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    学術会議声明 「研究の自由」をはき違えるな

     研究者の自由な発想を縛り、日本の科学を一層低迷させかねない。

     学者の代表機関とされる日本学術会議が、軍事利用される恐れがある研究を規制するよう、大学などに求める声明・報告書を決めた。

     学術会議として、「学術と軍事が接近しつつある」との懸念を表明している。その上で、「自由な研究・教育環境を維持する」ために、研究の是非を判断する制度の新設を大学などに要請した。

     大学は、研究資金が軍事機関からかどうかをチェックする。軍事的と見なされる可能性があれば、技術的・倫理的に審査する。

     研究に新たな制約を課すことになる。それがなぜ「自由な研究」につながるのか。かえって、学問の自由を阻害する。

     学術会議の総会で、「社会の声とかけ離れている」「判断の基準がない」などと疑問の声が上がったのも当然だ。

     声明・報告書の決定過程にも問題がある。異論があるのに、既に幹事会で決定済みとして、修正などは検討されなかった。

     多様な意見を踏まえて、丁寧に議論することは、学問の基本である。学者集団として、禍根を残す意思決定と言わざるを得ない。

     学術会議が念頭に置いてきたのは、防衛省が2015年に開始した「安全保障技術研究推進制度」だ。声明は、「政府による研究者の活動への介入が強まる」との認識を示している。

     他省庁の研究資金を受ける場合と同様、年に1回、防衛装備庁の担当者が訪れて、研究の進捗しんちょく状況を確認するだけだ。「介入」には当たるまい。制度自体も、基礎研究が対象で、成果の公表、製品等への応用は制約されない。

     研究現場で、制度の注目度は高い。今年度の公募説明会には、前年の4倍を超える200人以上が参加した。学術会議と現場の認識には、大きなずれがある。

     そもそも、声明・報告書が求める「技術的・倫理的な審査」には無理がある。科学技術は本来、軍事と民生の両面で応用し得る「デュアルユース」である。

     米軍の軍事技術の中核である全地球測位システム(GPS)は、カーナビに加え、地震火山の観測や自動運転にまで広範に用いられている。軍事に関連するとして、排除するのは、非現実的だ。

     日本の研究界の現状は厳しい。論文数が伸び悩み、世界から取り残されている、と指摘される。新たな制約を設けることで、研究現場をしゅくさせてはならない。

    2017年04月20日 06時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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