量産されるクイズ番組、その理由とは
小さいころ、家族でクイズ番組を楽しんだという人も多いはず。最近、またクイズ番組が増えていることをご存じだろうか。春の番組改編で目立ったのは、ゴールデンタイムにおけるクイズ番組の「復権」。この背景には何があるのか。テレビ番組の解説を手がけるコラムニストの木村隆志さんに寄稿してもらった。
クイズ番組、ゴールデンタイムに11本
4月から「最上級のひらめき人間を目指せ!クイズ!金の正解!銀の正解!」(フジテレビ系、土曜19時~)、「潜在能力テスト」(フジテレビ系、火曜19時57分~)、「東大王」(TBS系、日曜19時~)の3番組がスタートし、さらに深夜帯放送の「中居正広のミになる図書館」(テレビ朝日系、月曜20時~)もゴールデンタイムに進出しました。
4番組の共通点はクイズ。これによって、ゴールデンタイムに放送されているクイズ番組は計11本になりました。つまり、ほぼ毎日クイズ番組がどこかの局で放送されていることになります。
これはブームと呼ぶべき現象なのでしょうか? 新旧さまざまなクイズ番組に触れながら検証していきます。
ホームランを捨ててヒット狙い
いきなり結論を書いてしまうと、「クイズ番組がブームになっている」という事実はありません。視聴率上位にランク入りする番組はないし、サラリーマンや子供たちの間で、あるクイズがよく話題に上っているという話もないのです。
では、なぜこれほど量産されるのか? その理由は、19~22時のメイン視聴者であるファミリー層に見てもらいやすいからです。ネットや録画機器の発達で、テレビ番組の視聴率低下が目立つ中、民放各局は近年、この時間帯の番組編成に頭を痛めてきました。
安定した視聴率を獲得するために、こぞって“生活情報(雑学)”や“世界の中の日本”をテーマにした番組を制作したものの、大半が早期打ち切りに……。そんな変遷を経てたどり着いたのが「(小さな子供がいる家庭で)家族そろって見てもらえる」クイズ番組だったのです。
テレビ局にとっては、「セットがシンプルで、ロケも簡単、制作費を抑えられる」「年齢やキャラクターの異なる有名人を集めて、楽しい雰囲気を作り出せる」のも魅力です。知人のテレビマンは、「クイズ番組はファミリー層以外ほとんど期待できないから大ヒットはしないけど、大コケの心配もないし、クレームも少なくていい」と語っていました。
テレビ業界におけるクイズ番組を野球にたとえると、「ホームランか三振か」の一発狙いではなく、「コンパクトなスイングでヒットを狙う」ようなスタンスです。一方、視聴者にしても、「爆笑はしないけど、それなりに楽しめる」「絶対見なければいけないほどではないけど、時間があれば見る」という感覚ではないでしょうか。
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