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    ベネチア国際映画祭2017

    是枝監督、福山さんの膝に手…ほっとした公式上映

     映画祭のプレス用試写にはブーイングが付き物。盛大な拍手とブーイングが拮抗(きっこう)する作品は要注目です。賛否が真っ二つに分かれるほどの個性があるわけですから。でも、ブーイングばかりが聞こえてくる時は…「私も!」と思うことが多いです。

    「マザー!」に豪快なブーイング

    • ジェニファー・ローレンス主演の「マザー!」
      ジェニファー・ローレンス主演の「マザー!」

     今年のベネチアはブーイングが起きてもおとなしめだったのですが、5日の朝、久しぶりに豪快なのを聞きました。ベネチア常連、ダーレン・アロノフスキー監督の「mother!/マザー!(原題)」、ジェニファー・ローレンス主演のホラーです。ローレンス演じるヒロインは、夫である小説家(ハビエル・バルデム)と草原の真ん中に立つお屋敷にふたり暮らし。かつて火事で焼け落ちたその家を美しく生まれ変わらせたのは彼女です。が、その大切な家に夫が怪しい夫婦(エド・ハリス、ミシェル・ファイファー)を招き入れてしまいます。

     前半は、ローレンスのかわいらしさと、ファイファーの「こわ美しさ」を堪能していましたが、中盤以降はカオス。ストーリーを深読みしようと思えばできないこともないのですが、うーん。でも、拍手もちゃんと起きていたことを、ここに付け加えておきます。拮抗はしていませんでしたけれど。

     5日は、コンペティション部門で是枝裕和監督の「三度目の殺人」の公式記者会見と公式上映、そして、新しい潮流や若い才能を中心に紹介するオリゾンティ部門で、日本の五十嵐耕平監督と、フランスのダミアン・マニヴェル監督が共に監督した「泳ぎすぎた夜」の公式上映も行われました。

    是枝監督初のサスペンス「三度目の殺人」

     「三度目の殺人」は、ある殺人事件の裁判をめぐる法廷劇。是枝監督初のサスペンスでもあります。

     福山雅治さん演じる主人公の弁護士・重盛にとって、裁判は当事者の利害調整の場であって、真実の究明の場ではありません。でも、「二度目」の強盗殺人を犯したとして起訴された三隅という男の弁護を引き継いだのを機にその考えが揺らぎ始めます。ころころと変わる三隅の供述に翻弄されながら調査を進めるうちに、究明する必要などないと思っていた真実の解明にのめりこんでいくのです。そして重盛は答えの出ない問いに向き合うことになります。人は人を裁けるのか。救うことができるのか――。

    • レッドカーペットでの是枝組
      レッドカーペットでの是枝組
    • 公式上映前、ベネチア映画祭のディレクター、アルベルト・バルベラさんと抱き合う是枝監督
      公式上映前、ベネチア映画祭のディレクター、アルベルト・バルベラさんと抱き合う是枝監督

    • いざ上映会場の中へ!
      いざ上映会場の中へ!
    • 上映終了後、日本の報道陣の取材に応じた(左から)是枝監督、役所広司さん、福山雅治さん、広瀬すずさん
      上映終了後、日本の報道陣の取材に応じた(左から)是枝監督、役所広司さん、福山雅治さん、広瀬すずさん

     記者会見と公式上映には、是枝監督、福山さん、三隅役の役所広司さん、もう一つの重要な役である被害者の娘を演じる広瀬すずさん、そして音楽を担当したイタリアの作曲家、ルドヴィコ・エイナウディさんが参加。公式上映会場であるサラ・グランデ前のレッドカーペットを5人で歩きましたが、広瀬さんをしっかりエスコートする福山さんの姿が印象的でした。

     ここのところ、いわゆるホームドラマを撮ってきた是枝監督。「家族の作家」というイメージが強いのですが、今回はサスペンス。公式上映が終わるまでは「どういう風に届くのか、緊張していた」そうです。でも、観客は上映中はひたすらスクリーンに集中。そしてエンドロールが始まると総立ちになって歓声と拍手をおくっていました。とてもいい感じ。

     福山さんは上映後、日本の報道陣に対してこんなふうに言っていました。「公式上映の会場に入った時もそうなんですけれど、監督への歓声がひときわ大きく、このベネチアでも監督の作品をすごく心待ちにしているファンの方、メディアの方がたくさんいらっしゃるんだなあと」。監督にはその分、プレッシャーもあったのだろうとうかがわせるエピソードを、福山さんが明かしました。「予想していたよりも早い段階で拍手がわき起こって、『あ、すごくいい届き方をしたんだな』と思っていたんですね。その時に監督が隣だったんですけれど、監督が僕の膝に手を置いてくださった。ほっとされたのかなと思って、僕もすごくその瞬間ほっとしまして、(うれ)しかったですね」。上映後、みなさん、とっても良い表情をしてらっしゃいました。

    「雪が」「子供が」撮りたかった…日仏合作「泳ぎすぎた夜」

    • 公式上映に臨んだ「泳ぎすぎた夜」の(左から)ダミアン・マニヴェル監督、五十嵐耕平監督、古川鳳羅(こがわ・たから)くん
      公式上映に臨んだ「泳ぎすぎた夜」の(左から)ダミアン・マニヴェル監督、五十嵐耕平監督、古川鳳羅(こがわ・たから)くん
    • 北野武サッサリ・ヴェネツィア・ファン・クラブのみなさん
      北野武サッサリ・ヴェネツィア・ファン・クラブのみなさん

     オリゾンティ部門の「泳ぎすぎた夜」は、雪の町で繰り広げられる、6歳の少年の小さな小さな冒険物語。「雪」が撮ってみたかったマニヴェル監督と、「子供」が撮りたかった五十嵐監督が、青森県弘前市で1か月半かけて撮った作品です。

     詩情あふれる端正な映像。そしてふたりの監督が弘前で撮影の準備中に出会い、主演することになったという古川(こがわ)鳳羅(たから)くんの自然な魅力。描かれるのは大冒険ではありませんし、大事件も起こりませんが、目が離せなくなってしまいます。

     公式上映には鳳羅くんも参加。終了後の質疑応答で撮影中に大変だったことを聞かれ、「カメラを見ないことと、笑わないようにすること」と答えているのを聞いて、ちょっと驚きました。映画の中の姿があまりにも自然だったので、何か、カメラを意識させないような手法で撮影しているのかな、と勝手に推測していたのです。監督たちによれば「鳳羅くんはアクターですよ」(普段俳優の仕事をしているわけではなく、演じる才能があるという意味で、です)。撮影中にアイデアも出していて、実際に作品に取り入れたことも少なくなかったそうです。

     しかし、5日のあれこれが終わってほっとしていたら、映画祭ももう最終盤です。9日夜にクロージング作品は北野武監督の「アウトレイジ 最終章」。北野作品の上映には必ずやってくる「北野武サッサリ・ヴェネツィア・ファン・クラブ」の皆さんもリド島に登場です!(文化部・恩田泰子)

    「三度目の殺人」公式サイト
    「三度目の殺人」予告映像

    写真特集「三度目の殺人」
    写真特集・第74回ベネチア国際映画祭
    キャリア重ね、また一緒に…フォンダとレッドフォード

    2017年09月07日 15時47分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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