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    映画

    ついに『ジョジョ』も…漫画実写化“乱造”のワケ

    映画批評家 前田有一
     国内外で絶大な人気を誇る漫画『ジョジョの奇妙な冒険』が、三池崇史監督によって実写映画化され、来年夏に公開されることになった。ところが、この報が伝わるや、『ジョジョ』の熱烈なファンから「原作の世界観を描き切れるわけがない」といった激しいバッシングが沸き起こった。今回に限らず、人気漫画の実写化に当たっては、映画会社などが批判にさらされることが珍しくない。にもかかわらず、実写映画はなぜ作られ続けるのか。映画批評家の前田有一氏が論じる。

    “最後の聖域”来夏映画に

    • 『ジョジョの奇妙な冒険』実写映画化の記者会見で登壇した三池崇史監督(右から2番目)とキャストら(9月28日、都内で)
      『ジョジョの奇妙な冒険』実写映画化の記者会見で登壇した三池崇史監督(右から2番目)とキャストら(9月28日、都内で)

     9月某日、東宝とワーナーブラザースが共同記者会見を開くとの知らせが、私たち映画関係者に届いた。日本の映画マーケットシェアトップの東宝と、洋画メジャーながらローカル展開を重視し、『デスノート』シリーズ(2006年、16年)など邦画の成功例も多いワーナーが手を組むという。それだけでも業界的には大ニュースだったのだが、会見の内容が荒木飛呂彦氏の人気漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の第4部を共同製作で実写映画化するという、これまたビッグなネタだったために、いまや日本中をこの話題が駆け巡っている。

     ありふれた実写映画化企画と言えど、『ジョジョ』となれば話は別だ。1987年に週刊少年ジャンプで連載が始まり、現在も青年誌「ウルトラジャンプ」で連載中の『ジョジョ』は、ジャンプ黄金期の連載漫画の中でも1、2を争う人気作。これまでも絶えず実写化がうわさされながら実現しなかった“最後の聖域”ともいうべきビッグネーム。ファンの間でも賛否両論、激しい反応が引き起こされた。

     実写化を歓迎する声を打ち消すほどに不安の声が大きい気がするのは、これまで日本映画界が手掛けてきた「漫画の実写化」がことごとく失敗してきたからだ。特にここ数年は、『進撃の巨人』(15年)、『テラフォーマーズ』(16年)など、鳴り物入りの話題作が軒並み不評であった。もはや「漫画の実写化」というニュースそのものがネット上で炎上必至な状況といってもよい。

    高い話題性、宣伝費も節約

     それなのに、なぜ映画会社は漫画の実写映画を作り続けるのだろうか。

     その理由はいくつもあるが、天下の東宝とワーナーが共同会見をするほど、漫画の実写化には話題性があり、世間の注目を集めることができる点がまず挙げられる。人気漫画ともなれば累計発行部数が1000万冊単位であることも珍しくない。それだけのコア層の口コミと、収益への貢献が期待できる。

     特に大きいのは、宣伝費を節約しつつ、効果的に宣伝できるという側面だ。宣伝費を負担するのが製作委員会なのか配給会社なのかは作品によるが、どちらにせよ人気の漫画なら、放っておいてもマスコミとファンが勝手に実写化のことを宣伝してくれるからだ。

     こうした宣伝重視の背景には、どんなに良い映画を作っても人の目に触れなければ、あっという間に忘れ去られてしまうという映画界の厳しい状況がある。日本における映画の公開本数は2010年が716本(うち邦画が408本)だったのに対し、15年は1136本(同581本)。シネコン(シネマ・コンプレックス、複合型映画館)の普及とともに公開本数が激増している一方で、映画館の入場者数はそれほど増えておらず、1作品当たりのパイは小さくなるばかりだ。そのため、人々への周知、すなわち宣伝の重要性が高まっており、その点で知名度の高い原作を持つ作品は優位に立つ。

    2016年10月18日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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