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(1)「距離」測るベテラン


麻生氏、首相支え「次」狙う

 麻生太郎外相(66)は大型連休に米国、ロシア、エジプトの3か国を歴訪し、「安倍外交」をサポートした。太平洋を横断する機中で、麻生の脳裏には、2か月前の安倍首相(52)との密談の光景がよぎったかもしれない——。

■「必ず支える」

 2月28日午後9時過ぎ、麻生が乗った車は、首相番記者の目をかいくぐり、首相公邸に滑り込んだ。安倍からの直々の誘いだった。

 安倍との会談は約2時間半にも及んだ。参院選に向け、公務員制度改革の進め方などで悩んでいた安倍に、麻生はこう助言した。

 「総理・総裁の力は絶大だ。好きなようにおやりになればいい。私が反対することはありません」

 当時、閣僚の相次ぐ失言などで安倍内閣の支持率は急落していた。安倍は窮地の相談相手に麻生を選んだ。安倍は後日、「麻生さんは必ず、私を支えると言う。信頼している」と周囲に漏らした。

 麻生にとって、安倍の誘いは「渡りに船」だった。

 昨年12月に自民党旧河野派を引き継いで麻生派を旗揚げしたが、所属議員はわずか15人。麻生には「数」による後ろ盾がない。麻生はよく、自分に言い聞かせるようにこんな言葉を口にする。

 「最近の自民党で、非主流ででかくなった派閥はない。逆に、主流派で小さくなった派閥もないんだ」

 麻生は昨年9月の党総裁選後、安倍から幹事長に指名されると信じていた。参院選後の内閣改造・党役員人事で「今度こそ、幹事長ポストを射止めたい」と狙っている。

 〈安倍を支えることで党内で影響力を高め、次期首相の座を狙う〉

 そんな戦略を描く麻生にとって、安倍とのパイプは“命綱”だ。

 とはいえ、総裁選で推薦人(20人)の確保にすら苦労している現状から脱するには、他派閥との連携強化も欠かせない。目をつけたのは、同じ旧宮沢派(宏池会)の流れをくむ谷垣派だった。

 「連隊旗はあなたにあげよう。ただ、総裁選は先にやらせて欲しい」

 麻生は昨年暮れ、谷垣禎一・前財務相(62)と2度も会食し、そう持ちかけた。谷垣、麻生両派が結集し、領袖(りょうしゅう)には谷垣が就き、総裁選には自分が先に出馬する、という提案だった。

 だが、谷垣の返答は、予想外の形で示された。谷垣は1月中旬、講演で麻生からの提案を暴露し、麻生派ではなく、丹羽・古賀派との連携を優先させる考えを表明した。旧宮沢派系の3派閥が再結集する「大宏池会」構想を自らが主導して実現させる、という麻生構想は足踏み状態だ。

 麻生は、昨年の総裁選で自分を支持してくれた他派閥議員への働きかけも続ける。4月16日夜、麻生を応援する議員による「太郎会」の会合が開かれた。麻生は、太郎会会長に就任した津島派の鳩山邦夫・元文相(58)に感謝の気持ちを込めて花束を手渡した。

 麻生が次期総裁選に出馬すれば3度目の挑戦だ。麻生は「おれは80歳まで元気だ」と周囲に語る。しかし、自らが支える安倍が長期政権を謳歌(おうか)すれば、自分は高齢になっていく、というジレンマを抱えている。

■「外交非主流派」

 安倍と距離を置くことで存在感を取り戻そうとしているベテラン議員もいる。

 連休中、自民党の「アジア外交・安保ビジョン研究会」の一行が、中韓両国を訪れた。メンバーは、山崎拓・前副総裁(70)と、加藤紘一・元幹事長(67)ら。

 4月24日昼、東京・元麻布の中国大使公邸で壮行会が開かれた。王毅大使が流暢(りゅうちょう)な日本語で興味深そうに質問した。「新YKKを作ったって本当ですか」「研究会は、どんな団体ですか」

 山崎は、「新YKKは加藤さん、古賀誠(元幹事長)さんと私とのアジア外交重視の連携です。加藤さんは研究会を『外交非主流派の集団』と呼んでますよ」と説明した。

 山崎には、対北朝鮮外交で「圧力」を重視する安倍外交は危ういものに映る。1月には自ら訪朝して北朝鮮高官と会談、「対話」路線を鮮明にした。安倍からは「日本の基本方針、国際社会の認識を踏まえてほしい」と不評を買った。

 〈参院選で与党が過半数を割った場合、安倍はすぐに退陣しなくても、いずれ国会運営で行き詰まる〉

 山崎は選挙後の政局をにらみ、非安倍勢力の結集を図ろうとしている。

 だが、党内には、「山崎、加藤のYK時代は終わった。2人に付いていく人は少ない。政局にならない」(谷垣派幹部)との見方が多い。山崎派内からは「安倍批判は控えてほしい。非主流派では入閣できない」と悲痛な声もあがる。

 戦後生まれの首相の誕生で、ベテラン議員たちの立ち回りは厳しさを増している。

 (文中敬称略)

 大型連休も終わり、夏には最大の政治決戦となる参院選を迎える。与党の実力者は選挙後の人事や政局流動化をにらみ、布石を打ち始めた。「夏へ」とうごめく人間模様を探った。

2007年5月8日  読売新聞)
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