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    選挙の争点や各党の動きをお伝えします。
    政策点検 安倍内閣

    (1)黒字化より財政出動

     安倍晋三首相(62)が政権に返り咲いてから4年8か月。順調だった内閣支持率が落ち込み、「1強」体制は大きく揺らいでいる。来年9月に自民党総裁の任期切れ、12月に衆院議員の任期満了が迫る中、首相はどのように態勢立て直しを図るのか。政権浮揚の鍵を握るのは、「経済」はじめ政策面での巻き返しだ。首相の戦略を探る。

    首相、基礎的収支こだわらず

     首相が掲げる経済政策「アベノミクス」は、最大目標である「デフレ脱却」が行き詰まっている。賃金や個人消費の伸びは弱いまま。物価上昇率2%の達成時期は日本銀行が「2019年度頃」に先送りし、2018年12月の衆院任期満了までの脱却は難しくなった。

     アベノミクスの次の一手が見通せない中で、増税を否定して財政出動を訴える「シムズ理論」が今年に入って紹介された。金融緩和が行き詰まり、財政出動にかじを切るうえで理論的な支柱となる内容だ。

     ただ、政府・自民党は2020年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を黒字化する目標を掲げている。シムズ理論通りに財政出動しようとすると、PBという壁が立ちはだかる。PBは、社会保障や公共事業などに充てるお金が、その年の税収などでどれだけ賄えているかを示す。

     8月29日夜、東京・有楽町の老舗フランス料理店。自民党の西田昌司参院議員は食事が始まるとすぐ、安倍首相に熱弁を振るった。

     「PBにこだわっていると国を潰す。今は財政出動が必要だ」

     首相は「PBを目標にするのは意味がないし、20年度の目標は現実的ではない」とあっさりうなずくと、「財政再建も必要だが、財政出動をしないといけない」と言葉を継いだ。公約破りの発言も意に介さず、首相は上機嫌にワインを傾けた。話は弾み、出席者4人でワイン2本が空になった。

     シムズ理論をなぞるかのように、首相は財政政策の軸足を緊縮路線から拡大路線へと移している。1月の施政方針演説でPBに言及しなかった狙いを「PBの概念を捨てる」ためだと周辺に漏らした。

     首相の心変わりを象徴するのが、政府が6月に決めた「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」だ。PB黒字化と並ぶ財政健全化の指標に、債務残高の対国内総生産(GDP)比率引き下げが明記された。債務が増えても、GDPがそれを上回るペースで伸びれば数値は改善する。GDP比は政府が「財政健全化のための財政出動」を訴える方便に使える。

    増税で健全化 保証なく

     財政健全化を重視する財務省は、2019年10月に予定される消費税率10%への引き上げに望みをつなぐ。

     自民党内の「ポスト安倍」は予定通り増税すべきだとの立場だ。岸田政調会長は5日のインタビューで「10%への引き上げは確実に行うべきだ」と語った。石破茂・元地方創生相は5日、名古屋市で講演し、「嫌なことを先送りしていると国は滅びる」と見えを切った。

     最大野党である民進党の前原代表も「消費税率が上がるのは法律で決まっている」と増税を求める。消費増税に向け、首相は内堀も外堀も埋められた格好だ。

     しかし、増税で景気が腰折れすれば、足踏みが続くアベノミクスの先行きはおぼつかない。財務省内には「三たび延期するのでは」との疑念がくすぶり続ける。

     たとえ消費増税が実現しても、財政健全化につながる保証はない。首相は西田氏らとの会食で、「消費税を5%から8%に上げたが、増えた税収の8割を国債償還(借金返済)に使われた」とこぼしたという。

     自民党内には、教育無償化財源に増税分を回すべきだとの議論がかまびすしい。前原氏も、増税分を財政再建に回さず、教育や福祉に充てるよう訴える。消費増税で見込まれる税収は年5.6兆円。新たな「宝の山」を当て込み、政治の世界では財政規律そっちのけの胸算用が始まっている。

     シムズ理論 ノーベル経済学賞の受賞者、米プリンストン大のクリストファー・シムズ教授が提唱する。〈1〉デフレ脱却に向けて、政府が増税を否定して財政支出を増やす〈2〉物価が上がることを予測し、その前に消費しようとする動きが広がる〈3〉物価上昇で税収が増え、一時的な財政悪化を経て財政再建につながる――という流れを想定している。(2017年9月8日の読売新聞朝刊に掲載された記事です)

    2017年09月28日 13時45分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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