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    インタビュー

    ジブリ鈴木プロデューサーが最新映画にかけた魔法とは

    メディア局編集部 原田康久

     クエンティン・タランティーノやジェームズ・キャメロンといった映画監督たちに多大な影響を与えたことで世界的に著名な押井守監督。その最新実写映画『ガルム・ウォーズ』がカナダで撮影された。元は英語版の作品、これをどうやって日本語版にするか? その大役を担ったのが、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーだ。「映像もせりふの内容も一切変えずに、作品の印象を一変させてみたいと考えた」と狙いを語る。はたしてそんなことができるのか? 日本公開を前に、数々のジブリ作品でも魔法のような手法で観客を魅了し続けた鈴木氏のプロデュース術に迫った。

    ◇  ◇  ◇

    • 鈴木敏夫プロデューサー
      鈴木敏夫プロデューサー

     日本語版制作の依頼を受けた時、すでに映画は完成していた。

     出演者はハリウッドで活躍する俳優たち。壮大な世界観、画面の隅々にまでこだわった場面構成、見る者を深く考えさせるテーマなど、作風は押井作品そのもの。冗舌で時に難解なせりふも押井作品の特徴だが、そのことが日本公開へのハードルとなっていた。膨大なせりふをそのまま字幕にすればスクリーンの多くを埋めてしまうほどだからだ。

     押井監督とは30年来のつきあいがある鈴木氏だが、日本語版制作の依頼を当初は何度も断ったという。「最後は、制作した会社の社長に『押井さんと2人で会ってくれ』と言われてね。押井さんは、映画が完成して時間がたったので、もう自分ではできないという。敏ちゃんだったら、作品をゆだねたいと」

     物語の舞台ははるかな古代、戦いの星アンヌン。ここにはガルムと呼ばれるクローン戦士たちがいる。彼らはなぜこの星にいるのか。彼らを作ったとされる創造主はなぜ、この星を去ったのか――。

     自分が何のために生まれてきたのかも分からない戦士たちは、独特のフォルムを持つ戦艦や艦載機を駆使して、いつ終わるともしれない戦いを繰り広げていた。

     作品のすばらしさは鈴木氏が一番理解していたはずだ。だが、それが観客に伝わるかどうかは別問題である。こんな時、優れたプロデューサーは時に映画そのものに大胆な解釈を加えるなどして、観客にその魅力を伝える。『もののけ姫』も『千と千尋の神隠し』も、そうやって世に出た。

    • 『ガルム・ウォーズ』2016年5月20日(金)全国ロードショー(c)I.G Films◆2016/日本・カナダ合作/シネマスコープ/ドルビー・デジタル・サラウンド 上映時間93分
      『ガルム・ウォーズ』2016年5月20日(金)全国ロードショー(c)I.G Films◆2016/日本・カナダ合作/シネマスコープ/ドルビー・デジタル・サラウンド 上映時間93分

     海外での撮影というさまざまな制約の中で、監督があきらめざるを得なかった場面もある。当初は2時間を超えるような作品を監督が構想していたのも、鈴木氏は知っていた。難解なせりふを日本語にしてうまく伝わるかという問題と、制約の中で監督が伝えられなかった思い。二つの問題を前にして、鈴木氏は驚くべき提案をしている。カットした場面を絵コンテで再構成するというものだ。

     しかし、これには当の押井監督が賛成しなかった。「映画作りは妥協の連続。本当はこんなふうに作りたかったなんて、今さら言いたくない」

     映画の内容には手をつけられない。もはや、選択肢のない中で、鈴木氏は闘わなければならなかった。

     

    2016年05月13日 10時23分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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