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    政治の現場

    区割り改定(5)青森

    腹案は「コスタリカ」

     7月20日昼、青森県むつ市の電器店。創業48年の店内には、昭和の香りが残る。男性店主(75)と向き合った中村満義(66)は、すがるように頭を下げた。

     「昔あった後援会をもう一度、作っていただきたい」

     中村は自民党衆院議員・津島淳(50)(当選2回)の地元、青森市内で事務所長を務める。下北半島にあるむつ市は中選挙区時代、津島の父で元厚相の雄二(87)の地盤だった。雄二の後援会「盛雄会」が休止に追い込まれたのは、1994年の小選挙区比例代表並立制導入で、むつが青森2区となり、青森市を拠点とする雄二が1区に立ったためだ。

     長男の津島も旧1区で当選を重ねた。ところが今回の区割り改定で、父ゆかりの地は新1区に組み入れられた。むつには、盛雄会の元会員が残る。店主もその一人だ。電器店の壁には、色あせた雄二のポスターが、まだ貼られている。

     中村の狙いは「新1区から出たい」と公言する津島のため、かつて雄二を支えた古参の元後援会員を再び束ねることにあった。冷えたサイダーで中村をもてなした店主は、下北弁で「後援会長は、もうちょっと若ぐて知名度のある人がいいんでねえか」と謙遜しつつ、今後を見据えた政治談議に花を咲かせた。

     もっとも、自民党の新1区候補が津島だと決まったわけではない。旧2区の江渡(えと)聡徳・元防衛相(61)(当選6回)も、新1区への出馬をうかがう。江渡が地盤としてきた旧2区は、区割り改定で南北に分断された。江渡は、新2区での立候補と両にらみだ。

     7月20日夕、江渡は十和田市の催事場に支持者約120人を集めた。

     「極めて残念なことに、(選挙区が)真っ二つに切り裂かれたような状態だが、必ず7期の栄誉を勝ち取らなければならない」

     後援会長の小山田富弥(65)は悲痛な声で訴えた。

     黒のスーツにネクタイを締めた江渡のあいさつは、歯切れが悪かった。

     県連会長として候補者調整を主導する自身の立場も踏まえ、「なんとか今月中には一定のメドをつけたい」と語る一方、「なかなか皆さん、自分の思いが強いので、簡単にいくかどうか……」と苦悩の色をにじませた。

     江渡の腹案は「コスタリカ方式」の採用だ。津島、江渡、旧3区の衆院議長・大島理森(70)(当選11回)、旧4区の自民党衆院議員・木村太郎(52)(当選7回)の4人のうち、いずれか2人で一つの選挙区を分け合うことを想定した。ただ、新3区は区割り改定後も、旧4区とさして変わらない。このため、新1区か新2区でコスタリカ方式を導入する案が軸とされた。

     7月5日夜、東京・赤坂の日本料理店に津島、江渡、大島の3人が集まった。木村は諸事情を理由に欠席した。江渡は腹案を打ち明けたが、津島と大島は黙って聞くだけだったという。

     それから20日後の25日、木村が急逝した。自民党青森県連は、10月の補選に向けて候補者を公募する方針だ。補選は公職選挙法に基づき旧4区で行われるが、自民候補が当選すれば、次期衆院選では新3区から改めて出馬することになる。新3区へのコスタリカ方式適用は事実上、消えた。

     大島は「県連と党本部の調整を見守る」と沈黙を保つ。支持者は不安を隠さない。大島が県内の最長老国会議員で、会長を務めた旧大島派(現麻生派)では江渡が事務総長として大島を支えたため、「師弟の義理から江渡の提案をのんで、比例選に回ってしまうのでは」というわけだ。

     八戸市などを地盤とする大島は、自民党から新進党などを経て民主党に移った元農相・田名部匡省(まさみ)(82)や、娘の匡代(まさよ)(48)と旧3区で激しく議席を争った。その戦いは「八戸戦争」の異名を持つ。

     自民党八戸市支部は6月17日、今は民進党参院議員の匡代(衆院当選3回)が、再び衆院選にくら替え出馬する可能性も念頭に、大島に対し新2区から出馬するよう求める決議を採択した。「大島先生は34年間も八戸を拠点に国会議員を務めてきた」。支部長で県議の清水悦郎(68)は、勝てるのは大島だけだと強調する。

     青森では8月2日から始まる「ねぶた祭」で、短い夏が折り返しを迎える。候補者調整の最終結論が出るのは、祭りの後になる見通しだ。(敬称略、おわり)

     この連載は末吉光太郎、塩見尚之、萩原栄太、後藤香代、薩川碧、遠藤信葉、森山雄太、淵上隆悠が担当しました。

     

    • 青森県の小選挙区は4から3に減る
      青森県の小選挙区は4から3に減る

     青森の小選挙区 4から3に減る。新1区は、旧1区だった青森市と津軽半島東部に、旧2区だった下北半島のむつ市などが加わる。

     新2区は、県内で2番目に人口が多い八戸市など旧3区全域と、旧2区の十和田市、三沢市、上北郡の4町などで構成される。

     新3区は、桜の名所・弘前城がある弘前市など旧4区の大部分と、作家・太宰治が生まれた五所川原市など旧1区の一部で構成される。

      

     〈コスタリカ方式〉
     同じ選挙区から出馬を目指す同じ政党の候補2人が、小選挙区選と比例選で交互に立候補する。1994年、衆院選が中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に移行した際、自民党の現職が同じ選挙区で競合する事態を避けるために考案された。同一選挙区での連続立候補を禁じたとされる中米コスタリカの選挙制度にちなんで命名された。自民党は福島5区や岐阜4区などで採用してきたが、しこりを残した例も少なくない。(2017年7月27日の読売新聞朝刊に掲載された記事です)

    2017年09月29日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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    候補者(50音順)

    党派別立候補者数

        小選
    挙区
    比例 重複 公示前
    勢力
    うち
    女性
    自民 332 25 277 313 258 284
    希望 235 47 198 234 197 57
    公明 53 5 9 44 0 34
    共産 243 58 206 65 28 21
    立憲民 78 19 63 77 62 15
    維新 52 4 47 52 47 14
    社民 21 4 19 21 19 2
    こころ 2 1 0 2 0 0
    諸派 91 31 44 47 0 0
    無所属 73 15 73 - - 45
    合計 1180 209 936 855 611 472

    欠員3

    希望=希望の党、立憲民=立憲民主党、維新=日本維新の会、こころ=日本のこころ