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    選挙の争点や各党の動きをお伝えします。
    政治の現場

    区割り改定(2)岩手

    「元師弟」共闘か対決か

     7月8日の三陸沿岸は、夕日が傾いても蒸し暑かった。

     「どうなんだ。新しい3区で出んのが?」

     岩手県陸前高田市議の菅野稔(71)は、市内の「食堂かもん」の座敷に入るなり、民進党衆院議員・黄川田(きかわだ)徹(63)(当選6回)の秘書に尋ねた。秘書は、奥に座る黄川田に聞こえぬよう、小声で「誰にもわがんね。党本部が決めることだからさ」と応じた。

     市内では、2011年の東日本大震災で約1800人の死者・行方不明者が出た。黄川田はこの時、妻と長男、義父母を津波で亡くした。「かもん」も津波にのまれたが、海岸線から約1キロ離れた高台に再建された。黄川田は震災前から足しげく通う。

     この日の出席者は16人を数え、ジョッキに注がれた生ビールが座卓に並んだ。黄川田は立ち上がると、先ほどの菅野の質問が聞こえていたかのように、今後の身の振り方を語り始めた。

     「私の任期は長くても来年の12月までだが、私は党本部で『お預かり』っちゅうことになっております。焼かれるか、煮られるか、生で食われるか……」

     生ビールの白い泡が少なくなっても、ジョッキに手を伸ばす者はいなかった。

     定数削減を柱とする改正公職選挙法の施行で、岩手県内の選挙区は4から3に減る。陸前高田など旧3区に属していた南三陸を地盤とする黄川田だが、民進党県連は5月、黄川田を内陸部の新3区の総支部長とするよう、党本部に上申することを決めた。県北部と三陸にまたがる広大な新2区の総支部長には、県北部に地盤を持ち、旧2区で2回当選経験のある(はた)浩治元衆院議員(53)を擁立する方針だ。

     地盤の三陸から押し出された格好の黄川田は、支援者に「新2区では(はた)(はた)にして頑張れっちゅうことだ」と冗談めかすなど、未練を見せない。ただ、胸中は複雑だ。このまま新3区で次期衆院選に出馬すれば、自由党共同代表の小沢一郎(75)(当選16回)とぶつかる。前回衆院選は旧4区で当選した小沢だが、区割り見直しを受け、新3区に名乗りを上げている。

     黄川田と小沢の因縁は、深い。

     中選挙区時代の陸前高田市は小沢の強固な地盤で、黄川田の義理の祖父は、小沢の父・小沢佐重喜(さえき)衆院議員の熱心な支援者だった。黄川田は2000年衆院選で、当時、自由党(旧)の党首だった小沢に擁立され、初当選した。その後、民主党に移るなど小沢と行動を共にしたが、地元で起きた震災への対応を巡り、黄川田が小沢を批判。2人は、たもとを分かった。

     「かつての師弟」が注目を浴びるのは、岩手が民進、共産、自由、社民の4党による「野党共闘」の試金石だからでもある。小沢の側近は言う。

     「自由党が新2区で民進党の畑さんを応援しようって時に、民進党県連トップの黄川田さんが小沢一郎と対決するのかって話だ」

     不協和音は覆い隠せない。民進党岩手県連が6月に盛岡市で開いた県連大会に、共産、自由、社民3党の関係者は招かれなかった。

     小沢は強気だ。

     「政権取るために、どうしたらいいかっちゅう話だ。取るためには、野党が一つにまとまらないと勝てない。当たり前のことを、筋道を通して当たり前にやればいいんだ」

     小沢は、岩手での野党共闘の成否が全国に影響すると言わんばかりに、民進党や黄川田をけん制する。小沢が新3区内で配り始めた自由党のポスターには、自身の顔写真とともに「結集」の2文字が躍る。

     黄川田がげたを預けた民進党本部の判断は、選挙直前までもつれる見通しだ。黄川田の身を案じる地元県議からは「比例だろうと、なんだろうと、議席だけは確保する取り組みを」と悲鳴にも似た声が出ている。(敬称略)

     

    • 岩手県の小選挙区数は4から3に減る
      岩手県の小選挙区数は4から3に減る

     岩手の小選挙区
     次期衆院選では4から3に減少する。盛岡市を中心とする新1区には、旧2区に属していた旧玉山村が編入され、県庁所在地の分断状態は解消された。
     新2区は宮古市、陸前高田市、釜石市、大船渡市など三陸沿岸の市町村を網羅し、北は青森、西は秋田、南は宮城の各県に接する。県土の約6割に当たる9653平方キロ・メートルは青森県とほぼ同じ広さで、本州最大の選挙区となる。新3区は、奥州市を中心とする旧4区に、世界遺産登録された中尊寺金色堂などがある平泉町と一関市が加わった。(2017年7月21日の読売新聞朝刊に掲載された記事です)

    2017年09月29日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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    候補者(50音順)

    党派別立候補者数

        小選
    挙区
    比例 重複 公示前
    勢力
    うち
    女性
    自民 332 25 277 313 258 284
    希望 235 47 198 234 197 57
    公明 53 5 9 44 0 34
    共産 243 58 206 65 28 21
    立憲民 78 19 63 77 62 15
    維新 52 4 47 52 47 14
    社民 21 4 19 21 19 2
    こころ 2 1 0 2 0 0
    諸派 91 31 44 47 0 0
    無所属 73 15 73 - - 45
    合計 1180 209 936 855 611 472

    欠員3

    希望=希望の党、立憲民=立憲民主党、維新=日本維新の会、こころ=日本のこころ