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    ベネチア国際映画祭2017

    難民や人種・宗教問題、映画にできることは

    • 「Human Flow/ヒューマン・フロー」の一場面。© 2017 Human Flow UG 
      「Human Flow/ヒューマン・フロー」の一場面。© 2017 Human Flow UG 

     今、私は来し方行く末を考えています――。なんて言うと大げさに聞こえるかもしれませんが、今回のコンペティション部門で序盤から上映されている作品には、それぞれのやり方で、この世界が抱えるさまざまな問題が投影されていて、一体どうやって生きていくべきなのだろうか、なんてことを思わず考えてしまっています。

     環境問題、変わりゆく家庭やコミュニティー、人種や宗教の壁、難民問題……。浮かび上がる問題はいろいろですが、共通しているのは、どの作品も、そうした問題を描くためにドラマがあるのではないこと。人間のドラマをきっちり描くことによって世界の姿が浮かび上がってきているのです。

     ドキュメンタリーも2作品ありますが、そのうち1本は、現在はベルリンを拠点とする中国の現代美術家、アイ・ウェイウェイによる「Human Flow/ヒューマン・フロー」。題材は難民問題。23か国で取材・撮影を敢行しています。

     2016年のベルリン国際映画祭最高賞を受賞した「海は燃えている」(ジャンフランコ・ロージ監督)は難民たちが押し寄せるイタリア最南端の島にフォーカスしたドキュメンタリーでしたが、今度のアイ・ウェイウェイ作品は、各地の現実を次々に見せていきます。個々の場所の現状を見せるだけでなく、それをつなげた「全体像」が提示されていくのです。端正な映像にも思わず引き込まれます。製作には200人以上のクルーが参加。撮影者たちのクレジットの中には、クリストファー・ドイルの名前もありました。

    • 公式上映に臨むアイ・ウェイウェイ監督 © La Biennale di Venezia - foto ASAC
      公式上映に臨むアイ・ウェイウェイ監督 © La Biennale di Venezia - foto ASAC

     なぜ、日々報道されているトピックを映画にするのか、と考える人もいると思います。事態は刻々と変わっているわけですから。

     この作品の記者会見でも、製作に時間を要する映画というメディアでこの題材を扱う意味を問う質問が出ましたが、プロデューサー陣の1人がわかりやすく説明をしていました。「(難民問題をめぐっては)毎日新しいニュースが入ってきて短く報じられる。でも、この映画の目的は、難民問題を、それぞれの地域の問題としてではなく、世界的な大問題としてつかむこと。一つのフィルムで世界をつないで、どんな世界が欲しいか、(その一員である観客に)問いをつきつけている」

     しかし、あまりにも大きな問題に対して、自分に何ができるのか。映画祭初日に上映された、アメリカのポール・シュレイダー監督の「First Reformed/ファースト・リフォームド」は、若い世代が未来に希望を持てない危機的状況に対して、何ができるのか、悩める聖職者(イーサン・ホーク)を主人公にした物語でしたが、その苦しみがなんだか、他人ごとではないように感じます。

     ただ、これまで出会った作品の大半には共通点があります。それは、未来へのヒントをさりげなく指し示してくれているということ。

     記者会見でアイ・ウェイウェイは、こんなことを言っていました。「これは人間の悲劇。でも、解決のための答えを我々は知っている。他者とつながりを持つことだ。地政学や地域の政治、技術的問題だけを問えば、ポイントを見失う。これはヒューマニティーの問題。この(危機的)状況は難民だけの問題ではなく、我々みんなのことだと」

    映画には、そのつながりをもたらす力があると改めて思います。(文化部・恩田泰子)

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    2017年09月04日 17時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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