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    選挙の争点や各党の動きをお伝えします。
    政治の現場

    区割り改定(4)熊本・鹿児島

    「名簿1位」巡り暗闘

    • (上)熊本県連が開いた政治セミナーで壇上に立つ園田氏(左)と金子氏(6月5日、熊本市で)(下)小里氏(中央)の支援を頼む宮路氏(右)(9日、鹿児島県日置市で)
      (上)熊本県連が開いた政治セミナーで壇上に立つ園田氏(左)と金子氏(6月5日、熊本市で)(下)小里氏(中央)の支援を頼む宮路氏(右)(9日、鹿児島県日置市で)

     閉店したスーパーを居抜きで改装した選挙事務所は、約400人の人いきれで、息苦しくなるほどの蒸し暑さだった。7月8日、熊本県八代市長選(8月27日投開票)の現職候補の事務所開き。自民党衆院議員の金子恭之(56)(当選6回)が激励のあいさつに立った。

     「もうそろそろ選挙ばい。アドレナリンが沸々と出とります」

     熊本は、区割り改定で小選挙区が5から4に減る。旧5区に属していた八代市は、新4区に入った。八代を地盤にし、今度は新4区からの出馬を狙う金子にとって、今回の市長選は改めて浸透を図る好機と言えた。

     必勝を祈願する金子の「為書(ためが)き」のそばに、同じ大きさの為書きが並んで貼られていた。贈り主は、自民党を離党後、たちあがれ日本、日本維新の会、次世代の党などを経て自民に復党した衆院議員の園田博之(75)(当選10回)だ。天草市など旧4区を牙城としてきた園田も、新4区からの立候補をうかがっている。

     「為書きは双方からもらう。事務所側は慎重を期してやっとるんやろう」

     今はまだ、金子と園田のどちらが新4区で出るかわからない。だからこそ、選挙区内の自民党関係者は些細(ささい)なことにも気を使う、とベテラン県議は明かす。

     自民党熊本県連は、新1~3区の立候補予定者を内定した。新4区だけ未調整なのは、金子と園田がそろって「1~3区には転出しない。どちらを4区の候補とするかは、県連で決めてほしい」と裁定を委ねたからだ。園田の秘書を8年務めた後、衆院議員に転じた金子は「園田先生との間で、争いはあり得ない」と平和的解決を強調する。

     県連幹事長の県議・前川(おさむ)(57)らは、2人のどちらかを比例選九州ブロックの単独候補とすることを念頭に、名簿1位で優遇するよう党本部に要請中だ。75歳の園田が比例に回る場合に備え、党の内規で定めた比例候補の「73歳定年制」について、特例も求めている。押しの強さは、党本部の選対幹部をして「肥後もっこすは、ぐいぐい来る」と、のけぞらせたほどだ。

     前川らの「名簿1位」へのこだわりには訳がある。

     3年前の前回衆院選。旧2区から出馬の意欲を示した自民党の現職・林田(たけし)(73)(当選5回)は、党税制調査会長を務めるなど実力者の元自治相・野田毅(75)(当選15回)にその座を譲り、比例選の単独候補に回った。県連は林田を九州ブロックの名簿上位で優遇するよう求めた。しかし、党本部が示した順位は重複立候補した現職たちより下で、当選ラインに届かなかった。林田は引退を余儀なくされた。

     その恨みは、今も尾を引く。野田は次期衆院選で新2区から出馬する予定だが、「林田派」を自称する自民党系無所属の玉名市議や和水(なごみ)町議らは、新2区への立候補を表明した財務省出身の若手を支援し、保守分裂の様相となっている。

     「新4区で同じもめ事を起こしちゃいかん」

     前川は、名簿順位を差配する党本部に「教訓」から学ぶよう訴える。

    党本部 言質与えず

     「おやじから聞いちょるかもしれんけど、比例に回ります。今度は小里先生の名前ば書いてください」

     自民党衆院議員の宮路拓馬(37)(当選1回)は9日、鹿児島県日置市の山あいで支援者宅を訪ね歩いた。新3区から出馬する同党衆院議員の小里泰弘(58)(当選4回)を紹介するためだ。

     鹿児島でも、選挙区が5から4に減る。自民党鹿児島県連は、宮路を比例単独候補とすることで候補者調整を終えた。宮路は前回選挙の旧3区で無所属候補に敗れ、比例選への重複立候補で復活当選した身だ。父で元衆院議員の和明から受け継いだ地盤を、旧4区の小里に譲るのは苦渋の決断だったが、受け入れた。

     自分のことのように小里支援を頼む宮路に、小里が「ペアで頑張っていきますので」と合いの手を入れると、庭を手入れしていた男性は「きばんなさいよ」と声をかけた。2人はこの日、21軒を訪問し、宮路が汗を拭い続けた青いハンカチはぐしょぐしょになった。

     県連会長の前農相・森山裕(72)(衆院当選5回、参院当選1回)らが熊本に先駆けて結論を出したのは、比例九州ブロックの名簿順位争いを優位に進めたいからだ。区割り見直しと合わせて行われた定数削減で、九州ブロックの定数も1減の20になり、名簿順位がますます物を言う。

     しかし、森山らが12日、党本部で二階幹事長と交わした「確認書」は、宮路の名簿上位登載について「要望を重く受け止める」との表現にとどまった。鹿児島、熊本を除く九州の各県連が「次の選挙は自民党に厳しい。特定の県の優遇は黙認できない」(若手議員)などと反発していることが背景にある。暗闘は熱を帯びている。(敬称略)

     

    • 熊本県と鹿児島県は定数がそれぞれ1減となる
      熊本県と鹿児島県は定数がそれぞれ1減となる

     熊本の小選挙区 5から4に減る。旧1~4区に4分割されていた熊本市は、東、北、中央の3区が新1区に、西、南の両区が新2区になった。旧4区のうち、熊本地震で甚大な被害を受けた益城町など上益城郡5町は、新3区に編入された。イルカウォッチングなどの観光が人気の南西部の天草諸島などは、八代市など南部の旧5区と統合され、新4区になった。

     

     鹿児島の小選挙区 5から4に減る。薩摩半島の大部分を網羅していた旧3区が3分割され、新1~3区に編入された。旧3区に属していた鹿児島市の一部は新1区となる。枕崎港がある枕崎市や南さつま市は新2区。九州電力川内原子力発電所がある薩摩川内市、日置市は新3区となった。旧4区に属していた霧島市は、大隅半島全域を含む新4区に編入された。(2017年7月26日の読売新聞朝刊に掲載された記事です)

    2017年09月29日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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    候補者(50音順)

    党派別立候補者数

        小選
    挙区
    比例 重複 公示前
    勢力
    うち
    女性
    自民 332 25 277 313 258 284
    希望 235 47 198 234 197 57
    公明 53 5 9 44 0 34
    共産 243 58 206 65 28 21
    立憲民 78 19 63 77 62 15
    維新 52 4 47 52 47 14
    社民 21 4 19 21 19 2
    こころ 2 1 0 2 0 0
    諸派 91 31 44 47 0 0
    無所属 73 15 73 - - 45
    合計 1180 209 936 855 611 472

    欠員3

    希望=希望の党、立憲民=立憲民主党、維新=日本維新の会、こころ=日本のこころ