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    スマートなエンジニアを求めて~ヴァレオ

    経済部 吉田昂
    • 9月30日朝刊の全面広告
      9月30日朝刊の全面広告

     かわいらしいクルマが目を丸くして、目の前につり下がったニンジンを見つめている。運転席に人はいないが、クルマは今にもニンジンを追って動き出しそうだ。大きなイラストの下には「スマートなエンジニアがいなければ、自動運転車の未来は創れません。」との文章を添えた。

     もちろん、馬ならぬ車はニンジンを追って勝手に走り出したりしない。自動運転を実現するのはあくまで人だ。自動車の大手部品メーカーである仏ヴァレオ(Valeo)はこの広告で、「スマート(賢い)」な人材を求めているというメッセージを発信した。

    「ユーモアのあるアプローチ」

     この広告は、2016年9月30日朝刊に全面広告で掲載された。「スマートなエンジニア」をキーワードにした広告キャンペーン第1弾との位置づけだ。第2弾は10月3日掲載で、排ガスから有害物質を取り除くため、マフラーに掃除機を直結させたイラストに、「環境にやさしい車を作るのはスマートなエンジニアだけです。」との文章を添えた。

     第3弾は10月5日、U字型の磁石でクルマを引っ張ろうとするイラストに、初回と同様の「スマートなエンジニアがいなければ、自動運転車の未来は創れません。」を添えた。

    • 10月3日朝刊の全面広告(第2弾)
      10月3日朝刊の全面広告(第2弾)
    • 10月5日朝刊の全面広告(第3弾)
      10月5日朝刊の全面広告(第3弾)

     いずれも突拍子もない「あり得ない」アイデアを大きく描くことで、技術革新には優秀な人材が必要なことを逆に強調した。

     ヴァレオは広告に合わせて動画も2種類作成し、ホームページに公開している。

     車に対して棒きれを投げて犬のように追わせようとしたり、ムチでたたいて発進させようとしたり。登場する技術者は、自動運転を実現しようと滑稽なアイデアを次々と試す。とびきり良いアイデアだと思ったニンジンの効果もむなしく、最後は自らかじりついてしまう。

     別の動画では、排ガス問題を解決しようとして、マフラーに栓をしてみたり、風船をつけてみたり。フランス本社の担当者は「優秀な人材を必要としていることを、ユーモアのあるアプローチで伝えたかった」と狙いを明かした。

    しのぎを削る開発競争

     自動車業界は今、「100年に1度の転換期」といわれる。自動運転技術の開発競争が激しさを増し、排ガス規制の強化に対応するため、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)の開発でも各社がしのぎを削る。こうした競争には、自動車メーカーだけではなく、ヴァレオなどの大手部品メーカーも参入している。

    • ヴァレオジャパンは1月、茨城県つくば市の研究開発拠点「つくばテクノセンター」に、自動運転の実験車両を走らせるテストコースを新設した
      ヴァレオジャパンは1月、茨城県つくば市の研究開発拠点「つくばテクノセンター」に、自動運転の実験車両を走らせるテストコースを新設した
    • #043
      #043

     ヴァレオは自動で駐車を行うシステムを開発し、今年から搭載された車が発売されている。1月には茨城県内の研究拠点に自動運転の実験車両を走らせるテストコースを新設しており、17年にも車の周囲を検知するセンサーの量産をドイツで始める。

     技術革新の最前線を走る部品メーカーの商品は、購入客の目には届きにくい。高い技術を持つ人材を確保するためには、認知度を上げることが必要だった。「スマートなエンジニア」を確保したいという強い思いが、ユーモラスな広告の背景にある。

    世界展開

     「かつてはいかめしい感じのする会社と思われていました。会社のイメージを変えたかった」と担当者は話す。広告は2月から準備を始め、約8か月かけて作成した。発表する場に選んだのは、9月29日に開幕した世界有数の自動車展示会「パリモーターショー」だった。

     モーターショーで自動車メーカーは、最新技術を搭載した新型車や、将来の市販化を目指す試作車を展示する。部品メーカーにとっては、取引先である自動車メーカーに商品を売り込む大事なイベントだ。パリは特に来場者が多く、ヴァレオを知ってもらうのにも最適だった。

     ヴァレオは日本、フランス、ドイツ、米国、インド、中国の6か国で広告を展開している。成長を続けるうえで鍵となる国々で、優秀な人材を確保する狙いがある。新聞にイラストを掲載し、動画をフェイスブックや動画サイト「ユーチューブ」などで広げた。「これほど大きな広告キャンペーンを実施するのは初めて」(担当者)という。

     フランス本社では、この広告で採用試験への応募者が増えた。日本でも、採用面接に来た人が「広告を見ました」と話すことがあったという。紙面の下の方にさりげなく添えた「スマートな車にはスマートな人が必要です」というメッセージが届いたようだ。

     さらに広告ではこう続ける。「駐車支援、車線逸脱防止、自動運転。これからの自動運転車の革新的なソリューションを開発しています。」これらの機能は一部が実用化されており、将来はもっと普及するに違いない。自動車の未来を支える部品メーカーの誇りと決意が込められている。

    (経済部 吉田昂)

    ◆ヴァレオ
     1923年にブレーキの部品メーカーとして設立。50年代にはクラッチの生産が主な事業となった。80年に社名をラテン語の「元気です」という意味の「ヴァレオ」に統合。日本には85年に進出した。現在は空調などの「サーマルシステム」、ヘッドランプやワイパーなどの「ビジビリティシステム」、エンジン回りの部品などの「パワートレインシステム」、自動運転に関係する車載センサーなどの「コンフォート&ドライビングアシスタンスシステム」の4部門がある。2015年度の売上高は約1兆7400億円。従業員は約8万8800人(いずれもグループ全体)。ウェブサイトは こちら

    2016年12月22日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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