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    音楽

    唱歌「お正月」と「一月一日」の意外な話

     去年のクリスマス前、歌手のカイリー・ミノーグさんのフェイスブックを読んでいたら、

     Only 4 sleeps left to Christmas!!

     とあった。「もう4回寝るとクリスマス」。つまり、「もういくつ寝ると」と同じ発想だ。

     唱歌「お正月」は、東くめ作詞、滝廉太郎作曲。最初に「幼稚園唱歌」(1901年)の中の歌として出版されただけに、わかりやすく親しみやすく覚えやすい。ワンコーラスも短いので、幼児向けのたわいのない作品と誤解されがちなのではないか。

     しかし、「これは、まさに滝廉太郎の作曲の天才ぶりが手に取るように分かる作品」と教えられ、驚いたことがある。

     教えてくださったのは大場善一先生(故人)。全日本リード合奏連盟という団体の発足時から亡くなるまで指導者を務められた。「リード合奏」は、リードという金属板を振るわせて音を出す楽器、例えば鍵盤ハーモニカなどによる合奏で、連盟はその全国組織。先生にテープを聞かせていただいたが、幼稚園児などでも見事な演奏を聞かせるので感心したものだ。

     では、「お正月」の曲のどこがすごいのか。緩・急・緩の三つの部分から構成されるこの曲、最初の「緩」は、お正月まであとどのくらいかなー、と指折り数える幼子ののんびりした姿が思い浮かぶ。一転、お正月になったら、あれをやって遊ぼう、これをやって遊ぼうという、ワクワクしてはしゃぐ姿をテンポアップして描く。しめくくりは、やはり年末、お正月がくるのを楽しみに待つ、のんびりしたテンポにもどる。ここまで短い中に、巧みな作曲技法を盛り込んであるのだ。

    ♪  ♪  ♪

     大場先生のアドバイスは、とても分かりやすく、時にユーモラスでもあった。

    • 新年を前に出雲大社の社殿で営まれた「御煤払(おすすはらい)」(12月20日撮影)
      新年を前に出雲大社の社殿で営まれた「御煤払(おすすはらい)」(12月20日撮影)

     お正月になるとよく歌われる歌に「一月(いちげつ)一日(いちじつ)」がある。「いちげついちじつ」と言われて、ぴんとこなくても、「年の始めの (ためし)とて」で始まるあれ、といえばわかる人が多いだろう。

     作詞は、千家(せんげ)尊福(たかとみ)(1845~1918年)。名前からわかる通り、出雲大社宮司で第80代出雲国造、神道大社教管長(初代)や元老院議官、貴族院議員、埼玉と静岡の県知事、東京府知事などを歴任した人だ。(作曲は(うえ)眞行(さねみち)

      年の始めの 例とて
      終りなき世の めでたさを
     「お正月」の歌と違って、さすがに作った人が作った人だけあって、ややとっつきにくいが、大場先生に言わせると、「ああ、あれね。あれは祝詞(のりと)」。

     確かに、神主さんのまねをして祝詞風に声を出してみると、ぴったりはまって、なるほどと思うのである。みなさんもお試しあれ。(メディア局編集部・浅見 恭弘)

    2016年12月27日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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