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首相歩み寄り姿勢参院の与野党逆転は何をもたらすのか――。参院選の惨敗で、政府・与党の政権運営はいっそう厳しくなった。安倍首相は野党に歩み寄る姿勢を示しているが、政権奪取を目指す民主党の小沢代表は与党との協調には否定的だ。秋の臨時国会では、参院の過半数をにぎる野党と激しい攻防になるのは確実だ。(政治部 池辺英俊、穴井雄治) 「参院選の結果が出た以上、ゼロベースで真剣に取り組む」 自民党の中川幹事長は30日夜のNHKの番組で、民主党が政治資金規正法改正案を臨時国会に提出した場合の対応を問われ、過去の経緯にとらわれずに臨む姿勢をアピールした。中川氏は選挙中は、「無責任野党」と民主党を厳しく批判してきたが、参院選の結果を踏まえ、一転して協調姿勢を示さざるを得なかった。 与党にとって今後の国会運営の試金石となるのは、「政治とカネ」を巡る同改正案と、テロ対策特別措置法改正案だ。安倍首相も30日の記者会見で、「テロ対策特別措置法(改正案)は、臨時国会の一番重要な法案になる」と指摘した。 海上自衛隊がインド洋で米国艦船などに給油活動を行う根拠法である同法は、11月1日に期限が切れる。過去3度延長したが、民主党はいずれも反対した。自民党幹部は「改正案が成立できなければ、日米同盟の根幹が揺らぐ」と強調する。 与党は、野党が抵抗するのであれば、むしろ衆院通過後直ちに参院で否決されるのを望んでいる。衆院で再議決し、3分の2以上の賛成で成立させる時間ができるためだ。 与党は逆に、「60日以内に議決しないときは、衆院は参院が法案を否決したものとみなす」という憲法の規定を逆利用し、野党が60日近くまで採決を先延ばしすることを懸念している。臨時国会召集が9月だとすれば、野党のこうした出方で改正法は廃案に追い込まれることになるためだ。 「政治とカネ」では、与党は先の通常国会で、資金管理団体の経常経費支出(人件費除く)を透明化する改正政治資金規正法を成立させた。すべての政治団体を規制対象にした民主党案は否決された。 しかし、赤城農相の政治団体の事務所費問題が発覚し、政治団体を対象外とした与党改正法の「不備」が改めて指摘された。参院選での惨敗を踏まえ、首相は30日、再び改正案の検討を指示したが、これも「民主党と共同提案で円満成立を目指す協調姿勢の表れ」(政府筋)と見られている。 与党では、衆院で3分の2以上の議席を持つことを踏まえ、「参院で法案を否決されたら、衆院での再議決で粛々と成立させていけばよい」と強気の声も出ている。だが、公明党幹部は「衆院での再議決を繰り返すと、野党が反発して問責決議案を出す可能性が強まる。『参院選での民意を無視するのか』と世論も反発しかねない」と懸念する。 実際、1998年、防衛庁の不祥事で問責決議が可決された額賀防衛長官(当時)は辞任に追い込まれた。与党は当面、「慎重な上にも慎重な国会運営」(自民党の二階俊博国会対策委員長)を余儀なくされそうだ。 ![]() 鳩山氏テロ特措法反対 民主、政権へ揺さぶり参院第1党となった民主党は、政府提出法案の審議を引き延ばしたり、否決したりして政府・与党を揺さぶり、衆院解散・総選挙に追い込む戦略だ。 菅代表代行は30日夜、民放テレビの番組で、「国民が『安倍さんノー』と言ったのに、それを無視するのは理解できない」と述べ、首相退陣を改めて求めた。 同党は今後、衆院選の準備を急ぐ方針だ。菅氏と鳩山幹事長は30日、連合本部で高木剛会長と会い、年内にも衆院選小選挙区の候補擁立を終えたいという意向を伝えた。 国会での焦点は、テロ対策特措法改正案への対応だ。鳩山幹事長は30日、都内で記者団に、「延長すべきではない。それも含めて選挙の審判が下ったと思っている」と、期限延長に反対する考えを示した。 民主党はこれまでも、「テロ特措法に基づく自衛隊の活動が国際的にどう役立っているのかが明確ではない」などと同法の延長に反対してきており、今回も「反対」で調整する。共産、社民両党などと歩調を合わせる意味もある。 しかし、前原誠司・前代表は30日のCS放送番組で、「我々は今、『イラクは撤退すべきだ。テロ特措法もだめだ』と両方言っている。本当に我々が両方ともノーと言って(自衛隊が)撤退すると、日米関係は相当大変なことになる」と述べた。前原氏に同調する保守系議員も少なくないと見られ、党内の意見調整が難航する可能性も出てきた。 小沢代表の健康問題も再燃している。小沢氏は30日も体調不良を理由に都内の自宅にこもった。周辺は「医師が『疲れがたまり、風邪っぽいので、休養を取ったほうがいい』と診断した」と説明しており、31日の党役員会に出席するかどうかも微妙だ。 渡部恒三最高顧問は30日の民放の番組で、「小沢君はよくやった。満点だ。頑張ったから疲れたんだろう」と小沢氏をかばった。ただ、執行部に距離を置く議員からは「今後の難局を乗り切れるのか」という声も漏れている。 政権能力試される民主解散がない参院は今後、少なくとも3年間は民主党優位が続く。第1党となった民主党は政権担当能力があるのかどうか、真の実力を試される。 テロ対策特別措置法改正に関し、鳩山幹事長は自衛隊の派遣期限延長に反対する見解を示した。日米同盟を軽視し、国際社会の日本に対する評価を低下させる考え方だ。 与党との対決を演出するだけの姿勢では、国民の信頼、世界の信用を失いかねない。(世論調査部 大田健吾)
(2007年7月31日 読売新聞)
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