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    第30回東京国際映画祭

    松田聖子さんや河瀬直美監督が登場

     週末も、東京国際映画祭ではさまざまなイベントが行われました。コンペティション部門の作品の上映も進み、「おっ!」と思うパワフルな作品のワールド・プレミアも行われました。

    「ラーメン」と「バクテー」が出会ったら?

    ▼日本とシンガポールが温かな合作

    • 27日、「Ramen Teh(ラーメン・テー)」完成報告会に臨んだ(右から)別所哲也さん、松田聖子さん、斎藤工さん、ジネット・アウさん、マーク・リーさん、エリック・クー監督
      27日、「Ramen Teh(ラーメン・テー)」完成報告会に臨んだ(右から)別所哲也さん、松田聖子さん、斎藤工さん、ジネット・アウさん、マーク・リーさん、エリック・クー監督

     映画祭で行われるのは、映画上映だけではありません。さまざまな国の映画人たちのクロスポイント。国を越えた、さまざまなコラボレーションの出発点ともなります。

     27日には、ラーメンと肉骨茶(バクテー)という、それぞれの国の料理を鍵に日本とシンガポールをつなぐ映画「Ramen Teh(ラーメン・テー)=原題」(日本、シンガポール、フランスの共同製作)の完成報告会が行われました。監督は、シンガポールのエリック・クーさん。日本では、漫画家・辰巳ヨシヒロさんをめぐる映画「TATSUMI マンガに革命を起こした男」でも知られる気鋭です。

     報告会には、クー監督のほか、主演の斎藤工さんをはじめ、松田聖子さん、別所哲也さん、そして、シンガポールからは、コメディアン・俳優のマーク・リーさん、人気女優ジネット・アウさんという豪華な顔触れが登場し、作品の魅力や撮影時の思い出を語りました。

     斎藤さんが演じる主人公は、群馬県高崎市で父とラーメン店を営んでいましたが、父の死をきっかけに、幼い頃に亡くしたシンガポール人の母との思い出をたどり、同国でバクテーの店を営む叔父を探します。別所さんは父方の叔父、松田さんはシンガポールで暮らす日本人のフードブロガーを演じます。

     今回、キャストに次いで大切なのが、ラーメンとバクテーの存在なんだとか。バクテーは、骨付き豚肉などを煮込んだシンガポール料理。どうやらバクテーとラーメンのコラボ料理が、この作品の“キー・フード”のようです。斎藤さんは「バクテーもラーメンも元々は労働者の食べ物という背景があります。単純に食を組み合わせただけの映画ではありませんよ」と話しました。

     また別所さんは、「素晴らしい方々との共演がかなってうれしい。この映画はシンガポールと高崎という二つの場所をつなぐ物語です」。松田さんは「食を通じて家族の愛、人のつながりを学べました」と笑顔を見せました。リーさんが「斎藤さんは僕よりちょっと背が高くて、僕よりちょっとカッコイイ」と、コメディアンらしい発言で笑いを誘っていたのもほほえましかったです。

     ちなみに、報告会は、松田さんへの思わぬ告白タイムにもなりました。リーさんが「聖子さんは中学以来の僕のアイドル。(当時は)寝室にポスターを貼っていたんです」と打ち明けると、別所さんも「高校の時、寝室にポスターを貼っていました。久々の共演で恋に落ちそうな気分でした」。さらには監督も「私ももれなく大ファン!!」。うーん、なごやか!

     残念ながら、この日は短いダイジェスト版しか見ることができませんでしたが、とても温かな雰囲気の作品だという印象。「今の世の中は苦しいことが多い。心温まる作品を世に送り出せて本当にうれしいです」とクー監督は語っていました。(文化部 武田裕芸)

    藤竜也さんが「怖い」と思ったのは

    ▼河瀬直美監督のマスタークラス

    • 28日、「TIFFマスタークラス」のトークイベントに登壇した河瀬直美監督
      28日、「TIFFマスタークラス」のトークイベントに登壇した河瀬直美監督

     28日には、六本木アカデミーヒルズで「TIFFマスタークラス 河瀬直美スペシャルトークイベント」が行われました。若い映画ファンや次世代を担う映画作家に向けたセミナー形式のトークイベント。今年は、河瀬さんや、音楽家の坂本龍一さん、フィリピンのブリランテ・メンドーサ監督らが参加です。

     この日のイベントでは、河瀬監督がエグゼクティブ・ディレクターを務める「なら国際映画祭」の映画製作プロジェクトから誕生した「東の狼」(カルロス・M・キンテラ監督)などの上映の後、河瀬監督が今年公開の「光」や、その劇中映画で藤竜也さんが主演した「その砂の行方」の撮影秘話などを披露しました。

     河瀬監督は、ゲストとして来場し、客席に残っていた藤さんを巻き込んで、ユーモアあふれるトークを展開。藤さんに「怖い」と思われていたことや、これまで起用した若い女優から「殺したい」と言われたりしたことを打ち明け、会場の笑いを誘っていました。

     また、河瀬監督が、大阪の専門学校時代に課題として撮影した8ミリフィルムも上映されました。当時、人や花など自分が撮影したものだけではなく、“撮影した時の自分自身”がフィルムに刻み込まれていることに気づき、その感動が映画監督の原点になったそうです。そして、「映画への愛が今の私を形作っている。私が生きている証しが映画」「主観と客観の両方がないと強い映画にはならない。誰もが作れるものを量産するのではなく、私にしか作れないものをその時に作る」などと熱く語りました。

     来場者との質疑応答は30分に及び、充実したトークイベントでした。

    シリーズ全作まとめて「朝まで同“ソウ”会」

    ▼ミッドナイト・フィルム・フェス!

    • 28日、「ミッドナイト・フィルム・フェス!」のトークイベントで、映画「ソウ」シリーズの魅力について語る魔界人アイドル・椎名ぴかりんさん
      28日、「ミッドナイト・フィルム・フェス!」のトークイベントで、映画「ソウ」シリーズの魅力について語る魔界人アイドル・椎名ぴかりんさん

     また、28日夜には、今年初めての「ミッドナイト・フィルム・フェス!」も行われました。さまざまなジャンルのオールナイト上映を、六本木ヒルズの6スクリーンで同時に行うという企画。雨の中、大勢の観客が来場していました。その一つ、「『ジグソウ:ソウ・レガシー』公開記念! 朝まで同“ソウ”会!」に先立つトークイベントをのぞいてきました。

     イベントには、魔界人アイドル・椎名ぴかりんさん(アイドルの椎名ひかりさんの別名義)、映画評論家の松崎健夫さんが出席し、「ソウ」シリーズの魅力や好きなキャラクター、好きなトラップ(わな)などについて語り合いました。なにしろ、ラストのどんでん返しが売りのこのシリーズ。観客の中には第1作を見ていない人もいたため、何を話してもゲームオーバー、いや、ネタバレになりそうなスリリングな展開。最前列で聞いていた記者も、手に汗握るイベントでした。(文化部 田中誠)

    圧倒的にパワフル、中国映画

    ▼コンペティション部門

    • 29日、「迫り来る嵐」の上映に臨んだ(左から)ドン・ユエ監督、主演のドアン・イーホンさん
      29日、「迫り来る嵐」の上映に臨んだ(左から)ドン・ユエ監督、主演のドアン・イーホンさん

     週末、コンペティション部門の上映が進み、星取表も一気に更新ですが、2人の記者の採点、ちょっと割れています。個々の作品への評価は見る人によって異なる傾向が例年以上に強い…というのが、上映の合間にさまざまな人と意見交換してみての感想です。

    これまでのところ、突出した個性という点では、ジョージアに伝わる伝説を土台にした「泉の少女ナーメ」(ザザ・ハルヴァシ監督)の映像美に目を見張らされました。エンターテインメント性という点では、「さようなら、ニック」(マルガレーテ・フォン・トロッタ監督)が文句なしの出来だった気がします。

     そんな中、ずぬけてパワフルに感じられたのは、中国映画「迫り来る嵐」。1976年生まれのドン・ユエ監督による初長編で、1997年、経済発展に向けて中国社会が激変した年が舞台。激動する社会の中で、ある連続殺人事件の真相究明にとりつかれた男(ドアン・イーホン)をめぐるスリラーです。時代の転変と、人の心のありようを絶妙に結びつけたストーリー、ダイナミックな演出、そしてドラマチックな映像。うーん、堪能しました。

    「迫り来る嵐」は東京国際映画祭での上映がワールド・プレミア。こんなにもイキのいい映画が東京から世に出て行くということを、とてもうれしく思います。(文化部 恩田泰子)

    2017年10月30日 13時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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