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    インタビュー

    6人組バンド「Suchmos」ボーカルのYONCEが語るバンドの原点(下)

    読売新聞文化部 鶴田裕介

    (上から続く)

    【歌詞】

    ――歌詞には聴く人の想像を膨らませる言葉遣いが多く、ファンの間では深読みする動きもあるそうです。哲学的な、思想的なことを言っているようにも聞こえますし、刹那的にその瞬間を切り取っているようにも聞こえます。歌詞づくりのスタンスは。

    YONCE まったく意識したことがないですね。その時、書いたヤツが思っていることを書くと。そいつの言葉で書くということだけなので。たとえばですが、『Pacific』(『THE BAY』収録)は「地元の海でのんびり楽しく過ごしているんだ」ということを歌っているし。何か憤ってる時とか「これはおかしいよ」っていうことに関して、その時の瞬発力を書いたりということもあるので。自分たちのライフスタイルから出てきたものですね、全ては。身の回りの現実からかけ離れたことって想像がつかないし。知ったような口利いたって意味ないので。

    ――『STAY TUNE』のサビの「ブランド着てるやつ もうGood night」という歌詞に対し、他のインタビューでメンバーが「内輪ノリみたいなものだよね」と答えているのを見ました。

    YONCE そうですね、身内スラング的な意味合いの言葉も歌詞に使っていたりするんで、本当に不親切なんですよ。ただ、果たして親切だといいのか、という話なんですよね。親切な歌詞って全てを説明しているということだと思うんですよ。説明できることは活字で読むよ、本とかにすればいいじゃん、立派な文章を。音楽の衝動にあわせて言葉やメロディーが出てくるんだから、説明がつかないことを少しでも伝えよう、という気持ちが歌詞になるのだから、それを全て説明したり、全ての人に同一の解釈ができるような書き方をしちゃったら、それは意味がなくないか、と俺は思うので。

    ――ファンの皆さんが真剣に意味を考えるのも自由?

    YONCE そうなんですよ。それは俺は素晴らしいところだと思っているので。音楽の。

    ――正解はこれだ!と提示することもなさそうですね。

    YONCE それをやっちゃったら裏切り者ですね。音楽への。

    ――作り手なりの正解ももちろんあるんでしょうけれど、聴き手にとってはそうじゃないかもしれない。「ご自由に」というのがスタンスなんですね。

    YONCE そうですね。聴いた人の物差しで測るべきだし、聴いた人の実際の人生、暮らしに照らし合わせて聴くべきだし。それを高圧的に押しつけたら、俺たちが嫌いなものと同じ事をやっていることになってしまう。

    ――英語と日本が意識的に、あるいは無意識的に交じっている感じがします。言語の使い分けはどう意識していますか。

    YONCE あんまり意識している部分はないですね。カッケー、みたいな意味合いでしかない。後は、メロディーとのハマりというのはもちろんあるんですけれども。メロディーを立たせたい、という時に英語の方が響きがいいとか、日本語だとちょっとリズムが悪くなってしまう、そのくらいの理由ですね。

    ――英語があまりに自然。ネイティブなのですか。

    YONCE いや、まったく。バッチバチの日本人です。英語は小さい時、小学生ぐらいの時に英会話塾に通っていて、その時にスピーキングだけひたすら反復練習していました。その貯金が生きているという感じですかね。

    【シティ・ポップとの関連】

    ――いわゆるシティ・ポップブームの筆頭と言われます。ご自身たちはどう捉えていますか。

    YONCE むしろシティ・ポップって何なんだろうって思いながら。すごいですよね。気付いたらそういうふうに呼ばれているから。あまり意識したことはないんですけれど。

    ――いわゆるシティ・ポップ系、あるいは渋谷系の音楽が「サチモデイ」に出て来たことはありますか。

    YONCE 全くないですね、実は。だから、自分たちの音楽的な系統の中にはなくて。ただ、過去にシティ・ポップをやっていた人たちと、音楽的なルーツは近いモノがあるのかもしれない。好んで聴いていたルーツミュージックが。ただ、それを新たなシティ・ポップ、みたいに言うのはちゃんちゃらおかしいですよね。

    ――シティ・ポップというと定義がいろいろありますが、たとえば大滝詠一さんはアメリカン・ポップスにものすごく精通していて、『A LONG VACATION』はその集大成のような作品でした。渋谷系も渋谷に集積した世界中の音楽をベースに生まれました。「尊敬する過去の音楽の集大成」という意味ではシティ・ポップや渋谷系とSuchmosの音楽は似ている気もします。

    YONCE そうですね。いわゆるブルースとか、ゴスペルとか、もうちょっと近いところでいうと、チャック・ベリーとかエルビス・プレスリーとか、ロックンロールの一番最初の方とかが根っこだとしたら、Suchmosは今ある全ての音楽の一番最新の枝葉でいたい。根から生えてきていろんな幹があって、枝があって葉があって。そこからまたさらに枝が伸びて葉が増えていって、というところの最新でいなくてはならないと思うんですよ。いま2017年の音楽だし。そうじゃないのもいるのは、おかしい。俺たちはちゃんとファミリーツリーの中の延長線上に自分たちの音楽があるという意識をすごく大事に思っているので。その中で比較されるものがあるのは当たり前っちゃあ当たり前だと思う。渋谷系とかシティ・ポップの再来、と言われるのであれば、ビートルズや、ニルヴァーナと比較されなきゃおかしいし、というのが俺の言い分です。忌野清志郎と比較されなきゃおかしいとも思うし(笑)。

    ――ライブ会場を見ると、若い人もいますし、年齢層が高めの人もいます。年齢層が広いのは、そうした音楽の歴史を「踏まえているから」なんだろうなと思います。

    YONCE そうだと思いますね。ほんとに。

    ――それって音楽ですよね。

    YONCE そうですね。音楽はやっぱり、老若男女がどういう切り口でどう楽しんでもいいものだと思っています。会場に一定の層しかいないのはおかしいんですよ。それはまた別の人たちの役割だと思うんで。一定の層をひたすら熱狂させるのは大事なことだと思うのであってもいいと思いますが、それは俺たちの役目、俺たちというかバンドマンの役目じゃないと思う。バンドマンはそれらのトレンドの一番最新の状態だと思う。その後にポップスとかが付いてくる、ということだと思っています。

    【新作と新レーベルについて】

    ――新レーベル「F.C.L.S」を設立し、7月5日に2曲収録のCD『FIRST CHOICE LAST STANCE』を発売しました。『WIPER』はSuchmosというバンドの魅力が詰まったロックナンバーで、名刺代わりのように聞こえました。1曲目にこの曲を打ち出したのは?

    YONCE そうですね、セッションから生まれたナンバーなんですが、できあがってパッケージングされたものを聴いてみると、自分たちがこれまでに手がけてきたナンバーのいろんな部分をブラッシュアップして混ぜ込んだ、合体させたような内容になっているなと思っていて。おれたちはそういう曲が多いんですよ。過去の曲を振り返っても、それまでの総決算的なナンバーが定期的に生まれてきていて。『WIPER』というのは今まで活動してきた曲のフレーバーがいい感じのあんばいで混ぜ合わさった曲だなと思うんですけれども。

    ――そういう意味でも、新レーベル1曲目にふさわしいと。

    YONCE そうですね、はい。

    ――『OVERSTAND』はYONCEさんが作詞をされた。7月2日、日比谷野外音楽堂のライブが初披露だったのですか。

    YONCE 6月末に1回、神戸で披露しているんですけれど。それまでは一回もライブでやったことがなかったので。

    ――野音では最後に演奏しました。アンコール2曲目は盛り上がる曲を演奏することが多いですが、最後にこの静かな曲をやったのはなぜでしょうか。

    YONCE これは僕がここ1年くらいで、いろんな人と出会って、いろんな考え方に触れて。すごいカルチャーショックの多い時期だったというか、ちょっと人生設計を改めようと思わされたりしてというか、音楽への携わり方っていうのも、もっとちゃんと考えようと思わせてくれた1年間だった。そうですね。決意を新たに書いたナンバー、書いた歌詞というところが強くて。

    ――まさにそういう言葉がちりばめられている曲ですね。そもそもOVERSTANDとはどういう意味で使っていますか。

    YONCE いろいろ意味があるんですが、端的にいうとUNDERSTAND(理解する)をより強い言葉というか。「より深く理解する」という意味が、僕の中では強くて。何て言うんですかね。こうやって握手するか、ハグとか、イエーみたいな感じで、仲良くなれた、というのが俺は「OVERSTAND」になれた瞬間だと思っていて。共感の一番大きいものというか。

    ――ライブであの位置に(この曲を)持っていったのは、観客にそうしたメッセージを伝えたかった?

    YONCE 期せずしてそうなりました。本当は、そうですよね、やっぱり普通、多分あまり披露していない曲はライブの本編の途中とかで披露するもの。アンコールの一番最後なんて鉄板の、誰もが知っているナンバーみたいな感じでいくところだと思うんですけれど、なんとなく6人の思い入れ的に、「『OVERSTAND』最後にやろう」という雰囲気になったんですけれど。

    ――終演後、手書きの歌詞カードを配っていましたね。YONCEさんの手書きでしょうか。

    YONCE いい詞が書けたな、と思って。手書きです。ちょうど神戸のライブの日に(歌詞カードを)書きましたね。ホテルで。

    ――歌詞の内容を理解してほしいと?

    YONCE そうですね。やっぱりライブにそれぞれのいろんな事情を抱えてライブに駆けつけてくれた人たちに、何か思い出に残るようなものを持って帰ってもらいたいなあというのがあって。その日最後に聴いた曲の歌詞を、と思って。

    ――ギターも印象的でした。

    YONCE もうあれ、すごいですよね。『OVERSTAND』に関してはメロディーも含めて、歌詞以外の部分が。ちょうど去年の11月、秋の終わりくらいに、メンバー6人とスタッフで、仕事じゃなしにグアムに行ったんですよ。単純にオフとして。ゆっくり羽を伸ばして帰って来て。その2日後とかに入ったスタジオで、最初にしたセッションでこの曲ができて。メロディーもババッとついちゃって。気付いたら全てのバンドのパーツがそろっていました。

    ――『WIPER』はいかにもセッションでできた、という感じがしますが、この曲は家で練り上げたのだと思っていました。

    YONCE ははは。実は、意外にも。わりといつも通りのスタイルで。しかもいつも通りの中でも一番シンプルなやり方でできたというか。

    ――今回の2曲は、昔でいう両A面みたいな意味合いでしょうか。

    YONCE 「陰と陽」「裏と表」、そういったことだと思っていて。どちらも俺たちが言わなきゃいけないと思っていることだし。どちらのサウンドも俺たちがやりたいと思っていることなので。それを誠実に作ってみたらこの2曲になった、というだけですね。どちらを立てようということもなく。

    ――新レーベル「F.C.L.S.」はどんなことをするために設立したのでしょうか。

    YONCE とりあえず、6人が今まで通りに、気楽に、へへへ、気楽にイエーって、ガキンチョ(子供)のようなスタンスで音楽を続けたいというのが一つ願いとしてある。まずそれをやらせてくれる環境。そしてなおかつ、そこで生まれた、しかも日に日にブラッシュアップされていく楽曲をより伝えやすく、広めやすくしていくための手助けというか、助太刀をしてもらうために、この船ができたという感じですかね。

    ――今までのスタンスを変えないための仕組みという意味合いでしょうか。

    YONCE そうですね。

    ――自分たちの存在が大きくなっていくと、周りからいろんなことを言われ、今まで通りにできなくなるという危惧があったのでしょうか。

    YONCE いわゆる典型的なメジャーデビューというものに対しネガティブなイメージがあるわけでは全くなかったんですけれども。どうあろうとも、「そもそもブレようがない、俺たちは」と思っていて。食うものがカップ麺しかなくても俺たちは変わらず格好いい曲を書ける自信がある。ただ、よりそれを届けたい人たちがいるというか、もっと多くの人に聴かれるべきものを作ってきたし、作っていきたいと思っているので。それを、もっと大きなやり方で、と思うとこのやり方がよかったのかなというのもあると思うし。既存のありもののレーベルに頼ってしまうと、フレキシブルな動き方ができないのかなあ、という(気持ちがあって)、バンドに携わるスタッフ含めたチームとして、より面白い作戦、戦術で試合ができる、そういう景色を見てみたいというのがあるんですよね。

     いわゆるアイドルとかではなく、バンド音楽の人たちがこういう形で世の中に出ていくっていうのは、俺がたとえばまだ高校生で、バンドが好きで、バンドやってみたい、みたいなガキンチョだったらとても明るいニュースだなと思うので。こういう話題をもっと世の中に広めていきたいし、知ってもらいたいなというのがありますね。

    ――ある有名歌手のエピソードを思い出しました。デビューの条件に「作った音楽に干渉しない」みたいな条件が入っていたと聞きます。同じような価値観でレーベルを作ったのかな、と想像しました。

    YONCE 干渉と言うとちょっと何か変な感じが……。

    ――環境?

    YONCE そうですね。制作に関する部分は自分たちだけで、自分たちだけでというか、ラフにやりたいという。小屋(演奏場所)を押さえられて、(録音は)このスタジオじゃなきゃだめ、こういうプロデューサーがついて、みたいなことでは多分おれたちの音楽は成り立たない。少なくとも現状は成り立たないと思っているので。多分ケンカしちゃうと思っているので。

    ――バンドとしてこれだけ人気が出て、今後、目指すものは何ですか。

    YONCE んんー、世界でフェスをやる、ですね。

    ――主催するということですか。

    YONCE はい。外タレ(外国人タレント)とかとフェスをやりたい。単純に、海外のロックスターとマイメン(仲間)になればいいと思うんですよ。それができればできると思う。やりたいですね。

    ――できそうな気がします。

    YONCE やります。

    (聞き手:読売新聞文化部 鶴田裕介)

    2017年07月26日 16時05分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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