現在位置は
です

本文です

消費税を社会保障目的税に 少子高齢社会の財源

 元号が平成と改まってから20年目である。

 昨年公表の人口統計によると、昭和生まれが1億人を割る一方で、平成生まれは2000万人を超えた。

 平成世代は、まだ未成年だが、十数年後には社会の中核を担い始める。その時、社会保障制度は安心できるものになっているだろうか。真剣に考えることが、平成に先立つ世代の責務であろう。

 平成元年(1989年)は少子化が明確になった最初の年でもあった。合計特殊出生率が丙午(ひのえうま)(66年)の1・58をも下回り、「1・57ショック」と呼ばれた。だが、その数字も今見れば夢のように高い。現状は1・32である。

 高齢化も進んだ。平均寿命は元年当時より約4歳延び、今や男性は79歳、女性は85歳。高齢者(65歳以上)が人口に占める割合も現在は21・5%と、元年の11・6%からほぼ倍増した。

 政治が少子高齢化の進行を予測しなかったわけではない。平成元年は、社会保障を支える基幹税に育てるべく、税率3%の消費税が導入された年でもある。

 ところが、97年に5%に引き上げて以降、税率見直しの議論はタブー視され、超少子高齢時代を支えることのできる財源とはなっていない。消費税もまた、導入から今日まで、社会構造の変化に対応できない“未成年”の段階にとどまってきたと言えよう。

 ◆次世代は支えきれない

 このままでは、社会保障制度を維持することは、ほとんど不可能である。それは、平成世代の先頭が社会の中心的な担い手となる、2025年の人口構成を見れば明らかだ。

 大きな上部に対して根元は細く、形は逆ピラミッドに近い。1人の高齢者を支える現役世代(15〜64歳)の数は、現在の約3人から1・9人まで減少する。

 年金、医療、介護などを合わせた社会保障給付は、現在の約90兆円から141兆円まで膨らむ、と厚生労働省は予測している。

 現役世代の負担に大きく頼る現行制度のまま、社会保障を同じ水準で維持しようとすれば、支える世代は耐えきれないだろう。

 老いも若きも、広く薄く、福祉財源を負担し合うしかない。そうすれば高齢者層が大きくとも、負担の重さは各世代に幅広く分散される。消費税率を引き上げることによって、必要な財源を確保すべきである。

 引き上げは段階的に行うとしても、いずれは、欧州諸国の最低水準である15%程度は検討する必要があろう。

 読売新聞は消費税の導入当初から、これを社会保障・社会福祉のための目的税とし、税率引き上げについて、国民の理解を得るべきだと主張してきた。

 政治の動きは鈍かったが、もはや先送りはできない状況にある。

 09年度までに基礎年金の国庫負担割合を、現行の約3分の1から2分の1に引き上げねばならないからだ。そのために必要な約2兆3000億円の財源を、消費税の引き上げ以外の方策で手当てすれば、財政に大きな無理が生じよう。

 年金に限らず、消費税の議論を先送りしてきたツケは、いたるところで噴き出している。

 医療は、保険料や窓口負担の引き上げが限界に来ている。医師不足、看護師不足に思い切った手も打てない。

 介護保険制度も、コムスンの不祥事を機に、介護現場の低賃金と、それに伴う深刻な人手不足が浮かび上がっている。

 社会保障制度全般を持続可能なものとするには、財政基盤を強化しなければならない。それには新たな財源がどうしても必要だ。

 ◆財政改革と両立せよ

 こうした認識は、国民の共通理解となりつつある。

 読売新聞の世論調査で「社会保障制度を維持するために消費税率の引き上げはやむを得ない」と考える人は49・7%に達し、「そうは思わない」とする人の48・1%を上回った。政治は勇気を持って、消費税を財源の中心に据えた社会保障の将来構想を提示すべき時だ。

 自民党の財政改革研究会が、消費税を「社会保障税」とする提言を出した。国の予算を社会保障部門とそれ以外に2分割する。社会保障に必要な財源は、そのための目的税できっちりと確保する。一方で、非社会保障部門の予算はスリム化を進める、というものだ。

 傾聴に値しよう。これまでは「まず歳出の無駄を見直すことが先だ」という、一見もっともらしい理屈で、消費税の議論は先送りされてきた。

 不必要な歳出を見直し、その削減に取り組むのは、当然のことである。しかし、それだけでは、超少子高齢時代に必要な社会保障の財源を捻出(ねんしゅつ)できない。消費税が導入されてから20年目になる今年、責任ある議論を急ぎ、税率引き上げの道筋をつけることが必要だ。

 平成生まれの子どもたちに、揺るぎない社会保障制度を残すためには、消費税を社会保障目的税へと進化させなければならない。

2008年1月11日  読売新聞)
現在位置は
です