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(上)首相主導権 どう生かす衆院選投票日から一夜明けた12日。自民党の青木参院議員会長は、半ばあきれ顔でつぶやいた。 「まさか、ここまで勝つとはねえ。変人じゃなきゃできないよ」 予想を超える大勝に、比例東京ブロックでは、自民党の名簿登載者が足りなくなり、社民党に議席を譲り渡す羽目になった。南関東ブロックでは、“数合わせ”で名簿に名前を載せた党職員までが当選した。 小泉首相の右腕、飯島勲首相秘書官は、6月上旬、首相からこう指示された。 「郵政民営化法案が否決されたら、衆院解散だ。必ず勝てる。だから、君は否決された時のことだけを考えていればいい」 だが、どうしたら勝てるのか。飯島氏は考え込む日々が続いた。 首相側近さえも予測できなかった、「小泉旋風」のすさまじさだった。 この結果が政権運営に及ぼす重みは計り知れない。 第1に、首相や執行部主導がますます強まる。 森前首相は12日昼、“犬猿の仲”で知られる武部幹事長を訪ねて、慰労した。「大幹事長になったなあ」と持ち上げる森氏に、武部氏は「いやいや、ははあ」と頭をかいた。 小選挙区制の下では、選挙での公認権を握る執行部の権限は強大だ。背けば、「刺客」を放つ政治スタイルも相まって、党内には、首相に本気で異を唱える者はいなくなる、との予測も出始めている。 第2に、国会運営が激変する。与野党間だけでなく衆参の関係が一変する。 衆院で与党に327議席あれば、一般の法案は、参院で否決されても、衆院で再議決することが可能だ。事実上、「参院は『再考の府』」(中曽根弘文・元文相)ではなくなる。 だが、巨大与党勢力が首相のリーダーシップを強化し、政治の安定につながるとは限らない。 1999年10月に誕生した自民、自由、公明3党の小渕連立政権は、衆院の7割の議席を占めたが、介護保険見直しの財源問題などで3党調整が難航し、結論を先送りするケースが相次いだ。 与野党対立が希薄になる分、与党内の緊張が高まるという構図だった。 小泉「自公」政権も、選挙戦を通じ、公明党への依存度は飛躍的に増した。憲法改正や教育基本法改正など基本政策で隔たりの大きい自公両党は、政策調整で角を突き合わせる場面が一段と増えるだろう。 無党派層など都市部の支持を維持するのも容易ではない。 「郵政民営化」はすべての懸案を解決する「魔法の杖(つえ)」と言わんばかりの首相の言動によって、有権者の変革への期待は膨らんでいる。「このドラマは郵政の一幕物でした」というのでは、無党派層は一気に離反しかねない。 石原慎太郎東京都知事は12日、首相にこう注文をつけた。 「外交も国際経済も含めて、はっきりした意思表示をしてもらいたい。国民がこれだけ付いているのだから」 首相は、改革路線を推進できるか。自民党内での強いリーダーシップを、与党内調整にどう生かすか、がそのカギを握っている。(政治部 永原 伸) (2005年9月13日 読売新聞)
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