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(中)侵食続ける燃料農場

スワジランドに広がるジャトロファのプランテーション。中央の道を挟み、左側がバイオ燃料原料のジャトロファ。右側はメイズ畑(6月16日、スワジランド・フルティで、本社チャーター機から)=鷹見安浩撮影

 アフリカの小国スワジランドの町フルティの丘陵地に東京ディズニーランドの20倍に当たる1000ヘクタールのプランテーションが広がる。等高線に沿い、しま模様を描くのはバイオ燃料の原料「ジャトロファ」だ。

 英国のバイオ燃料メーカー「D1オイルズ」の名を冠した、立ち入りや撮影を禁じる警告板が立つ。プランテーションを経営するのは、英国の石油メジャー「BP」との合弁企業。昨年6月に設立され、1億6000万ドルを投資してジャトロファの作付面積を東京都の約5倍の100万ヘクタールに広げる計画だ。

 「乾燥に強く、雨が降らないと自ら葉を枯らし、水分の蒸散を減らして生き延びる。油質もディーゼル車に最適」。D1オイルズの担当者は、プランテーションの北90キロの実験農場で、黄色い落ち葉を手のひらに載せ、胸を張った。油が採れる種は毒性物質を含み、食用にはならない。

 温室効果ガスを多く出す化石燃料に代わり注目されるバイオ燃料。原油価格の高騰で生産に拍車がかかる。多くはトウモロコシやサトウキビから作られており、米国では昨年、収穫の約4分の1に当たるトウモロコシが燃料に回された。シカゴ商品取引所のトウモロコシ価格は先月、過去最高のトン当たり288・1ドルをつけ、2年前の約3倍になるなど穀物価格の高騰は続く。


 エジプトやハイチなど各地の途上国で、食品値上げに怒る群衆による抗議デモや暴動が頻発している。

 マレーシアやインドネシアでは、バイオ燃料の原料にもなるアブラヤシの栽培地が熱帯林を侵食し、環境破壊が指摘される。

 ジャトロファは、乾燥地や荒れ地でも育ち、農地や森林を破壊することなく栽培できるため、食糧と競合しないバイオ燃料として期待される。栽培地は南部アフリカ全体、さらにインドや東南アジアにも広がる。

 しかし、理想のバイオ燃料栽培の形は早くも崩れ始めている。

 アフリカ南部の農業国マラウイ。首都リロングウェの100キロ北に住むダグラス・カムツさん(45)は昨年、メイズ(トウモロコシの一種)を作っていた1ヘクタールの畑をつぶし、ジャトロファを植えた。地元のベンチャー企業とNGOが「輸出でもうかる」と触れ込み、一帯の農民に苗を無償配布した。7人暮らしのカムツさんの家には電気も水道もない。「メイズでは貧しさから抜け出せない」とつぶやいた。

 ジャトロファ研究の第一人者であるインドのプシュピト・ゴーシュ博士は「食物を作る農地をつぶして栽培すれば、トウモロコシと同様、食糧生産を圧迫する」と警告する。

 北海道洞爺湖サミットの議題として急浮上した食料問題。バイオ燃料の生産を伸ばしつつ、食料生産をどう確保するか。その国際的なルール作りが急がれている。

2008年7月2日  読売新聞)
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