられる。

     在来種よりも大きな巣は直径1メートルを超える。ほかの昆虫を捕食し、ミツバチや在来のスズメバチを襲うこともある。天敵は少ない。在来のスズメバチと同様に、刺されたら強い痛みと腫れが出るほか、急性のアレルギー症状の「アナフィラキシー」が起き、最悪の場合は死に至る可能性もある。対馬では農作業中の人が刺されたり、養蜂のミツバチが襲われたりする被害が報告されている。

     国立環境研究所では、殺虫剤を含んだエサをハチの巣に持ち帰らせて、巣の幼虫から根こそぎ駆除する手法の試験を行っている。五箇室長は「外来種対策は初動が肝心で、数が少ないうちに対処するのが効果的だ。ツマアカスズメバチは今ならまだ根絶は可能なので、生息の兆候があればすぐワナを設置するなどの対応をしたい」としている。(野崎達也)

    特定外来生物

     生態系などに被害を及ぼすとして、2005年に施行された外来生物法で輸入や飼育、野外に放すことなどが原則として禁じられた外来の動植物。同法に違反すると懲役や罰金が科せられる。ヒアリ、セアカゴケグモを含むゴケグモ類、ツマアカスズメバチのほか、アライグマやカミツキガメなど132種類が指定されている。

    2017年09月11日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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