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    インタビュー

    解散から37年、伝説のグループ「日暮し」が新譜制作

    • 新たな活動を開始した日暮しの元メンバー。(左から)中村さん、阿部さん、武田さん
      新たな活動を開始した日暮しの元メンバー。(左から)中村さん、阿部さん、武田さん

     「い・に・し・え」などのヒット曲で知られ、1979年に解散した伝説のフォークグループ「日暮し」が、37年の時を経て、アルバム復刻や新譜制作など新たな動きを見せている。傑作とされた後期のアルバム2枚を、CDとレコードで最近相次いで復刻したのに続き、今年10月頃には、お蔵入り音源から未発表曲などを厳選し、新たなアルバムとして発表する予定だ。解散した国内のグループが、新譜を出すのは珍しい。かつてのメンバーがこのほど、解散後初めて3人そろって取材に応じ、復刻への思いや今後の活動について語った。(メディア局専門委員・松井正)

    静かに解散した伝説のグループ

     「『いい作品なのになぜCDがないの?』というファンの不満に、ようやく答えられました」――。東京・国立市で自ら経営する喫茶店「Cafe Sings(カフェ・シングス)」で、日暮し元リーダーの武田清一さん(66)はホッとした表情を見せた。今回復刻されたのは、後期の傑作「ありふれた出来事」と「記憶の果実」の2枚。ボーカルの阿部(旧姓・榊原)尚美さん(62)、ギターの中村幸雄さん(66)も、音質を重視して180グラムの重量盤で復刻されたレコードを手に取り、「重い! うれしいですね」と目を細める。

    • 復刻されたアルバム「ありふれた出来事」(1977年、上)と「記憶の果実」(1979年)
      復刻されたアルバム「ありふれた出来事」(1977年、上)と「記憶の果実」(1979年)

     日暮しは1972年の結成。武田さんが、中学の後輩の故・忌野清志郎さんらと組んだRCサクセションの前身バンドを離脱した後、作ったグループだ。美しく澄んだ阿部さんのボーカルと、中村さんのギターを得て、日本的な情緒を美しいメロディーで歌い上げた。7年間でアルバム5枚、シングル9枚を発表。77年の曲「い・に・し・え」は、テレビドラマ「恋歌」(日本テレビ系)の劇中歌となり、20万枚を売るヒットとなったが、日本でニューミュージックが花開く80年代を前に、静かに解散した。

     その後、武田さんはジャズボーカル評論家として米国と日本を行き来し、8年前からは喫茶店を経営。中村さんは録音エンジニアを経て、現在はさいたま市で家業の総菜屋を切り盛りする。歌の世界に1人残った阿部さんは、杉村尚美の名前で歌手に転身。81年にはテレビドラマ「炎の犬」(日本テレビ系)主題歌の「サンセット・メモリー」を大ヒットさせた。その後は結婚を機に引退し、現在は主婦業の傍ら、地域でコーラス活動を続けている。

    復刻盤から新たな作品へ

    • 復刻されたレコードを手にするメンバー(左から)武田さん、阿部さん、中村さん
      復刻されたレコードを手にするメンバー(左から)武田さん、阿部さん、中村さん

     解散後30年以上、自作を聴かずジャズの世界にのめりこんでいた武田さんだが、店に当時のファンが時折訪れ、CD未発売だった後期の傑作アルバム2枚の復刻をよく求められた。「実は7年前にレコード会社が出したベスト盤CDの出来が不本意で、自分でも納得がいかず、復刻への思いが高まってきた」という。

     武田さんは、井上陽水らのアルバムを手がけ、日暮しの作品にも参画したプロデューサー・星勝さんに思いを訴え、手探りで復刻を働きかけた。レコード会社との協議は難航したが、つてをたどった結果、ディスクユニオンの菊田有一専務が「アルバムとしての完成度が非常に高く、ぜひ復刻したい」と快諾。昨年12月にCDが、今年3月にはレコードでの復刻が実現した。

     新作への意欲も、この過程で火がついた。今回の復刻盤は、2枚同時購入すると、6曲の未発売音源が入った特典盤が付く。この中には、清志郎さんらとカセットテープに録音した「あの歌が想い出せない」など、40年以上前の貴重な録音も含まれる。これらの音源探しの過程で、世に出なかった多数の曲を聴き返すうちに、ぜひ作品化したいとの思いがわき起こってきた。元メンバーも賛同し、新作アルバムとして10月頃に発売される予定だ。

    • 日暮しでボーカルをつとめた頃の阿部さん(武田さん提供)
      日暮しでボーカルをつとめた頃の阿部さん(武田さん提供)

     星さんは、「日暮しの曲は武田さんの出身地・岩手に根ざした日本の原風景を表現する曲と、尚美さんの透明なボーカルが奇跡的に出会ったもの。全く古びていない点が素晴らしい」と高く評価。メンバーも「ぜひゆったりした時間の中で聴いてほしい」(阿部さん)、「今の日本になくなりつつあるものが聞こえるはず」(中村さん)と期待する。

     武田さんは4月9日、吉祥寺のライブハウス「メグ」で恒例のジャズレコード・コンサートを開くが、ここで阿部さんのボーカルによる日暮しの曲の披露と、元メンバーによるトークが行われる予定。武田さんは「僕らの再結成は今のところありませんが、ぜひ日暮しの世界を若い人にも知ってほしい」と、新たな情熱を注いでいる。

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    2016年04月08日 12時32分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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