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    カンヌ国際映画祭2017

    40代女性の心情伝わる…長編版「オー・ルーシー!」

     カンヌ国際映画祭には、コンペティション部門など公式部門のほかにも、監督週間や批評家週間という独立して開催されるイベントがあります。新人監督を発掘する批評家週間には今年、米国在住の平柳敦子監督の「オー・ルーシー!」が出品されました。

    • 平柳敦子監督「オー・ルーシー!」
      平柳敦子監督「オー・ルーシー!」

     「オー・ルーシー!」は、3年前のシネフォンダシオン部門(学生映画部門)で2席に入った短編を長編化した作品です。日米合作で、主演は寺島しのぶさん。43歳の独身女性が巻き起こす騒動を描くコメディーです。ひょんなことから英会話学校に通うことになった独身女性が、講師の米国人に恋心を抱き、アメリカまで追いかけていくというストーリー。英語が下手な日本人の描写が秀逸で、会場のあちこちから笑いが起きていました。日本人としてはうれしいような、恥ずかしいような気持ちでしたが……。ただ笑えるだけではなく、人生に行き詰まり、思い余って冒険してしまう40代の女性の心情が痛いほど伝わってきます。なんらかの受賞を期待してしまいました。

    寺島しのぶさん、滑らかなフランス語であいさつ

    • 「オー・ルーシー!」の舞台あいさつに立った(左から)平柳敦子監督、寺島しのぶさん、ジョシュ・ハートネットさん(撮影・田中誠)
      「オー・ルーシー!」の舞台あいさつに立った(左から)平柳敦子監督、寺島しのぶさん、ジョシュ・ハートネットさん(撮影・田中誠)

     上映前の舞台あいさつでは、夫がフランス人の寺島さんが、「観客のみなさんは彼女(平柳監督)の名前を覚えていた方がいいですよ。彼女にはすばらしい未来があると確信しています」と滑らかなフランス語であいさつ。2010年のベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を受賞している寺島さんを、観客は大きな拍手で迎えていました。映画には、寺島さんのほか、役所広司さん、南果歩さん、忽那汐里さん、さらに米国の人気俳優ジョシュ・ハートネットさんらが出演。今年日本公開もされるので、注目してください。

    デジタル復元版「楢山節考」、「愛のコリーダ」に若い観客も

     また、クラシック部門では、今年で70回目となるカンヌの歴史を振り返る名作が連日上映されています。日本の作品では、今村昌平監督の「楢山節考」、大島渚監督の「愛のコリーダ」がデジタル復元版で上映されました。いずれも深夜の上映でしたが、会場には大勢の観客が詰めかけ、若い観客も目立ちました。

     姥捨(うばすて)伝説を題材にした「楢山節考」にみなぎる生命力は、今見ても圧倒的で、今年のコンペ部門の作品には、まだ「楢山--」を上回る作品がないな、と思うほどでした。一方、戦前の猟奇的事件「阿部定事件」を題材にした「愛のコリーダ」は、日本では見ることができない無修正版でした。露骨な性描写については詳しくは書けませんが、よくこんな映画を作ったものだと思うほどの衝撃でした。世界中のメディアが集まるカンヌでこうして光を当てることで、名作はいつまでも輝き続けるのだと思いました。

    • 「許されざる者」の上映に出席したクリント・イーストウッド監督(中央)(撮影・田中誠)
      「許されざる者」の上映に出席したクリント・イーストウッド監督(中央)(撮影・田中誠)

     なお、米国の西部劇「許されざる者」の上映には、クリント・イーストウッド監督が出席し、観客を熱狂させました。「生ける伝説」のカンヌ降臨に、ミーハーではないはずの記者も、思わず写真を撮ってしまいました。(文化部 田中誠)

    2017年05月23日 14時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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