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    インタビュー

    「金メダル男」とウッチャンの「やさしさ」

    文化部 森重達裕
    • 内村光良さん
      内村光良さん

     4月4日から6月20日まで読売新聞夕刊に連載された小説『金メダル男』が書籍化され、23日、中公文庫で発売される。1964年の東京五輪開催年に生まれた、「一番が好き」な男の物語。アポロ11号の月面着陸やウォーターゲート事件といったニュースや流行した歌謡曲、テレビ番組などもストーリーに盛り込まれ、当時を知る人には懐かしい内容かも。著者でタレントの内村光良さんに話を聞いた。

     「出川(哲朗)さんを小説でちょっと出してくれたのがうれしかったです。長年のお友だちですからね。映画にも出しているのですか?」

     「いや、出してないです。オファーしませんでした」

     「三村というキャラも小説に登場しますが、これはやはり、さまぁ~ずの三村(マサカズ)さんへのあて書き?」

     「いや、全くと言っていいほど関係ないですね。名前で何か良いのがないかな、と思ったら、じゃあ三村でいいか、と」

     「主人公、秋田泉一のキャラは『LIFE!』(NHKのコント番組)のコントでの『無敵の男』とか『スポーツ番長』とか『コンテンポラリーダンス』の要素が入ってますよね?」

     「それは全く考えていなかった。なるほど、言われて今、初めて気付きました」

    「みんな自由にアドリブやっていいよ」

     先日、小説『金メダル男』について、書評面向けに著者の内村光良さんをインタビューした時の一コマだ。余りにもファン過ぎる余り、質問がことごとく上滑りしてしまい、今、録音を聞き直しながら赤面している。

     それでも、テレビで見たままの爽やかな笑顔のウッチャンは、本筋からズレ続けていく質問の数々にも最後まで丁寧に答えてくれた。

     数あるお笑いタレントの中でも、「やさしい人」というイメージでは真っ先に名前が挙がる人だろう。本人は「みんなからよく言われるんですけど、自分では普通だと思っています」と謙遜(けんそん)するが、「クイズやさしいね」(フジテレビ系)というバラエティー番組で司会に起用されていることからみても、そのパブリックイメージは世間に浸透している。

     見た目の柔和な雰囲気はもちろんだが、特に後輩、若手、共演相手に対する細やかな気遣いが素晴らしいのだ。今年3月、「LIFE!」で共演しているココリコ・田中直樹さんにインタビューした時、彼は内村さんの印象をこう語っていた。

     「何でも受け止めてくれる方です。『こうしてくれ、ああしてくれ』と言われたことはなくて、『みんな自由にアドリブやっていいよ』と。それらを全部受け止めたうえで、現場の空気を見ながら瞬時にキャラを変えられるんです。現場全体が、内村さんのやさしさに包まれている」

     ほかにも、さまぁ~ず、くりぃむしちゅーのコンビ名の名付け親だったり、仕事がない時代の有吉弘行さんを自分の番組で起用し続けて再ブレイクのきっかけを作ったりと、今を時めく人気者たちも内村さんに恩義を感じ、尊敬しているという。

    一人舞台用の戯曲を映画化、そして小説に

     4月4日から6月20日まで読売新聞夕刊に連載され、同23日、アッという間に中公文庫で発売されることになった小説『金メダル男』は、ユニークな生まれ方をした作品だ。

     元々は、2011年に上演された一人舞台用の戯曲として内村さんが書き下ろしたものだった。その時のタイトルは「東京オリンピック生まれの男」。後に「金メダル男」と改題して内村さん監督・主演による映画化が決定し(10月22日公開予定)、戯曲を映画脚本に書き直すことになった。

     そして、映画の撮影準備に入った段階で、とある新聞社から「小説にもしてください」と奇妙なオファーがあり、三たび、書き始めたという。結果的には、ほとんど同じ内容の物語を舞台、映画、小説に仕立てて発表するという「ワンソース、マルチユース」のプロジェクトになった。

     「依頼されなければ、やってないですね。映画のロケハンと小説を同時並行で進めていたので、かなり大変な作業でした。でも、小説を書くうちに映画で足りないものに気付いて、補えたりもした。相乗効果がありました」と振り返る。

     主人公は、著者と同じ1964年生まれの男、秋田泉一。小学3年の運動会の徒競走で1等賞を取ったことをきっかけに、どんなことでも1番=金メダルを目指す男になっていく。水泳、剣道、絵画と順調にトップを取り続けていくが、「神童」と呼ばれたのは小学生まで。中学以降、次々に挫折を味わっていく。それでもトップを目指すことをやめない泉一は、上京し、大人になっても、ひたすら迷走を続ける。だが、ある出来事をきっかけに「ナンバーワン」ではなく「オンリーワン」の人物として世間の脚光を浴びることになる。

    2016年06月22日 10時01分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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