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    世界遺産を造り、守る~清水建設

    経済部 武石将弘
    • 2016年11月30日朝刊の全面広告
      2016年11月30日朝刊の全面広告

     真っ青に澄んだ空の下に、荘厳なコンクリート造りの建物がたたずむ。手前には作業服にヘルメットをかぶった男性が1人。「何の広告だろう」と思った人も多いかもしれない。

     これは、2016年11月30日朝刊に掲載された全面広告。建物は同年7月に世界文化遺産に登録された東京・上野の国立西洋美術館で、施工した清水建設が出した広告だ。

     建物が完成したのは、半世紀以上前の1959年。当時、この建物が歴史的な遺産になると思っていた人は誰もいなかった。コーポレート・コミュニケーション部長の浅川玲さん(56)は「人々に親しまれ、長く使い続けられる建物を造り、それを守り続けていく。建設会社の仕事を広く知ってもらえる機会になれば」と、世界遺産登録を機に広告の出稿を決めたという。

    巨匠からの難問

    • 広告を担当した(左から)伊藤篤さん、浅川玲さん、丸山潔さん、長谷川環さん
      広告を担当した(左から)伊藤篤さん、浅川玲さん、丸山潔さん、長谷川環さん

     「ル・コルビュジエからの難問」……。広告に記されたメッセージも目を引く。ル・コルビュジエは20世紀を代表するフランスの建築家で、国立西洋美術館の設計者だ。だが、実はその設計図は非常にラフなもので、肝心の寸法などは一切記されていなかったという。

     「日本の土地に合った設計をしてみなさい」。それは日本にいるコルビュジエの弟子たちへのメッセージでもあった。

     弟子たちはコルビュジエの意図を読み解いて図面を引き、清水建設も経験や技術力のすべてをつぎ込んで施工。コルビュジエをして「完璧」と言わしめる建物を完成させた。「巨匠からの難問を我々なりに解いてみせた、という思いをコピーに込めた」。同部副部長の伊藤篤さん(52)は話す。

    国内初の免震工法に挑戦

    • 「美術品はもちろん、世界遺産の建物も楽しんでほしい」と話すコーポレート・コミュニケーション部のメンバー
      「美術品はもちろん、世界遺産の建物も楽しんでほしい」と話すコーポレート・コミュニケーション部のメンバー

     建築物は、完成して終わりではない。貴重な建物を次世代に残すには、しっかりとしたメンテナンスや改修も必要だ。

     1996~98年に同美術館で行われたのは、国内初の「免震レトロフィット」という工法を用いた大規模改修だ。外観を全くいじらずに建物の地下を掘り、柱の下に免震ゴムを設置して、地震の揺れから建物を守る。この前例のない難工事の施工計画を手掛けたのが、広告の中で建物を見つめる秋山稔・上席エンジニアだった。

     きっかけは、直前に発生した阪神・淡路大震災。地震で阪神地域の建築物や美術品が大きな被害を受けていた。「コルビュジエの意匠を守りながら耐震化するにはこの工法しかなかった」(浅川さん)。建物の素晴らしさはもちろん、絶え間ない研究や磨き上げた技術力が、世界遺産への登録を後押しした。

    子どもたちに誇れるしごとを

    • 子供たちが登場する2017年1月1日の広告
      子供たちが登場する2017年1月1日の広告
    • #044
      #044

     広告の反響も大きく、「すごくセンスがいい」「清水建設が造ったことを初めて知った」などの声が寄せられた。

     実は、施工した建物をPRする広告は、これまでほとんどなかったという。建設会社には「建物はお客さま(発注主)のもの」という考えがあるからだ。歌舞伎座、銀座和光、国立代々木競技場、東大安田講堂……。いずれも著名な建物だが、同社が施工したことを知る人は少ないかもしれない。

     一方、同社の新聞広告やテレビCMには、多くの子どもたちが登場する。そこには「次世代を担う子供たちに対し、専門家として誇れるものづくりをしていく」(伊藤さん)との思いがある。広告に記された「子どもたちに誇れるしごとを」という言葉は、同社のコーポレートメッセージでもある。

     2020年の東京五輪・パラリンピックを控え、都市部の再開発は熱を帯び、建設業界は活況を呈している。そんな中でも、「しっかりとした建物を造り、守り続ける」という同社のDNAは変わらない。これから造られる建物が、いつか世界遺産となる日が来るかもしれない。

    (経済部 武石将弘)

    ◆清水建設
     1804年、初代清水喜助が江戸の神田鍛冶町で創業。清水屋、清水組の屋号を経て、1948年に現在の社名に。スーパーゼネコン(総合建設会社)の一角で、特に首都圏の民間建築工事に強みを持つ。また、創業者が宮大工だった伝統を受け継ぎ、社寺の建築や改修にも豊富な実績がある。
     海外事業は約8割をアジアが占める。インドネシアでは同国最高層のオフィスビルを受注するなど、海外展開も強化している。2016年3月期の連結売上高は約1兆6649億円。本社は東京都中央区。連結の従業員数は1万5640人。ウェブサイトは こちら
    2017年02月09日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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