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    象牙 中国へ持ち出し続く

    「日本は抜け穴」海外で批判も

     絶滅の恐れがあるアフリカゾウを保護するため、ワシントン条約で国際取引が禁じられている象牙を巡り、国内取引を認めている日本から、象牙製品を不正に中国に持ち出そうとするケースが後を絶たない。アフリカの一部の国々からは日本の国内市場の「抜け穴」を非難する声が上がるなど、風当たりが強まっている。

    「貴重な客」

     東京都台東区の商店街にある土産物店。象牙でできたブローチや印材などの装飾品がずらりと並び、中国語を話せるスタッフが店番をしている。日本から中国に象牙製品を持ち出すことは禁じられているが、「外国人に対する販売自体は合法。象牙を買う日本人はほとんどいないが、中国人は貴重な客」と話す。

     別の販売店は、訪日観光客への販売は自粛しているというが、「『日本に住んでいる』と言われたら販売を断るわけにもいかない」と打ち明けた。

     日本はかつて世界一の象牙輸入国で、ワシントン条約の締約国となった翌年の1981年から89年まで約2000トンの象牙を輸入。これが現在も国内で取引されている。一方、経済産業省などによると、中国では国内市場の閉鎖を進め、取引価格は日本の3~4倍まで上がっているという。

     ワシントン条約事務局(ジュネーブ)によると、2011~16年に日本から中国へ輸出された象牙が中国で差し止められる事例は100件以上あった。

     環境NGO「トラフィック」(東京都港区)の昨年6~8月の調査では、東京、大阪、京都にある象牙販売店のうち約7割が「海外への持ち出しが可能」と客に説明していたという。インターネット上では、象牙製品を中国語で出品したり、海外発送をうたったりする業者もあるという。

    イメージ悪化懸念

     16年9~10月の同条約締約国会議では、象牙について「密猟や違法取引を助長する国内市場の閉鎖」が勧告された。日本は種の保存法を改正し、象牙を取り扱う事業者を届け出制から登録制に変更して管理強化に乗り出すことにした。

     しかし、アフリカゾウが生息するケニアなど4か国は、昨年11~12月の同条約常設委員会に「日本の国内市場は抜け穴が多い」と日本を批判する議案を提出。日本は次回の会議で違法取引撲滅に向けた取り組みを報告することとなった。

     こうした流れを受け、インターネット通販各社の間では、イメージ悪化を懸念して取引をやめる動きも広がっている。

     フリーマーケットアプリ大手のメルカリは昨年11月、象牙製品の出品や取引を禁止した。同社は「グローバルな事業展開にあたり、市場の閉鎖を求める国際的な動向を考慮した」と説明。ネット通販大手の楽天も同7月に取引停止を決めた。イオンも「東京五輪で訪日外国人からの視線が気になる」として、2020年3月までに販売をやめる方針だ。

    業界は困惑

     批判の高まりに国内では戸惑いも広がる。日本の象牙の産業規模は1989年から10分の1に縮小したが、髪飾りや彫り物などの工芸品がある。「日本象牙美術工芸組合連合会」の大熊俊夫会長は「後継者不足や取扱店の減少を心配している。日本に象牙が大量に密輸入されている証拠はなく、誤解されている」と話す。

     政府は25日、民間団体や有識者を集めた官民協議会を開き、対応を議論する。中川環境相は12日の閣議後記者会見で「世界が日本を見る目は厳しい」と述べた。

     象牙取引の問題に詳しい石井信夫・東京女子大学教授(保全生態学)は「合法的な取引の禁止は必ずしもゾウの保全につながらず、かえって密猟や違法取引を助長することもある。日本は違法な取引を排除する努力を強化し、国内の関連産業や市場を維持することで、取引から得られる収益でゾウの保全に努める原産国を支援すべきだ」としている。(中根圭一)

    ワシントン条約

     絶滅の恐れのある野生動植物を保護するため国際的な取引を規制する条約。1975年に発効し、昨年12月現在、183の国・地域が加盟する。野生動植物の爪や骨など、体の一部を利用した加工品も取引の規制対象とし、象牙は90年に取引が禁止された。ボツワナ、ナミビア、ジンバブエ、南アフリカの4か国の象牙については、条約に基づく承認を受ければ取引できるため、日本は99年に約50トン、2009年に約40トンそれぞれ輸入した。

    2018年01月22日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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