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    インタビュー

    「アルカディア」日本初演…人間のおかしさ、今も昔も

    栗山民也…不条理でも前に進む/堤真一…登場人物みな不完全

    • 「演劇では、出会ったことのないものに、がーんとぶつかることができる」と語る栗山(右)と堤=菅野靖撮影
      「演劇では、出会ったことのないものに、がーんとぶつかることができる」と語る栗山(右)と堤=菅野靖撮影

     チェコ生まれの英国の劇作家トム・ストッパードの「アルカディア」の日本初演が6日に東京で開幕する。19世紀と現代の人々の思いが交錯する複雑な戯曲にどう挑むのか。演出の栗山民也と主要な役を演じる堤真一に意気込みを聞いた。(祐成秀樹)


     舞台は英国貴族の豪邸。19世紀初頭には詩人バイロンが出入りしたり、色恋沙汰が起きたりする一方、天才的な頭脳を持つ貴族の娘と家庭教師が知的な会話を重ねていた。約200年後の現在、残された数式や書き付けなどを巡り、女流作家やバイロン研究家、貴族の末裔まつえいが激論を交わす。

     ストッパードは「リアル・シング」といった戯曲や、映画「恋におちたシェイクスピア」の脚本など、鋭い言語感覚の知的な作品で知られる。1993年初演の本作では、二つの時代の物語が並行して進み、科学や文学、歴史などを巡る堅めのせりふが語られる。「大きな視野で考えないと」と栗山。「それぞれテーマを持つ登場人物が化学反応を起こしながらドラマを前に押し出す。すごい力がある作品です」と話す。

     だが、「難解」ではない。作者は「思想劇と笑劇のカップリング」と称したという。「激しく論じ合っていることが実は滑稽に見える」と栗山。堤は「クソ真面目な芝居かと思うと、貴族の愚かしさもすぐに見える。何しろ冒頭のせりふが『肉欲的な抱擁』って、何? ですから」と語る。今も昔も肉欲に翻弄される人間のおかしさも描かれているのだ。

     そして、井上芳雄、浦井健治らスターがふんする個性的な登場人物が作品を身近にする。例えば堤が演じるバイロン研究家のバーナード。新説を暴走気味に発表してしまう。「反省のない人物。彼みたいに生きられたら楽でしょう。この作品に出て来る人って、みんな不完全なんですよ」と堤。

     また、ストッパードはチェーホフ劇の翻訳も手掛けただけに、このロシアの劇作家と重なる点もあるようだ。「タッチは違いますけど、登場人物がダブるんですよ。世界は不条理で人間は苦しいけれど前に進むという、チェーホフの思想が彼の根っこにある」と栗山。

     栗山は新国立劇場の元演劇芸術監督。昨年の話題作「デスノート」のミュージカル版をはじめ、多彩な舞台を手掛ける。一方の堤は華も実力も兼ね備えた人気俳優だ。2人の本格的な顔合わせは約25年ぶりだ。堤は「栗山さんには身をゆだねられる。相手のことだけを考えて演じられます」。30日まで東京・渋谷のシアターコクーン。(電)03・5423・5906。

    2016年04月05日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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