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    ベネチア国際映画祭2017

    伝統の映画祭、マット・デイモン主演作で開幕

     第74回ベネチア国際映画祭が30日、開幕しました。イタリア・リド島を会場に行われる世界で最も歴史のある映画祭。現地から随時リポートします。

    • 30日、記者会見に臨むマット・デイモン
      30日、記者会見に臨むマット・デイモン
    • レッド・カーペットに到着した「ダウンサイジング」主演のマット・デイモンと妻のルシアナ・バロッソ(AP)
      レッド・カーペットに到着した「ダウンサイジング」主演のマット・デイモンと妻のルシアナ・バロッソ(AP)

     映画祭のオープニングを飾ったのは、アメリカのアレクサンダー・ペイン監督、マット・デイモン主演の「Downsizing/ダウンサイジング(原題)」です。

     昨年の「ラ・ラ・ランド」もそうでしたが、近年のオープニング作品は、アカデミー賞など、その年の賞レースを席巻した作品が目立ちます。さて、今年のベネチアが選んだ作品はどんなものか。ちょっと前のめり気味に見てしまいました。

     人間を手のひらに乗りそうなほど小さく縮めたら、地球の環境保全に貢献できる。食糧も廃棄物も生活コストも減らしてサステナブル(持続可能)な社会が築ける――。そのための技術がノルウェーの研究者によって開発された、という設定のもと繰り広げられる、おかしくも心に刺さる物語です。

     開発から数年後。アメリカ・オマハに住む平凡な夫婦、ポール(デイモン)とオードリー(クリステン・ウィグ)は、自分たちをダウンサイジングしようと決意します。ただ、彼らの目的は環境保全ではありません。体が小さければ生活コストがずっと低くなりますから、今ある資産でかなり豪勢な暮らしができる。人生を変えられる。そこに彼らは可能性を感じます。ダウンサイズした人たちのコミュニティーでのプレゼンテーションによれば、豪邸暮らしも夢ではない上、素敵なダイヤモンドのネックレスとイヤリング、そしてブレスレットをまとめて買っても80ドル(小さいですから)!

     でも、土壇場で思わぬ出来事が起こり、ポールは1人でダウンサイジング生活を始めます。こんなはずじゃなかった。そんな日々がある日を境に変わり始めます。ポールが暮らすマンションの上階の住人(クリストフ・ヴァルツ)の家で繰り広げられた狂騒の後、思わぬ出会いが待っていたのです。

    • 30日の記者会見でのホン・チャウ(左)とアレクサンダー・ペイン監督
      30日の記者会見でのホン・チャウ(左)とアレクサンダー・ペイン監督

     最初はしっかりとした理念から生まれたはずの「進歩」が、利己的な欲望によって消費されていく。理想のコミュニティーの裏では格差が生まれていく。ちくりと心に刺さる設定ですが、映画の核をなすのはペイン監督ならではの人間ドラマ。ポールが、上階の住人の家の掃除にやってくるベトナム人の女性(とてもキュートな、ホン・チャウ)と出会ってから、映画は、がぜんぬくもりを帯びてきます。噛めば噛むほど味が出る映画、といったところでしょうか。

     プレス向けの試写が行われた後の記者会見では、「欧米的価値観の男が、アジアの女性との出会いによって成長していく物語では?」という質問が飛びだしました。ペイン監督と共に脚本を手がけたジム・テイラーは「アレクサンダー(ペイン監督)の作品はアメリカ中西部の価値観を鍵にしてきた。考えてもいなかったけれど、ある意味、あなたは正しいね」と答えていたのも印象的でした。

    • 開幕式の会場サラ・グランデ前
      開幕式の会場サラ・グランデ前

     ちなみにこの映画は美術も見もの。ダウンサイジングした人々のコミュニティーの風景は、リアルなようでどこかおもちゃっぽい不思議な味わいです。ペイン監督によれば、イタリアの名匠、パオロ・ソレンティーノと仕事を重ねているステファニア・セラが担当したそう。ダウンサイジングの装置が、電子レンジ風なのも彼女のアイデアだそうです。

     ヴァルツと共に登場する怪優ウド・キアーもいい味出してます。

    • プレス試写が多数行われるサラ・ダルセナの様子
      プレス試写が多数行われるサラ・ダルセナの様子

     ところで、私がベネチアを取材するのは5年ぶり。ご時世のせいで警備がずいぶん厳しくなっていましたが、会場の様子もいろいろ変わっていました。試写会場が増え、もともとあった会場もお色直し。客席の座り心地も以前より快適に感じます。来月9日まで映画漬けになる身としては(うれ)しい限りですが、残念だったのは客席スペースの傾斜が足りないままだったこと。背の低い私は、前に大きな人が座ってしまうと、もうお手上げ。ダウンサイジングしてないんですけどね。

     なんて、のんきなことを言っていたら、初日の夜のプレス向け試写で、ぞくぞくさせられる作品に出会いました。アメリカのポール・シュレイダー監督「First Reformed/ファースト・リフォームド(原題)」です。これもまた、今の世界の姿をふまえ、どうやって生きていくべきかを探る一本。この作品については、また改めてレポートします。(文化部 恩田泰子)

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    2017年08月31日 12時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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