(下)木質発電 コストがカギしんと静まり返った構内で、金属製の炉が冷たく光る。作業室のタッチパネル画面には「発電電力0・0kW」の文字が浮かぶ。 面積の87%が森林の埼玉県秩父市。森と川に囲まれたキャンプ場に立つ「ちちぶバイオマス元気村発電所」は、間伐材を砕いた木質チップを燃やし、発電と熱供給を行ってきた。 運転開始は一昨年4月。同市が林野庁の交付金を含め、2億4360万円をかけて建設した。全国でも珍しい自治体運営の木質バイオマス発電所として、視察者が詰めかけた。 しかし、今年5月に稼働停止。選挙戦で一時休止を公約に掲げ、当選した久喜邦康市長は「財政難で無駄を省いているのに、大きなお荷物。民間委託か廃止することを検討中」と語る。 市の計算では、原木購入やチップ加工の費用を含めた1キロ・ワット時当たりの発電コストは20円。発電総量の約3割の余剰電力を東京電力に売ったが、電力の買い取り価格は1キロ・ワット時で「10円未満」(市地域エネルギー・環境対策課)。 林野庁によると、日本と似て 森林総合研究所の久保山裕史・主任研究員は「間伐材を山から安く出してくるシステムが日本にはないので、木質バイオマス発電の燃料費が高くつく。電力の買い取り価格がもっと高くないと、発電事業としては厳しい」とみている。 本紙の調査によると、木質バイオマス発電機を持つ全国56事業所の3割が、原料の木材不足で稼働を休止・縮小した。山林に残される間伐材などの「林地残材」は、年間2000万立方メートル出るが、その1%しか運び出せていない。建築廃材も、発生量が減っている。 建築廃材から木質チップを加工し、全国の木質バイオマス発電施設に納入する「木材開発」(大阪市)は昨年6月、ヤシ殻をインドネシアから輸入し始めた。大阪湾岸の保管場所に、高さ約8メートルの黒い山がそびえる。親指のつめの大きさ程度のヤシ殻が約1万トン。材料不足で木質チップの出荷量が落ち込み、代替品として扱う。「林地残材を使いたいが、今はこれで乗り切るしかない」と担当者は話した。 森林と地域の再生を願い、もがきあがく人たち。森が抱える課題は、あまりにも長く置き去りにされてきた。 ◇
この連載は、編集委員・河野博子、科学部・佐藤淳、社会部・小林健、地方部・大谷秀樹が担当しました。
(2009年6月29日 読売新聞)
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