<3>「言葉遊び」の原発論戦
日本未来の党の嘉田代表は6日、千葉県で小刻みに街頭演説を重ねた。主張の大半を原発政策にあてた。
「京都、大阪、神戸。蛇口をひねったら、琵琶湖の水なんです。万一、若狭湾の原発で事故が起きたらあっという間に琵琶湖は汚染され、関西は干上がってしまう」
嘉田は、原発への不安を強調した上で、10年以内に全原発を完全に廃炉とする「卒原発」への理解を求めた。通行人や買い物客らが足を止め、耳を傾けた。
民主党を離党し、千葉4区で野田首相の対抗馬となる未来の党の三宅雪子前衆院議員はこの日、「野田首相がお子さんの命と健康を脅かしていたんです」と語った。
未来の党の「卒原発カリキュラム」は、関西電力大飯原発の即時停止や原発新増設禁止、再生可能エネルギーの飛躍的な普及などを掲げる。主導したのは、飯田哲也代表代行。かつて橋下徹大阪市長の原発政策のブレーンだった。しかし、橋下は今、飯田が作った計画を「10年後に火星に行くと言っているようなもの」と批判する。
嘉田自身、今月に入って、いったん原発再稼働の容認を示唆、その直後に記者会見を開いて修正する一幕があった。
民主党が掲げるのは、「2030年代の原発稼働ゼロ」。そのために、あらゆる政策資源を投入するという。
原発ゼロを明言しない自民党を「続原発」と野田は定義し、「脱原発か、続原発かの戦いだ」という。しかし、民主党にしても、「ゼロ」に至る手立てと道筋は、明確でない。
「卒原発」「脱原発」「続原発」――。自民党の安倍総裁が「言葉遊び」と指摘するように、選挙戦で、現実的なエネルギー政策を正面から論じる機運はなかなか高まらない。
脱原発 地元事情に直面…福岡9区
野田首相は、「脱原発」か「続原発」かの戦いだと言うが、現実は、そう単純化できるわけではない。
「原発はなくて済むならないほうがいい。だけど、自分の実力を超えたスピードで走ってはいけない」
福岡9区で再選を目指す民主党の緒方林太郎前衆院議員は6日、北九州市の集会所で約40人の住民を前に、こう訴えた。原発ゼロに向けて再生可能エネルギーなどの比率を高めていくにしても、電力の安定供給や発電コストなどを見極める必要がある。拙速は慎むべきだ、というのが緒方の主張だ。
緒方は今月初め、支持者にこう説明した。
「選挙が近いとどうしてもバナナのたたき売りみたいになる。非現実的な政策は取らないし、再稼働だってするんです」
1901年に官営の八幡製鉄所が操業を始めた同市は、鉄を基幹産業とするものづくりの街だ。
九州電力管内の6基の原発はすべて運転を停止しており、九電は先月、来年4月から企業向けで平均14・22%という電気料金値上げの計画を発表した。火力発電の燃料費がかさむためだ。約60人の従業員を抱える鋼材流通加工「自見産業」(北九州市)の自見栄祐会長(70)は「うちの電気代は年間3000万円、値上げで420万円上がる。経営をむちゃくちゃに圧迫する。とてもしのげない」と反発する。
自民党候補の三原朝彦元衆院議員は「一度立ち止まって考えるべきだ。原子力、再生可能エネルギー双方の研究をして、再生エネルギーの価格が下がってくれば、そちらにカジを切ってもいい」と言う。
エネルギー問題について、緒方と三原の主張は、重なり合う。
| 福岡9区=北九州市若松・八幡西区など | |||
|---|---|---|---|
| 真島 省三 | 49 | 共新 | |
| 荒木 学 | 47 | 維新 | 〈み〉 |
| 三原 朝彦 | 65 | 自元《5》 | 〈公〉 |
| 緒方林太郎 | 39 | 民前《1》 | 〈国〉 |
| 届け出順。《 》は当選回数、〈 〉は推薦・支持。以下同じ | |||
建設予定地の苦悩…山口2区
中国電力が計画する
山口2区に立候補した民主党の平岡秀夫元法相は6日、強い海風が吹く上関町でマイクを握り、脱原発を訴えた。
「あの福島原発でどんなことが起こったか、覚えていますでしょうか。もしかしたら、あのとき東日本が壊滅したかもしれない」
だが、ただちに建設を中止すれば、地元に与える影響は大きい。町内は、建設作業員の宿泊施設として建てられた民宿に空室が目立つ。
平岡は「上関原発の建設は行わない。しかし、国策として進めてきた原発をやめるからには、国策として上関の街づくりに協力する」と持論を展開した。最後は「私は閣僚までやった人間だ。どうか信じていただきたい」と訴えた。
しかし、原発建設を求める声は民主党支持者の中にもある。連合山口の幹部は「厳しい戦いだ。平岡さんが『脱原発』と言えば言うほど、労組票が逃げるけえ」と頭を抱える。
参院議員からくら替えする自民党の岸信夫前参院議員は6日、上関町で、「どのようなエネルギーのベストミックスを組んでいくのか。それが確認されなければ、地域の原発をどうするか結論を出せるものではない」と語った。さらに、「何より重要なのは、この地の皆さんが30年間、国策に従い、たくさんの苦労を積み重ねてきたことだ」と地元経済に配慮していく姿勢を強調した。
「先生、『脱原発』の世論の中、上関以外では、原発のことは言わん方がいいです。原発だけが選挙じゃないですよ」
自民党上関支部長の右田勝上関町議(71)は最近、岸にこう助言した。岸の陣営は、「原発論争」の土俵には上がらないように努めており、岸が、原発政策に触れることも少ない。(敬称略)
| 山口2区=岩国市、下松市、光市など | |||
|---|---|---|---|
| 赤松 義生 | 58 | 共新 | |
| 灰岡 香奈 | 29 | 維新 | 〈み〉 |
| 岸 信夫 | 53 | 自新 | 〈公〉 |
| 平岡 秀夫 | 58 | 民前《5》 | 〈国〉 |
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