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    電通有罪判決 過重労働の悪弊を断つ契機に

     度を越した長時間労働をなくす。各企業が、そのための方策を考える契機とせねばならない。

     労働基準法違反に問われた大手広告会社・電通に、東京簡裁が求刑通り罰金50万円の判決を言い渡した。社員4人に労使協定の上限を超える残業をさせた、との理由からだ。

     違法な長時間労働が常態化しながら、業務量削減や社員の増員といった抜本的な対策を講じなかった。労働時間を削減するための対応を個々の社員に任せた結果、サービス残業が蔓延まんえんしていた。

     判決は、こうした労働環境が事件の背景にあると指摘し、「電通の刑事責任は重いと言わざるを得ない」と結論付けた。認定事実に照らせば、うなずける判断だ。

     電通の長時間労働が問題化したきっかけは、4人のうち、新入社員の高橋まつりさんが過労自殺したことだった。判決も「尊い命が奪われる結果まで生じていることは看過できない」と指弾した。

     電通では、以前にも社員が過労自殺している。長時間労働を巡る労働基準監督署の是正勧告も繰り返し受けていた。

     有罪判決は、電通が企業体質の改善を怠り、過重労働を放置してきたツケだと言えよう。

     東京簡裁は今回、正式裁判を開いて、事件を審理した。書面審理である略式手続きでは不相当だと判断したためだ。

     公判では、検察側が電通での長時間労働の実態をつまびらかにした。公開の法廷だったからこそ、広く知ることができた事実だろう。再発防止に向けた教訓を共有できた意義は小さくない。

     出廷した山本敏博社長は「働き方も働きぶりも、信頼される会社」に改めると誓った。電通は、労働時間の削減計画を公表している。信頼回復に向けて重要なのは、その着実な実行だ。

     長時間労働が労基法違反に問われた事件では、大阪簡裁も今年、正式裁判を開いている。司法の厳しい姿勢の表れである。

     厚生労働省によると、昨年度に立ち入り調査した約2万4000の事業所の4割以上で、違法な長時間労働が確認されている。電通の有罪判決には、一罰百戒の意味合いもあるのではないか。

     「働き方改革」は衆院選の争点の一つだが、時間外労働に罰則付きの上限規制を設ける労基法改正案は、衆院解散で成立が見通せなくなっている。

     各企業には、法改正を待つのではなく、自主的に業務の効率化などを図る姿勢が求められる。

    2017年10月11日 06時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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