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    ソメイヨシノに新害虫

    クビアカツヤカミキリ 高齢化・衰退に追い打ち

     日本の春を彩る桜を代表するソメイヨシノに、外来種の被害が拡大している。戦後、全国に植えられ、高齢化による衰退が進む身近な桜に追い打ちをかける害虫被害。対策が遅れれば、被害が全国に広がる恐れがある。

    外来種

     「昨年だけで新たに県内の16か所で被害が出た。拡大は食い止められていない」

     埼玉県寄居町で7日、外来種の害虫クビアカツヤカミキリの対策について、県内の自治体職員向けの説明会があった。中国など東アジアを中心に分布し、幼虫がサクラやモモなどに寄生して木を弱らせたり、枯らしたりする。2012年以降、東京、大阪を含む7都府県で見つかっている。被害の多くはソメイヨシノだ。

     説明会の参加者は、この日、寄居町に隣接する深谷市の桜並木を視察した。用水路沿いの約40本あるソメイヨシノのうち10本以上で被害が確認されている。埼玉県環境科学国際センターの三輪誠・担当部長がクビアカツヤカミキリが幹に開けた穴に針金を差し込むと、20センチ近く奥まで入った。

     三輪さんは「1匹侵入しただけで、内側に相当大きな空洞ができる。水や栄養分が十分に行き渡らなくなり、枯れてしまう可能性がある」と説明した。

     被害の拡大を受けて環境省は今年1月、クビアカツヤカミキリを特定外来生物に指定。センターでは被害防止の手引を作成し、地方自治体などへの注意を呼びかけている。

     江戸時代の末期に品種として開発されたソメイヨシノは、戦後の都市開発や公園整備に伴って全国各地に広まった。多くのソメイヨシノが一斉に樹齢40~50年以上の「高齢」に達し、衰えが目立つ。三輪さんによると、高齢のサクラは樹皮に割れ目ができやすく、クビアカツヤカミキリには格好の産卵場所だ。食害が広がる背景には、老木が増えた影響もありそうだ。

    遅れる開花

    • クビアカツヤカミキリの食害に遭った桜並木を視察する自治体職員ら(7日、埼玉県深谷市で)=蒔田一彦撮影
      クビアカツヤカミキリの食害に遭った桜並木を視察する自治体職員ら(7日、埼玉県深谷市で)=蒔田一彦撮影

     昨年、鹿児島県のソメイヨシノ開花は、観測史上最も遅い4月5日だった。東京、大阪、福岡などは3月中に開花しており、金沢(4月4日)よりも遅かった。冬の気温が高かったことが一因と考えられている。

     ソメイヨシノは、夏から秋にかけて、つぼみの成長が止まる「休眠」状態に入る。冬に一定期間、低温にさらされると休眠が終わり、春の気温上昇に伴って開花する。12~1月が暖かいと休眠の終了が遅れ、開花も遅くなる。

     伊藤久徳・九州大名誉教授(気象学)らの研究チームは、地球温暖化の対策が進まなければ、ソメイヨシノの開花は本州で早まる一方、九州南部では遅れ、21世紀末には開花しなくなる地域も出ると予測する。伊藤さんは「九州では桜前線が福岡から鹿児島に向かって南下することが常態化するだろう」と話す。

    脱ソメイヨシノ

     高齢化や温暖化への対応が迫られる中、ソメイヨシノ一辺倒を見直そうという動きも出てきた。

     桜の名所として知られる目黒川が流れる東京都目黒区は、2013年度に「サクラ基金」を設置し、寄付金を活用して高齢化した区内のサクラの再生を進めている。

     17年度までの3年間に計約2300本を調査したところ、枯れるなど「状態が悪い」木は約15%に上った。区は順次伐採し、一部をオオヤマザクラやコシノヒガンザクラなどソメイヨシノ以外の品種に植え替える計画だ。

     開花が早まる傾向にある東北地方などでは、大型連休に見ごろになるような品種改良の研究も進んでいる。

     森林総合研究所多摩森林科学園の勝木俊雄・サクラ保全担当チーム長は、「ソメイヨシノは必ずしも管理しやすい品種ではない。これからは周囲の環境や気候条件に合わせて品種を選ぶ視点が大切だ」と話している。(蒔田一彦)

    特定外来生物

     外来生物法に基づき、146種が指定されている。飼育や譲渡、輸入が原則禁止され、違反すると懲役や罰金が科せられる。同法は、もともと日本にいなかった外来種による生態系や農業への被害を食い止めるため、2005年に施行された。

    2018年02月26日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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