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    技術で社会の課題に向き合う~旭化成

    経済部 野口季瑛
    • 3月27日朝刊の2面見開き広告
      3月27日朝刊の2面見開き広告

     薄暗い川辺で、一人の少女が腰をかがめ、ポリタンクで水をくんでいる。少女の背後の岸にはゴミが打ち寄せられている。「問題 水に光を。」という白抜きの文字が目に飛び込んでくると同時に、少女の上に書かれた「世界では、飲み水が原因でなくなる人が、まだ年間50万人いる。」という文言が胸に刺さる。

     旭化成が3月27日朝刊に見開き2面で掲載した新聞広告は、見る人に世界が抱える課題を突きつける。総合化学メーカーとして、技術で社会の課題に真正面から向き合う。その思いが込められている。

    飲料水をLEDで清潔に

     写真は、今年2月、カンボジア東部を流れるメコン川の中州「タスイー島」で撮影された。首都プノンペンから車で6時間以上離れた、東西10キロ、南北2キロほどの小さな島だ。産業は、農業と漁業といった第1次産業が中心で、住民は生活用水の多くをメコン川の支流から得ている。日本のように水道の蛇口から出てくるきれいな水とは違い、場合によっては病気にかかるリスクもある。

     広告にある「問題 水に光を。」の問いかけの下には、その答えとして、「深紫外線LED」という旭化成独自の技術が紹介されている。深紫外線は通常の光の波長よりも短く、細菌のDNAに直接作用することができるという。深紫外線を発光するLEDを水に当てることで簡単に殺菌できる。旭化成は現在、飲料水での実用化を目指している最中だ。

     広告宣伝を担当する広報室企画・宣伝グループ課長代理の岩附美緒さんは「メコン川は川幅が広く、撮影方法によっては海に見えてしまうので、支流で川幅の狭いところを探したと聞いている」と撮影時の裏話を開かす。

    見えない部分で支える

     旭化成の企業理念は「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献する」。食品用フィルムの「サランラップ」など一部の商品を除いて、生産する製品のほとんどは企業が顧客の素材が多く、一般消費者にはなじみが薄い。しかし、医薬や食品向けの添加剤や衣服に使われる繊維、紙おむつ用の不織布など、目立たないが、実は幅広い事業で人々の生活を見えない部分で支えている。

     広告は、そうした様々な事業を紹介する形で、2007年から「昨日まで世界になかったものを。」というシリーズものとして製作している。今回で16作目だ。

    • 2010年11月4日朝刊の2面見開き広告
      2010年11月4日朝刊の2面見開き広告

     このシリーズの中では、10年11月4日朝刊に掲載した血液浄化技術「アフェレシス」の反響が特に大きかった。看護師の戴帽式を背景に「問題 希望をつくろう」と問う広告は、血液の中から病気の原因となる物質を取り除く治療法を紹介した。広告を見た患者の家族から「この技術を使って命を救ってください」と当時の社長宛てに直筆の手紙が届いたという。

     06年までは旭化成の「化」の字をカタカナに見立てた「イヒ!」シリーズを10年間続けていた。消費者や社内からは「印象的でおもしろい」と好評だった一方、「何をやっている会社か分からない」という意見もあった。現在のシリーズに変えてから、「こんな事業をやっていたんですね」という声が寄せられるようになったという。

    事業の「卵」

    • 宣伝を担当した広報室の岩附さん(左)と広報室長の楠神輝美さん
      宣伝を担当した広報室の岩附さん(左)と広報室長の楠神輝美さん
    • #048
      #048

     深紫外線LEDは、今後事業化を目指す、いわば「卵」の段階。だが、将来的に消費者の生活を支えることになるであろう事業の卵は他にもたくさんある。

     例えば自動車関連では、世界的に環境規制が強まる中、鉄よりも軽い樹脂素材の開発を行っている。岩附さんは「深紫外線LEDは、これから広がりが生まれてくる事業。他にもそういった卵を開発し、紹介することで企業としての可能性を感じてほしい」と意気込む。

     消費者が気付かないうちに、卵がかえり、社会課題を解決したり、生活になくてはならない素材に育っていたりするかもしれない。

    (経済部 野口季瑛)


    ◆旭化成
     1922年、実業家の野口遵氏が設立した「旭絹織」が前身の総合化学メーカー。2001年に現在の社名になった。繊維事業などを中心に事業を拡大し、1960年代に化学製品の生産を始めるなど多角化を進めた。現在、繊維や高機能素材などを生産するほか、戸建て住宅のヘーベルハウスなど住宅事業、医薬事業などを手がける。一般消費者向けの商品では、台所でおなじみの「サランラップ」などが有名。2016年3月期の連結売上高は1兆9409億円。従業員数は3万2821人(連結)。本社は東京都千代田区。ウェブサイトは こちら

    2017年04月20日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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