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    読響

    ファビオ・ルイージ 読響と初共演

    8月 R・シュトラウス「英雄の生涯」など

     世界的指揮者のファビオ・ルイージが8月、読売日本交響楽団の演奏会に初登場し、得意のリヒャルト・シュトラウス作品などを披露する。緻密な構築力でならす知性派。豊潤な歌心を編み込む手腕が注目される。

    重厚な楽曲 全力で指揮

    • 「私は非常にプラス思考の人間で挫折は感じません。音楽は私を助けてくれ、幸福感や満足感、達成感をもたらしてくれる源です」=大石健登撮影
      「私は非常にプラス思考の人間で挫折は感じません。音楽は私を助けてくれ、幸福感や満足感、達成感をもたらしてくれる源です」=大石健登撮影

     初共演は難曲ぞろい。R・シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」「英雄の生涯」の間に、ハイドン「交響曲第82番〈熊〉」を挟む。「私の中核である後期ロマン派と、大好きなウィーン古典派から選べて幸せだ。重厚な楽曲は、私にとっても挑戦。全力を尽くす」。物腰からは、母国イタリアの陽気さより、ドイツ的な実直さを感じさせる。

     大編成の「英雄の生涯」は、作曲家の顕示欲にあふれており、自身を投影した英雄の登場から引退までを描く。ルイージが最初に指揮したR・シュトラウス作品だ。「色彩が大変豊かで華々しい部分に注目が集まるが、内省的、絶望的な瞬間もあり、特に英雄の『迷い』を最後まで感じる」と分析する。このため終結部は初稿版を用い、鼓動が消え入るかのようなバイオリンの弱奏で終える。よく知られた管打楽器の豪壮な終結を良しとしないのは、「静かに人生を振り返る老人の姿を描き出したいから。それが、R・シュトラウスが本来望んだことだとも思う」。

     メトロポリタン歌劇場の首席指揮者などを務めてきた名匠の音楽作りは、瞬発力に富みながらも官能的だ。好例が、フィルハーモニア・チューリッヒと2015年に録音したブルックナー「交響曲第8番」。堅ろうなようで瓦解の危うさが潜む大曲の細部に、まろやかな詩情が宿る。奔流する旋律やリズムに、神秘、舞踏、瞑想めいそう……の薫りが立ち上る。「ブルックナーは最も敬愛する作曲家で第8番はあらゆる交響曲の頂点。構築性以上に旋律的な細部をどう響かせるかに心を砕く。ブルックナー作品は、楽器の選び方などを見ても、必ず深い歌の世界がある」

     脂がのる58歳。世界のオーケストラから引く手あまただ。「大切なのは楽団と強い協力関係を築くこと。私は命令者ではなく、美しい音楽という共通目標に向かって一緒に歩む人間だ」

     世界の楽団の音が均質化し、個性喪失も指摘される。「対抗策は首席指揮者が響きやレパートリーに理念を持つこと。特定の様式を追求することで差別化は図れる」。ならば、自身もアジアの地で楽団を率い、理念を発揮する機会も来るだろうか。「大好きな日本での活動も長い。近い将来、そのような仕事も考えられる」とほほ笑んだ。

     8月24日午後7時・東京芸術劇場(池袋)、同25日午後3時・横浜みなとみらいホール。(電)0570・00・4390。(岩城択)

    2017年07月20日 10時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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