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    英総選挙へ メイ首相は足場固めできるか

     欧州連合(EU)との離脱交渉に向けて、自らの政権基盤の強化を図る賭けに出たのだろう。

     英国のメイ首相が、2020年5月に予定されていた下院の総選挙を6月8日に前倒しする意向を表明した。半数をわずかに上回るに過ぎない与党・保守党の議席を大幅に上積みするのが狙いだ。

     メイ氏は昨年7月の就任以来、下院を解散しない、と強調してきた。前言を翻した理由について、「今、総選挙を実施しなければ、対EU交渉の山場を選挙直前に迎えることになる」と説明した。

     英政府は3月末、EUに離脱を通知した。EU条約で定められた2年間の離脱交渉期間では決着が難しく、移行措置の取り決めが必要との見方が強まっている。

     英国が求める自由貿易協定の交渉は20年以降にずれ込もう。メイ氏は、こうした行程表を念頭に置いて判断したと言える。

     4~5月に仏大統領選が、9月には独連邦議会選が行われる。EUが政治決断を伴う本格交渉に入るのは、その後になる。底堅い経済情勢を反映し、保守党の支持率は高い。メイ氏はこのタイミングを捉えたのではないか。

     懸念されるのは、離脱交渉の不透明な状況が長引き、世界経済に悪影響を及ぼすことである。英国とEUの双方は極力早期に、交渉の道筋をつけねばなるまい。

     総選挙の焦点は、英国が目指すべき将来の対EU関係だ。

     メイ政権は、英独自の移民規制を優先し、EU単一市場から撤退する「強硬離脱」の方針を公表している。保守党が勝利すれば、これを実現する足場が固まろう。

     内紛が相次ぎ、党勢が低迷する最大野党・労働党は、「強硬離脱」に反対している。コービン党首は選挙前倒しに賛成した。前首相の辞任により就任したメイ氏について、選挙で信任を得ていないと批判してきた経緯からだ。

     単一市場から脱退すれば、英国進出企業の負担が増し、教育・研究などの国際協力にも支障が出かねない。労働党などがメイ政権の離脱政策への不満の受け皿となり、善戦した場合、路線修正を迫る圧力が高まる可能性もある。

     総選挙を機に、スコットランドの独立運動が再燃することも気がかりだ。EU離脱に反発する地域政党は、独立の是非を問う住民投票を行うよう要求している。

     メイ氏は、英国の解体を回避するためにも、昨年の国民投票が招いた社会の分断を克服する取り組みを忘れてはならない。

    2017年04月20日 06時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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