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    世界を支え、「壁」に挑む~クボタ

    大阪経済部 井戸田崇志

     砂漠に直径1.6メートル、長さ9メートルの水道管が置かれ、背後にカタールの首都ドーハの街並みが見える。8月21日朝刊に見開き2面で掲載されたクボタの広告は迫力満点だ。

    「命の水道管」を手がけるもう一つの「顔」

    • 2017年8月21日読売新聞朝刊の見開き2面広告
      2017年8月21日読売新聞朝刊の見開き2面広告

     高温、砂嵐という砂漠の過酷な環境下で生きるために不可欠な水を供給するには、耐久性が高い水道管を開発、製造できる技術力が必要だ。広告には「砂漠の血管、命の水道管。」というメッセージを添えた。海水を淡水化した水を、水質を損なうことなく、広大な砂漠を越えて安定的に運ぶ。こうした「高い壁」に、クボタがどのように挑んでいるかを説明している。

    • 広告を担当したクボタの広瀬さん
      広告を担当したクボタの広瀬さん

     「新聞は社会に関心がある人がじっくり読む媒体。新聞を通じ、企業姿勢と取り組みを知ってもらいたいと考えた」。担当したブランド推進室長の広瀬文栄さん(44)は、狙いを語る。

     クボタは農機大手として知られる。一方で、1893年(明治26年)に国内で初めて水道管を開発し、現在も上水道から下水道向けまでを手がける水関連総合メーカーとしての顔も持っていることはあまり知られていない。1970年代から中東に水道管を輸出し、2014年にはアラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、カタールの延べ500キロ・メートルに水道管を敷設する「国家的上水道プロジェクト」の工事に参画した。

     広告のキャッチコピーは「壁がある。だから、行く。」にした。様々な障害を乗り越え、インフラ(社会基盤)の整備などに取り組む。そんな姿勢を表現した新聞広告とテレビコマーシャルを連動させたキャンペーンを17年1月に始めた。

    「ベトナムはクボタのミュージアム」

    • 2017年1月10日読売新聞朝刊の見開き2面広告
      2017年1月10日読売新聞朝刊の見開き2面広告

     例えば1月10日朝刊に掲載された広告は、ベトナムで撮影した。1970年代に製造されたトラクターを止め、広大な農場を耕作している様子をイメージしたものだ。クボタは北米、欧州など幅広い地域で農機を販売しているが、海外営業担当者の「ベトナムはクボタのミュージアムみたい」との一言で、撮影地にベトナムを選んだ。

     ベトナムは米の輸出国として世界3位の規模で、クボタはそんな農業大国で農機のシェア(市場占有率)トップを誇る。数世代にわたってクボタ製を使っている農家も多く、70年代製から最新型まで様々な年代のトラクターが農場を耕す。「ライバルは、祖父(じい)ちゃんの乗る『オールド・クボタ』さ。」とのメッセージが端的に示す。

     ベトナムも、経済成長に伴う農業人口の減少という社会的課題に直面する。トラクターによる農作業の効率化で、農家の負担が少なくなったのに、収穫量が増えたことを伝えている。

    最新のインフラ整備に建機が活躍

    • 2017年3月13日読売新聞朝刊の見開き2面広告
      2017年3月13日読売新聞朝刊の見開き2面広告

     3月13日朝刊に掲載した広告は、クボタの成長を支える海外の建機事業に焦点をあてた。クボタの海外売り上げ比率は現在約65%と高い。パリの古い街並みに添えた「過去と未来を(つな)ぐのはタイムマシーンだけじゃない。」とのメッセージは、「景観を保ちながら、今の人が困ることなく、最新のインフラを整備するためにクボタの建機が役立っていることを知ってほしい」(広瀬さん)との思いを込めた。

    「知名度低い」危機感をばねに

    • 2017年11月6日読売新聞朝刊の見開き2面広告
      2017年11月6日読売新聞朝刊の見開き2面広告

    • #057
      #057

     11月6日朝刊の広告では長野県小海町の広大なハクサイ畑に、クボタの農業用「パワーアシストスーツ」を背負い、軽々と重い荷物を運ぶ初老の男性の姿を映し込んだ。

     一連の広告の背景には、社名の認知度が低いというクボタの危機感があった。独自調査では、20歳代の4人に1人が社名すら知らなかった。広報キャンペーンの効果は大きく、新卒採用のエントリー数は前年から約1.3倍に増え、株主総会でも個人株主から広告への歓迎の声が上がった。

     広瀬さんは言う。「反響が大きく、社会的課題の解決に向けた社員の使命感がさらに高まった」。

     <壁>への挑戦に、終わりはない。

    (大阪経済部 井戸田崇志)


    ◆クボタ
     1890年、 鋳物 ( いもの ) メーカーとして創業した。その3年後に水道管の製造を始め、戦後に農機、建機事業に参入した。1990年に現在の社名に変更した。自動運転機能を搭載したトラクターや農薬散布用のドローンの開発など農作業の省力化に向けた取り組みに注力し、農家の営農計画作りを支援するビジネスも手がける。2016年12月期の連結売上高は1兆5961億円。従業員は3万8291人。本社は大阪市浪速区。ウェブサイトは こちら

    2017年11月30日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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