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    ベネチア国際映画祭2017

    “半魚人”との美しい恋に驚き

    デル・トロ監督作「ザ・シェイプ・オブ・ウォーター」

     今年のベネチア国際映画祭で上映される新作の長編映画は73本。このほかに短編が16本、テレビシリーズが2つ、クラシック部門(修復された名作と、映画監督や映画史をめぐるドキュメンタリーなどで構成)の上映作品が29。さらに、今年から新設されたVR部門では31作品……。上映作品の選定にあたって映画祭側では、全部で3500本近くの作品(うち長編は1772本)を見たそうです。

     見たい作品が多すぎて困ってしまうのですが、メイン・コンペティション部門に選出された21本は必ず見ることにしています(初日のリポートで触れた「Downsizing/ダウンサイジング(原題)」「First Reformed/ファースト・リフォームド(原題)」もコンペ作品です)。

    • 「The Shape of Water/ザ・シェイプ・オブ・ウォーター(原題)」の一場面。©2017 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved
      「The Shape of Water/ザ・シェイプ・オブ・ウォーター(原題)」の一場面。©2017 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

     同部門の試写は、毎日2~3作品ずつ。2日目の31日は3作品が新たに上映されましたが、朝一番で見た「The Shape of Water/ザ・シェイプ・オブ・ウォーター(原題)」(ギレルモ・デル・トロ監督)にいきなりノックアウトされてしまいました。とても素晴らしかったのです。

     舞台は1960年代のアメリカ。主人公のイライザ(サリー・ホーキンス)は、政府の秘密研究機関で清掃の仕事をしていますが、ある日、水中に閉じこめられていた不思議な生きもの(ダグ・ジョーンズ)に出会います。魚のような、人のような……。孤独を抱えて生きてきたイライザは、アマゾンで捕らえられたというひとりぼっちのこの生きものと次第に心通わせ、やがて恋に落ちます。そして、命の危機にさらされている「彼」を救おうとしますが、己の力を振りかざすエージェント(マイケル・シャノン)の脅威が迫り…。

     ラブストーリーであり、モンスター映画であり、フィルムノワールのにおいもする。往年のミュージカル作品への敬愛もたっぷり。東西冷戦や公民権運動の時代を背景に、暴力や権力の周囲にはない美しいもの、そしてプライドを求めてつつましく生きる、はずれ者たちの映画でもあります。

    • 31日夜、公式上映に臨んだギレルモ・デル・トロ監督©La Biennale di Venezia - foto ASAC
      31日夜、公式上映に臨んだギレルモ・デル・トロ監督©La Biennale di Venezia - foto ASAC

     しかし、幼いころのトラウマで口のきけないヒロインとモンスターが繰り広げる、言葉を超えた愛の情景のなんと美しいことでしょう。水の中のラブシーンには、本当にうっとりさせられました――と、ここまでお読みになって、「いやいや半魚人との恋なんて、ないでしょ」と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、名優たちと映像、そして、映画の達人であるデル・トロ監督は、それを見事に成立させています。

     ヒロインを演じる名女優ホーキンスはもちろんですが、「怪物」を演じるジョーンズのなんと優美なこと。彼となら、恋はあり得ます。そう信じられます。「パンズ・ラビリンス」をはじめデル・トロ監督で数々の超自然的な存在を演じてきたジョーンズですが、「ヘルボーイ」でエイブ・サピエン(これも半魚人です)の役で登場した時の衝撃は今でも忘れられません。知的で優美。今作では、そこにさらに神々しさが加わった美しいクリーチャーを見事に演じています。体のシルエットはもちろんのこと、繊細な一挙一動を通して、心の動きが伝わってきます。ラテックス製のコスチュームを着ているにもかかわらず。

     こんな演技ができるのは、ジョーンズを置いてほかにはいません。ぜひ、今回のベネチアで男優賞をとってほしいと思うのですが、まだ映画祭は2日目。ちょっと気が早いでしょうか。(文化部・恩田泰子)

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    2017年09月01日 15時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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