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    人気の廃線トンネル、閉鎖続く…補修なら数億円

    • 昨年4月に閉鎖された「大日影トンネル遊歩道」。入り口脇には閉鎖後に市が設置したトンネルを紹介するパネルが並んでいる
      昨年4月に閉鎖された「大日影トンネル遊歩道」。入り口脇には閉鎖後に市が設置したトンネルを紹介するパネルが並んでいる

     JR中央線の廃線トンネルを活用した山梨県甲州市勝沼地区の「大日影トンネル遊歩道」(全長約1・4キロ)が昨年4月、安全上の問題で閉鎖され、再開のめどが立たない状態が続いている。

     管理する市が、多額の改修費用を工面できないのが理由だ。明治時代に開通したレンガ造りのトンネル内を散策でき、年間約3万人が訪れる人気観光スポットだったが、市の担当者は「再開要望が多く、観光面でも痛手だが、市単独での改修は難しい」と頭を抱えている。

     市によると、トンネルは1903年(明治36年)に開通。近くに新トンネルが開通して97年に廃線となり、2005年、JR東日本から旧勝沼町に無償譲渡された。甲州市に合併後、産業遺産を有効活用しようと、約1億1300万円をかけてアスベスト調査や電灯の設置などを進め、07年8月、無料で通行できる遊歩道としてオープン。鉄道ファンや観光客に親しまれてきた。

     しかし、11年に、傘を差さないと衣服がれるほどの漏水が発生。市は約3000万円の補修工事を行い、13年に利用を再開させたものの、15年度に行った内部調査で、今度はレンガの剥落などが見つかり、利用者の安全を確保するため、16年4月25日から当面閉鎖することを決めた。

     トンネル内部には、蒸気機関車が走っていた時代にこびりついたすすや、廃線まで使われたレール、鉄道標識などがそのまま残されている。中央線の開通により、ブドウやワインの鉄道輸送が盛んになった地域の歴史を伝える建造物で、市には利用再開を望む声が多く寄せられているという。

     市は利用再開に向けて検討を重ね、一度はトンネルを全面改修する方針を固めた。ただ、内部をすべて補修するには数億円がかかることがわかり、単独での事業化は難しいと判断。国から補助を受けて改修する方向で検討しているが、活用できそうな補助制度が見当たらないという。

     市観光交流課の担当者は「歴史あるレンガの壁を覆わずに内部を見ることができ、安全も確保する手段がなかなか見当たらない。活用できる国の補助制度がないか、都市整備課や文化財課と連携して情報収集に引き続き努める」と話している。

     トンネルの閉鎖が長引くことで、観光への影響も出始めている。勝沼ぶどう郷駅方面から遊歩道を通り抜けた先には、ワインの貯蔵庫として利用されている旧深沢トンネルがある。旧大日影トンネルと同時期に建造されたトンネルで、市は両トンネルや大善寺などを巡るウォーキングコースを設定していたが、遊歩道の閉鎖で徒歩での移動がしにくくなった。

     ウォーキングコースの利用者らが訪れていた旧深沢トンネル前の売店では、遊歩道の閉鎖後、売り上げが2割ほど減ったという。売店を経営する市内の観光施設「甲州市勝沼ぶどうの丘」の小沢和仁支配人(55)は「利用者の安全をしっかり確保した上で、遊歩道が利用できるようになればありがたい」と早期再開を望んでいた。(百瀬翔一郎)

    2017年11月13日 10時12分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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