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    日本の良いモノ 世界に問う~三越伊勢丹HD

    経済部 武田泰介
    • 1月1日の朝刊全面広告
      1月1日の朝刊全面広告

     指先からつま先まで、全身がピンと伸びたジャンプの一瞬。ダンサーの美しい姿に、「this is japan.」の文字。元日の読売新聞朝刊に掲載された三越伊勢丹ホールディングス(HD)の全面広告を覚えている人も少なくないだろう。

     モデルは海外で活躍するバレエダンサーのオニール・八菜(はな)さん。ニュージーランド人の父と日本人の母を持つ。昨年5月、バレエ界のアカデミー賞とも言われる「ブノワ賞」を23歳の若さで受賞し、一躍脚光を浴びた。

     彼女が今回の広告で表現したのは「未来の季節」。所属するパリ・オペラ座の振付家ピエール・ラコット氏と話し合い、「未来と夢に向かって進んでいく勇気」を表現した。

    躍進するバレエダンサー

     八菜さんの起用を提案したのは、三越伊勢丹HDの執行役員マーケティング戦略部長の早川徹さんだ。

    • 広告を担当した三越伊勢丹HD執行役員マーケティング戦略部長の早川徹さん(左)と同部CI・宣伝本社担当長の加藤友音さん
      広告を担当した三越伊勢丹HD執行役員マーケティング戦略部長の早川徹さん(左)と同部CI・宣伝本社担当長の加藤友音さん

     実は、彼女の父親のクリス・オニール氏は、かつて実業団ラグビーの強豪として知られた伊勢丹ラグビー部の元選手。プレーの傍ら伊勢丹の宣伝部に12年間籍を置き、早川さんとも机を並べていた。その娘が、バレエでめきめきと頭角を現しているという。

     「これから世界的に注目を浴びる女性であることは間違いない」。早川さんは八菜さんの将来性に着目し、会社として最も重視する元日の企業広告への起用を決めた。八菜さんがブノワ賞をとり、報道などで広く知られるようになったのはその後のことだ。

     「お客様に一歩でも半歩でも先に、新しいモノや価値を提案するのが百貨店の役目。私たちの目に狂いはなかった」。早川さんは笑顔を見せる。

    接客ともてなし磨く

    • 初売りでにぎわう三越日本橋本店。従業員らが着物姿で客を迎えた(1月2日、東京都中央区で)
      初売りでにぎわう三越日本橋本店。従業員らが着物姿で客を迎えた(1月2日、東京都中央区で)
    • #045
      #045

     「this is japan.」は三越伊勢丹が2015年から展開する企業メッセージだ。日本の良いモノを百貨店の目利き力で選び抜き、世に提案していこうとの企業姿勢を強く打ち出している。

     今年はそこに、「基本に磨かれて、信頼でかがやく。」という新たな一文を添えた。八菜さんが基本のステップや動作を大切にするように、百貨店の従業員も接客やもてなしの基本を大切にしなければ、顧客との信頼は築けない。ひいては企業としての成長もない――。それは、店頭で働く約10万人の従業員や販売スタッフに向けたメッセージでもある。

     広告にはもう一つ仕掛けがある。八菜さんは紙面用の写真とは別に、ラコット氏と共同で日本の「二十四節気」をテーマとした24種類の踊りを作り上げた。これらの動画は、立春の2月4日から特設サイトで順次公開している。マーケティング戦略部マネージャーの小林朋子さんは「単発の新聞広告で終わらせず、デジタルと組み合わせた通年の拡散効果を狙っている」と説明する。

     ラコット氏は「八菜さんの繊細な動きや表現の仕方には日本らしさを感じる。オペラ座の他のダンサーにはない魅力だ」と賛辞を贈っているという。パリでの撮影に立ち会った同部CI・宣伝本社担当長の加藤友音さんは「バレエは『言葉のない芸術』とも言われるが、2人の信頼関係によって踊りが作られていくのを見て、私たちが大事にしなければならない『生き方』を改めて考えさせられた」と振り返る。

    苦境打開へ 原点回帰

    • 全国一の売り上げを誇る伊勢丹新宿本店(東京都新宿区)
      全国一の売り上げを誇る伊勢丹新宿本店(東京都新宿区)

     百貨店業界を取り巻く環境は厳しい。インターネット通販や専門店の台頭、衣料品の販売不振などで、ピーク時の1991年に約9兆7000億円あった全国の百貨店売上高は、昨年6兆円を割り込んだ。業界最大手の三越伊勢丹も例外ではない。

     「苦境だからこそ、私たちは百貨店の原点は何か、もう一度見つめ直さねばならない。品ぞろえはもちろん、お客様をもてなす心づかいなど基本に立ち返って信頼を築くことしかない」。早川さんは力を込める。

     三越伊勢丹が昨年、企業広告に起用したラグビー元日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ氏は、W杯で強豪の南アフリカ相手に胸のすくような勝利を演じてみせた。八菜さんも近い将来、オペラ座のトップである「エトワール」への選出が有望視されている。

     「これが日本だ」――。海外での活躍を通じて体現する彼らの姿に、三越伊勢丹HDは自らを奮い立たせようとしているのかもしれない。

    (経済部 武田泰介)

    ◆三越伊勢丹ホールディングス
     本社・東京都新宿区。2008年に当時の三越と伊勢丹が経営統合して発足した。旗艦店の伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店など、グループで全国に百貨店27店舗を展開している。中国やシンガポール、ローマなど海外にも店舗網をもつ。昨年秋にはマレーシア・クアラルンプールに、日本製を前面に打ち出した伊勢丹の「ジャパンストア」も開店した。
     16年3月期の連結売上高は1兆2872億円。大西洋社長は16年5月から日本百貨店協会会長も務めている。 ウェブサイトはこちら
    2017年02月23日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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