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    カンヌ国際映画祭2017

    さすがカンヌ、駄作なし…コンペ部門の行方は

     カンヌ国際映画祭も残すところあとわずか。映画祭の主会場内にあるフィルム・マーケットで映画の売買を行っていた配給会社の方々が引き揚げ、カンヌは少し静かになっています。

     今回は、国際映画祭のコラムの恒例となっているコンペティション部門の受賞結果の予想をしようと思ったのですが……、難しいです。記者は25日現在、コンペ部門に出品されている19本の映画のうち15本を見ています。さすがカンヌ。駄作はないのですが、今のところ傑出した作品がありません。

    本命は「ラブレス」、社会性と娯楽性バランス良く

    • アンドレイ・ズビャギンツェフ監督の「ラブレス」
      アンドレイ・ズビャギンツェフ監督の「ラブレス」

     強いて挙げれば、ロシアのアンドレイ・ズビャギンツェフ監督の「ラブレス」が本命です。離婚寸前の裕福な夫婦の子供が行方不明になり、自分や愛人にしか関心のなかった夫婦が心に深い傷を負います。痛ましい物語ですが、感情に訴えるものがあります。社会性と娯楽性のバランスが最も良く、米国の映画専門誌「スクリーン」の星取表でも、頭一つ抜けています。

     現在のロシア社会を風刺するセルゲイ・ロズニツァ監督の「ジェントル・クリーチャー」も見応えがありました。刑務所に入れられた夫を探す女性の前に、官僚的な組織、警察を始めとする国家権力が立ちはだかります。人道支援組織、はては反社会勢力まで頼りますが、らちがあきません。国際社会にメッセージを送ろうとする国際映画祭が好む題材だと思います。

    Netflixの2本は万人受けする娯楽作

    • ポン・ジュノ監督の「オクジャ」
      ポン・ジュノ監督の「オクジャ」

     Netflix(ネットフリックス)のオリジナル映画2本は、徹底的な市場調査で知られる同社の作品らしく、万人受けしそうな娯楽作でした。韓国のポン・ジュノ監督の「オクジャ」は少女と豚に似た新種の動物の交流を描いた感動作、米国のノア・バームバック監督の「マイヤーウィッツ・ストーリーズ(ニュー・アンド・セレクテッド)」は、芸術家の父とその息子たちの心温まるドラマでした。

     クリント・イーストウッド主演の「白い肌の異常な夜」をリメイクした米国のソフィア・コッポラ監督の「ビガイルド」を始め、日本で全国公開されてもおかしくない”普通”に面白い映画と、2本のロシア映画のようなシリアスな題材を扱った秀作が混在しているのです。審査員の好みや発言力が大きく左右するような気がします。

    「ルドゥターブル」、あのゴダールを笑いの種に…

    • ミシェル・アザナヴィシウス監督の「ルドゥターブル」
      ミシェル・アザナヴィシウス監督の「ルドゥターブル」

     個人的な好みでは、かのジャン・リュック・ゴダール監督の元妻の自伝を基にした「ルドゥターブル」が最高でした。ミシェル・アザナヴィシウス監督は、母国の偉大な監督、しかも存命の監督を、ここまでからかって大丈夫なのか、と心配になるほど、笑いの種にしています。革命に傾倒したゴダールに、昔みたいな面白い映画を撮ってくれとファンが頼むシーン、ゴダールらが1968年のカンヌ国際映画祭を中止に追い込んだエピソードも盛り込まれていて、それをここカンヌで上映するのも粋だなと思います。

     スウェーデンのルーベン・オストルンド監督の「スクエア」も笑えました。現代美術館が舞台で、そこのキュレーターをしているイケメンのセレブが主人公なのですが、自己中心的で脇が甘く、その言動が数々の災いを招きます。気まずい空気の作り方が絶妙で、上映中笑いっぱなしでしたが、「うまさが鼻につく」という意見もありました。笑える映画がいいなと思うのは、きっと記者が疲れているからでしょう……。

     河瀬直美監督の「光」は観客の反応も良かったですし、これからファティ・アキン監督ら人気も実力もある監督の作品のプレス上映があります。どんな結果になるのか、ドキドキしながら28日の授賞式を待つことになりそうです。(文化部 田中誠)

    2017年05月26日 14時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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