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    選挙の争点や各党の動きをお伝えします。
    政治の現場

    区割り改定(3)奈良・三重

    「難敵」前に調整難航

     「ずっと『奥野を』と訴えてきたのに、次から変わってしまうのか?」

     「広陵町奥野会」会長の竹村恵史(69)が不安げに問うた。

     自民党衆院議員の奥野信亮(73)(当選4回)は「いや、まだ何も決まっていないよ」と慌てて制した。奈良盆地に遠く響くセミの鳴き声が、2人のやりとりに重なった。

     7月16日、奈良県広陵町にある支援者の事務所に集まったのは奥野、竹村を含め13人。選挙区の区割り改定を受け、対応を相談するためだった。

     奥野が地盤とする旧奈良3区は新2区と新3区に分割され、広陵町は新2区の一部となった。奥野はどちらの選挙区から出馬するのか――。この日、答えは出なかった。

     「奥野会」の歴史は古い。昨年11月に103歳で死去した父で元法相の奥野誠亮(せいすけ)の代から、半世紀以上となる。奥野は周囲に「次も選挙区から出る気持ちに変わりはない」と繰り返す。

     とはいえ、自民党内には新2区と新3区で出馬を有力視される現職が、それぞれいる。新2区は旧2区を地盤としてきた総務相の高市早苗(56)(当選7回)、新3区は旧4区を牙城とする衆院議員の田野瀬太道(43)(当選2回)だ。

     高市は14日の記者会見で奈良県内の候補者調整について問われ、「党本部でお決めになると存じております」と態度を明らかにしなかったが、周辺には新2区出馬への意欲を隠さない。田野瀬も「県南地域の発展のために頑張るのが使命」と、自民党総務会長を務めた父・良太郎から引き継いだ地盤にこだわる。

     高市には新1区への挑戦を勧める向きもある。新進党から出馬した1996年、旧1区で当選した“実績”があるためだ。奥野の後援会幹部は「高市が新1区に回れば、新2区に奥野、新3区に田野瀬で丸く収まるのだが」と淡い期待を抱く。

     しかし、高市が首を縦に振る可能性は低いとみられている。新1区で民進党から出馬するのは元国土交通相の馬淵澄夫(56)(当選5回)だ。馬淵は2003年に民主党公認で初当選して以来、衆院選で負けを知らない。高市は03年選挙で馬淵と対決し、落選の苦杯をなめて旧2区へと「国替え」した苦い経験を持つ。

     党勢低迷に悩む民進党にあって、馬淵は「いかなる場合も全力で戦う」と、6回目の当選に向け支持固めに余念がない。自民党内では、前回衆院選の旧1区で落選した小林茂樹(52)が新1区に名乗りを上げており、高市が新1区に出れば再調整が必要になるという事情もある。

     苦肉の策として自民県連で浮上したのが、小林、高市、田野瀬、奥野の4人のうち1人を比例選の近畿ブロックに単独立候補させ、名簿上位に優遇して当選を事実上、確約する案だ。県連は6月、党本部に対し、候補者調整で比例に回る場合は優遇するよう要請した。

     この時、併せて「定年制の適用除外」を求めなかったことが、波紋を広げた。自民党は、73歳以上の候補を比例選で公認しない「定年制」を内規で設けている。来年3月で74歳になる奥野が比例に回ると、これに抵触する。県連が適用除外に触れなかったのは、要請すれば、「奥野を比例に回す」という意向がにじんでしまうからだった。事情を知る県連幹部は解説する。

     「選挙区から絶対に退かないという、奥野の強い意志の表れだ」

     候補者調整は難航の気配が強まっている。

    「比例で優遇」確約望む

     一足先に自民党が調整を終えた三重県も、事情は同じだった。小選挙区が5から4へと減る中、新3区に出馬する民進党前代表の岡田克也(64)(当選9回)と誰が相まみえるのか、思惑含みの譲り合いが展開された。岡田は前回衆院選の旧3区で、自民党候補に比例選での復活当選も許さないほどの票差をつけた。自民にとっては「難敵」だ。

     調整の結果、前回は旧2区で落選し、比例東海ブロックで復活当選した島田佳和(47)(当選2回)が新3区に回ることになった。新1区は旧4区を地盤としてきた前厚労相の田村憲久(52)(当選7回)、新2区は旧1区の元厚労相・川崎二郎(69)(当選11回)、新4区は旧5区の衆院議員・三ツ矢憲生(66)(当選5回)を公認する方針だ。県連会長の三ツ矢は「小選挙区で勝った現職を優先した」と説明する。

     自民県連は、島田を比例選に重複立候補させ、東海ブロックの名簿上位で優遇するよう党本部に要請する構えだ。島田も、新3区に回ることをのんだのは「優遇の確約」を期待してのことだと打ち明ける。党の裁定に注目が集まる。(敬称略)

     

    • 三重県と奈良県は定数がそれぞれ1減となる
      三重県と奈良県は定数がそれぞれ1減となる

     奈良の小選挙区 4から3に減る。新1区は、奈良市と旧2区の生駒市で構成される。新2区は、旧2区の天理市や大和郡山市などに、旧3区から香芝市、北葛城郡4町、磯城郡3町の計8市町が加わる。旧3区の御所、大和高田、葛城の3市は、旧4区の市町村と合わせて新3区を構成する。吉野山地を含む新3区は、県土の約8割を占める。

     

     三重の小選挙区 5から4に減る。新1区は、旧1区の津市と旧4区の松阪市で構成される。津市は旧1区と旧4区に分断されていたが、今回の見直しで解消された。旧2区の亀山市、鈴鹿サーキットがある鈴鹿市に、旧1区の伊賀市などが加わり、新2区になる。新3区は旧3区とほぼ同じだが、旧2区の四日市市の一部が新たに加わる。新4区は、伊勢神宮のある伊勢市など旧5区に、旧4区の多気町など多気郡3町が加わる。(2017年7月23日の読売新聞朝刊に掲載された記事です)

    2017年09月29日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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    候補者(50音順)

    党派別立候補者数

        小選
    挙区
    比例 重複 公示前
    勢力
    うち
    女性
    自民 332 25 277 313 258 284
    希望 235 47 198 234 197 57
    公明 53 5 9 44 0 34
    共産 243 58 206 65 28 21
    立憲民 78 19 63 77 62 15
    維新 52 4 47 52 47 14
    社民 21 4 19 21 19 2
    こころ 2 1 0 2 0 0
    諸派 91 31 44 47 0 0
    無所属 73 15 73 - - 45
    合計 1180 209 936 855 611 472

    欠員3

    希望=希望の党、立憲民=立憲民主党、維新=日本維新の会、こころ=日本のこころ