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    「あったらいいな」100年のすごろく~小林製薬

    大阪本社経済部 田畑清二

     生活になじみのある商品が、すごろくの図面のように並ぶ。昔使っていた薬があったり、今まさにトイレに置いてあるような商品があったり、楽しくて、つい自然と目線が動いていく。小林製薬が創立記念日である8月22日の朝刊に出した「100期記念」の全面広告だ。

    36種類の商品開発エピソード

     雑貨や化粧品の卸売りとして創業した小林製薬が、初の自社開発製品である頭痛薬「ハッキリ」を発売したのは1939年。すごろくのマスはそこから始まり、マスごとに、肩こりなどに効く外用消炎鎮痛剤「アンメルツ」、肥満症の改善に効果がある漢方製剤「ナイシトール」などの商品が収まる。

    • 2017年8月22日読売新聞朝刊の「100期記念」全面広告
      2017年8月22日読売新聞朝刊の「100期記念」全面広告

    • 広告を担当したマーケティング戦略推進部長の田中俊幸さん
      広告を担当したマーケティング戦略推進部長の田中俊幸さん

     すごろくにしたのは、小林製薬の歴史をたどってもらうためだ。広告をよく見ると、商品の効能や詳細はあまり書かれていない。マーケティング戦略推進部長の田中俊幸さん(48)は「商品自体の認知度は上がってきたので、この広告では、どんな思いで商品が開発されたのかを知ってもらいたかった」と振り返る。当初は3コマ漫画も考えたというが、多くの商品のエピソードをより伝えたいと考え、すごろくに決めた。

     確かに広告にエピソードは充実している。「肩から湿布薬が見えたせいで年寄りくさいと言われた社員が一念発起」(アンメルツ)、「お(なか)の張りに悩む社員が腸内にたまったガスやおならに注目し開発」(整腸薬の「ガスピタン」)など、ちょっと面白い話が随所にちりばめられている。

     口臭を消す抑える息清涼カプセル「ブレスケア」のマスでは、「開発チームみんなで餃子(ぎょうざ)を食べて実験・検証を繰り返した」といった苦労話も盛り込んだ。「1コマ読めば、次も読みたくなる」(田中さん)ようにするため、各マスごとの説明文を書く際には、社史や過去の社内文書の記録をひもとくだけでなく、社内の開発担当者に取材して話をまとめた。

     掲載する商品を何にするかでも苦労したという。小林製薬が販売している商品は150種類ほどある。全面広告で、マスが多いすごろく形式とはいえ、すべてを掲載するわけにはいかない。社内で調整して36種類に絞って掲載した。

    HP閲覧数が3.5倍に

     記念の企業広告として、年配の人や関係者にも届いて、しかもじっくり読んでもらえる媒体として新聞広告を選んだ。広告が掲載された後、小林製薬のホームページへの閲覧数は3.5倍に増えた。

     2007年に「90期」を迎えた際にも、小林製薬は全面広告を出している。テレビの商品CMの冒頭にも「あっ!小林製薬」という社名を打ち出すようになった頃だ。この際も、コーポレートカラーである青を基調に、商品を並べた。当時は、イラストを交えて商品を分かりやすく伝えることを重視したという。

    • 2007年8月22日読売新聞朝刊の「90期記念」全面広告
      2007年8月22日読売新聞朝刊の「90期記念」全面広告

    消費者目線の「あったらいいな」をこれからも

     小林製薬は、会社のスローガンである「『あったらいいな』をカタチにする」の言葉のままに、ニッチ(隙間)市場に商品を出していく戦略をとってきた。トイレ用の芳香消臭剤「ブルーレット」やおでこなど体に貼る冷却シート「熱さまシート」などが典型だ。

    • 液体ブルーレットおくだけ
      液体ブルーレットおくだけ
    • 熱さまシートこども用
      熱さまシートこども用

    • #054
      #054

     それだけに広告で伝えたいメッセージは、「消費者の困りごとに目を向けて商品を開発しているということ」(田中さん)だ。この点は今回も、10年前も共通する。こうした変わらない思いを、すごろくの最後のマスの文章に込めた。

    「2017 これからも“あったらいいな”を次々と。」

    (大阪本社経済部 田畑清二)

    ◆小林製薬
     1886年、雑貨や化粧品を取り扱う店「小林盛大堂」として名古屋市で創業した。現在の会社は1919年に「小林大薬房」として大阪市に設立、1956年に現在の社名に変更した。「ブルーレット」や「トイレの消臭元」を発売している縁から、2010年から全国の小学校に洋式トイレを贈呈する活動を行っている。今年度は20校にプレゼントした。ヒット商品には他に「サワデー」「アイボン」「のどぬ~るスプレー」などのほか、子会社である 桐灰 ( きりばい ) 化学の「桐灰はる」(カイロ)、ジュジュ化粧品の「マダムジュジュ」もある。2016年3月期の連結売上高は1372億円。従業員は2804人。本社は大阪市中央区。ウェブサイトは こちら

    2017年10月19日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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