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    選挙の争点や各党の動きをお伝えします。
    検証 アベノミクス

    (5)上がらぬ潜在成長率

    技術革新、規制緩和カギ

     「日本経済最大の課題は潜在成長率の引き上げだ」

     9月26日。茂木経済再生相の記者会見での言葉こそ、アベノミクスの狙いである。

     国の経済の実力を示すとされる「潜在成長率」。先進国は低下傾向にあり、特に日本は低い。

     〈1〉企業の設備投資や投資を増やす〈2〉労働力を増やす〈3〉技術革新などによって生産性を高め、新たな成長産業も生み出す――。これらを実現すれば、潜在成長率は上がる。女性の活躍推進や法人減税といった政策の目的も全てそこにある。

     2016年の就業者数は6465万人で、2012年から185万人増えた。女性と高齢者の就業者の増加が寄与したとみられる。

     だが、日本に詳しい世界的な経済学者、米ハーバード大のデール・ジョルゲンソン教授の見方は厳しい。

     「日本経済は成長したが、労働力が増えたからで、生産性が高まったからではない。アベノミクスの第1段階では、生産性の向上はほとんど見られなかった」

     働く人がいかに効率的に成果を出したかを示す「労働生産性」。経済協力開発機構(OECD)の統計からも、生産性が伸び悩んでいるのが分かる。

     今後、生産年齢人口(15~64歳の人口)の減少ペースは速まる。女性や高齢者の労働参加には限界がある。

     だからこそ、安倍首相は9月25日の解散表明の記者会見で、こう決意を示した。

     「生産性革命、そして人づくり革命、この二つの大改革が、アベノミクス最大の勝負だ」

    生産性革命 果たせるか

     アップルやグーグルといった成長企業が次々と登場する米国に比べ、日本は生産性が低い。どうすれば高めることができるのか。

     一例が技術革新だ。

     客が商品を入れた買い物かごを、店員のいないレジに置くと、すぐに支払金額が表示される。袋詰めも自動。ローソンが大阪府守口市の「パナソニック前店」で、今年2月に行った無人レジの実証実験である。

     価格などの商品情報が記録された電子タグ(荷札)を活用する。客が電子マネーなどで精算した場合、会計の時間は従来の平均40秒から23秒に短縮できたという。

     無人レジが広がれば、店員は新たな仕事に回ったり、労働時間を減らしたりできる。生産性は上がる。

    特区活用や自動運転 あの手この手

    • 特区制度を利用して建てられた農家レストラン。水田地帯の一角にある(9月28日、新潟市で)
      特区制度を利用して建てられた農家レストラン。水田地帯の一角にある(9月28日、新潟市で)

     規制緩和も潜在成長率を高める有効な手段になる。

     新潟市の田園地帯の一角にあるレストラン「ラ・トラットリア・エストルト」。朝採れ野菜のサラダなどが評判で、平日でも満席になることがある。

     店が立つのは本来、農業目的の利用しかできない「農用地区域」。出店できたのは、国が指定した地域に限って規制を緩和する「国家戦略特区」に新潟市が加わっているからだ。農家レストランは市内に3軒あり、周辺の加工品直売所や観光農園などを含めると年間で約45万人を集客する原動力になった。

     同市の担当者は「農地を抱える全国の自治体に広がれば、多大な雇用創出と経済効果がある」と話す。

     英国などが先行する「レギュラトリー・サンドボックス」も政府は採用した。

     規制を緩め、先端技術や新しいビジネスモデルを試す実験場を設ける内容だ。サンドボックスとは砂場のこと。子どもの砂遊びのように失敗してもいいから挑戦を後押しする。自動運転の実証実験などへの活用が期待されている。

     首相は幼児教育の無償化などを柱にした「人づくり革命」も掲げ、今回の衆院選に臨んでいる。

     少子高齢化が急速に進む日本経済の課題を克服するのは簡単ではない。アベノミクスをどう評価するのか。野党は有効な対案を示せるのか。10日公示、22日投開票の衆院選で有権者の判断が問われることになる。(2017年10月2日の読売新聞朝刊の記事です)

    (おわり)

    2017年10月03日 14時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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    女性
    自民 332 25 277 313 258 284
    希望 235 47 198 234 197 57
    公明 53 5 9 44 0 34
    共産 243 58 206 65 28 21
    立憲民 78 19 63 77 62 15
    維新 52 4 47 52 47 14
    社民 21 4 19 21 19 2
    こころ 2 1 0 2 0 0
    諸派 91 31 44 47 0 0
    無所属 73 15 73 - - 45
    合計 1180 209 936 855 611 472

    欠員3

    希望=希望の党、立憲民=立憲民主党、維新=日本維新の会、こころ=日本のこころ