文字サイズ
    音楽

    本気のミックが熱い!! ストーンズ入魂のブルース・アルバム

    • 12月2日発売の「ブルー&ロンサム」(1CD:UICY-15588 Deluxe Edition:UICY-78026)
      12月2日発売の「ブルー&ロンサム」(1CD:UICY-15588 Deluxe Edition:UICY-78026)

     ブライアン・ジョーンズが珍しく、はしゃいでいるように見えた。いや、興奮していたと言っていいだろう。

     1965年5月、アメリカABCの「シンディグ」というテレビ番組にザ・ローリング・ストーンズが出演した。司会の男とのやりとりの後、ブライアンが「そんなことより、はやくハウリン・ウルフを聴こうよ」。いかにも待ちきれないという表情で、子供のようにせかす。そして、彼らのあこがれの的にして、シカゴ・ブルースの巨匠の一人、ハウリン・ウルフが登場するのである。

     ローリング・ストーンズが12月2日、ニューアルバム「ブルー&ロンサム」をリリースする。スタジオアルバムとしては11年ぶり。しかも、レコードデビューから53年の歴史で初めて、全12曲ブルースのカバーだけで構成されている。「構想50年、レコーディング期間3日!」というコピーは、別に冗談を言って笑ってもらおうという魂胆ではない。気合一発、オーバー・ダブなしの録音なのである。

     若き日のストーンズは、ブルース、リズム&ブルースを熱心に演奏するバンドであった。ロックンロールを演奏する場合も、一番好きなのはチャック・ベリー、という具合で、黒人の音楽に深く傾倒し、黒人そっくりの演奏を体現するバンドだった。

     かつて、ミック・ジャガーは、「プレスリーの場合もそうだが、どうも白人がやるロックは、アクセントが違うんだな」と発言したことがある。自分たち以外の白人のバンドにはどこか違和感をぬぐいきれない、という意味だろう。レコードデビュー後も、しばらくの間は、ミックもキース・リチャーズ(当時はリチャード)も、オリジナル曲を作ることなどは、思いもよらなかったのである。

     オリジナル曲を手がけるようになり、やがて「サティスファクション」その他のオリジナル曲を大ヒットさせていくわけだが、彼らのオリジナル曲は、ブルースマンやリズム&ブルースなどの数多くの黒人アーティストが好んでカバーしている。この点が、ほかのロックバンドにあまりない大きな特色だ。それだけ、どこか黒人アーティストにとって、感覚的にしっくりくるものがあるのだろう。

    ブルースバンド・ストーンズの本領発揮

     3曲目に収録されているアルバム・タイトル曲のマイナー・ブルース、「ブルー・アンド・ロンサム」をはじめ、全12曲中の4曲をブルース・ハープ(ハーモニカのこと)の大家、リトル・ウォルター(1930―68年)の作品で占める。この選曲を見るだけでも、今回のアルバムには、ブルース・ハープの名手でもあるミック・ジャガーの意向がいつも以上に強く反映されていると見て間違いなかろう。特に5曲目の「アイ・ガッタ・ゴー」のミックのハープが、リトル・ウォルターを髣髴(ほうふつ)させ、秀逸である。

     ミックのボーカルは、というと4曲目、マジック・サムの「オール・オブ・ユア・ラブ」の高音を長く伸ばす歌い方が、マジック・サムそっくりで驚く。12曲目、オーティス・ラッシュの「アイ・キャント・クィット・ユー・ベイビー」の歌いまわしのうまさにも舌を巻く。

     演奏全般では、2曲目、ハウリン・ウルフの「コミット・ア・クライム」のリズムの粘り、7曲目のエディ・テイラーの「ライド・エム・オン・ダウン」のノリが最高だ。

     録音当時、なんと偶然隣のスタジオにいたというエリック・クラプトンも2曲参加している。

    ストーンズが義務を果たした!

    • ミック・ジャガー(左)とキース・リチャーズ
      ミック・ジャガー(左)とキース・リチャーズ

     形式としてのブルースを演奏することは、だれにでも、とても容易(たやす)い。だが、それがブルースらしく聞えるように演奏するのは、ブルースのハートを持っていないとできないので、簡単でない。

     今回のアルバム、「とりあえずブルースでもやっておこうか」などという生易しいものではない。聴いていて、おそろしいまでの(特にミックの)気迫がひしひしと伝わってくる。

     ブルース・バンドとしてスタートし、ロックの超大物バンドとなった彼らが、このアルバムで21世紀の世界の音楽ファンにブルースを伝える、という義務をついに果たしたのだ。 (編集部・浅見 恭弘)

     

    2016年11月30日 16時26分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR情報
    PR
    今週のPICK UP
    PR
    今週のPICK UP
    ブログ
    アーカイブ