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    読響

    世界的指揮者 シモーネ・ヤング…読響と初共演

    音色に始まり音色に終わる

    • 親日家。「どこの国でも最初に確認するのが、日本食レストラン。ひらがなを覚えたのでカタカナに挑戦」©Berthold Fabricius
      親日家。「どこの国でも最初に確認するのが、日本食レストラン。ひらがなを覚えたのでカタカナに挑戦」©Berthold Fabricius

     オーストラリア出身の世界的指揮者シモーネ・ヤングの経歴は、数多くの「女性初」の冠で彩られる。だが、「国籍や体形が音楽に無関係なようにその称号も無意味。でも、私の成功が勇気を与えられたならうれしい」という。読売日本交響楽団との6月の初共演では、その飾らない人柄と成熟した音楽作りが示されそうだ。

     東京芸術劇場(池袋)のメイン演目は、6月17、18日(午後2時)がブラームス「交響曲第2番」、24日(午後6時)がR・シュトラウス「アルプス交響曲」。「ドイツ・ロマン派は、私の大得意」と張り切る。

     楽曲の分析は機知に富む。「交響曲第2番」は「最も幸福な交響曲。切ない第2楽章は叙情的で力強い」と分析し、敬愛するブルックナーなどドイツ圏の交響曲にとって「ある種の出発点」と読み解く。第4楽章は、通常なら輝かしい雄大さを感じさせる「ニ長調」で書かれているが、「崖から落ちそうな危険の香り」という隠れた魅力を引き出す。

     一方、「アルプス交響曲」は最も好きな曲だという。楽章ごとに標題がつき、大自然に挑む登山者の一日を描いた大曲。「非常にエキサイティングで完全な曲。オーケストラの音色の全体感が重要で建築物を構築するような作業だ」と話す。

     ヤングの指揮は、繊細な音色を積み上げ、音の始めと終わりの抑揚感を大事にし、曲の全体構造を組み立てる。共演する楽団への確たる要求は常に一つ。「すべては音色に始まり音色に終わる。3次元的な音の重量感を聴衆に届け、曲の聴きどころを感じてもらうのが使命」と強調する。

     24歳でシドニーの歌劇場にデビュー。25歳でドイツに渡り、「初めてブルックナーを聴いた」と笑って振り返る。ダニエル・バレンボイムの助手で鍛えられ、ハンブルク国立歌劇場総裁(2005~15年)などを歴任。ワーグナーを得意とする歌劇場たたき上げの実力者だ。

     56歳の今まで、国際的女性指揮者の草分けとして苦労も重ねた。1993年、ウィーン国立歌劇場に初の女性指揮者として登壇。97年の舞台の時は7か月の次女がおなかの中にいた。「幼児期は寝られない日々だった」が、娘2人に受け継がれた遺伝子をうれしそうに話す。長女が大学で物理を専攻したいと先生に伝えた時、「学科で女性は君一人だぞ」と反対されたという。長女は言い放ったそうだ。「先生、私の母が何をやっているかご存じないようですね」

     男社会の音楽界につきまとう「ガラスの天井」を打ち破ってきた。だから女性へのエールに力を込める。「私は幸運で、周囲のサポートも欠かせないが、若い女性にはどのような分野でも成功できると信じてほしい」。(電)0570・00・4390。(岩城択)

    2017年06月09日 10時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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