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    テレビ

    企業PR?NHK朝ドラが女性実業家ばかりのワケ

    PRプロデューサー 殿村美樹
     特定の企業や製品の宣伝になりかねないと、会社名や商品名を放送するのを嫌うNHK。ところが、最近の朝の連続テレビ小説(朝ドラ)を見ていると、女性創業者をヒロインとする企業ものばかりだ。女性の活躍を後押ししようという姿勢は買うとして、公共放送としてのタブーを破ってしまっているのはなぜなのだろう? その真相について、「今年の漢字」「うどん県」などを手がけ、PR業界に詳しい殿村美樹氏が探る。

    伊代もクレパスもNGだった

    • 「とと姉ちゃん」は視聴率も好調だ(NHK提供)
      「とと姉ちゃん」は視聴率も好調だ(NHK提供)

     PRの仕事に携わって30年。「NHKで企業や商品のPRはできない」とずっと思っていました。

     公共放送という立場上、企業の宣伝につながる表現はNG。特定企業を紹介する場合でも「〇〇を製造しているメーカー」といった言い回しにとどめ、企業名や商品名は伏せられるのがセオリーだったからです。

     同世代の方だったらご存じかと思いますが、NHKの放送コードについては、一世を風靡(ふうび)した人気の歌ですらNGとなり話題になりました。「神田川」(1973年)の歌詞にある「♪24色のクレパス買って~」の「クレパス」が商品名のため、「クレヨン」に差し替えを求められたかぐや姫が紅白出場を辞退したとか。別の音楽番組でも、松本伊代のデビュー曲「センチメンタルジャーニー」(81年)で、「♪伊代はまだ16だから~」の節が個人宣伝につながるとして、「伊代は」を「私」に変更させられたのだとか。

     そんなNHKも最近、事情が変わってきました。NHKの看板であり国民的ドラマでもある朝ドラに特定企業の歴史がリアルに紹介されるようになったのです。

     始まりは2014年下半期の「マッサン」でした。

     ニッカウヰスキーの創業史が堂々と紹介されているのを見て私は衝撃を受けました。朝ドラのストーリーが特定企業の史実だなんて、以前は想像もできませんでした。

    PRの歴史を塗り替える大事件

     もちろん朝ドラのストーリーはあくまでフィクションで、企業の歴史というのはモチーフに過ぎないことはわかっています。

     しかし「マッサン」のストーリーがニッカウヰスキーの創業史であることは誰の目にも明らかでした。その証拠に「マッサン」の放送後、ニッカウヰスキーの創業者名を冠した商品「竹鶴」は前年比3倍以上も売れ、物語の舞台となった北海道の地名を配したブランド「余市」は2倍以上の売り上げを記録しました。

     さらに、ウイスキーなどの売り上げが伸びれば、「マッサン効果」と呼ばれ、社会現象として広く知られることになったのです。

     これだけの波及効果をもってして、果たして企業PRではないと、誰が言えるでしょうか。それどころか、最高のPRといっても過言ではないと思います。

     特定企業の歴史をモチーフにした朝ドラは、これにとどません。

     2015年下半期「あさが来た」のヒロインは大同生命(大阪市)の創業者。現在、好評放送中の「とと姉ちゃん」のヒロインは出版社「(くら)しの手帖社」(東京都新宿区)の創業者がモデルです。

     さらに、次回(16年下半期)「べっぴんさん」のヒロインは子供服メーカー「ファミリア」(神戸市)の創業者がモデルというではありませんか!

     これはPR業界の歴史を塗り替える大事件です。というより先に朝ドラの位置づけやNHKのスタンスが変わってしまったのかもしれません。

     そこで、なぜ朝ドラが企業ものばかりになったのか、深読みしてみました。

    2016年05月14日 08時15分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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