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    カンヌ国際映画祭2018

    見応えあったイ・チャンドン監督「バーニング」

    • イ・チャンドン監督の「バーニング」
      イ・チャンドン監督の「バーニング」

     カンヌ国際映画祭は19日が最終日。長編コンペティション部門に出品されている「万引き家族」(是枝裕和監督)、「寝ても覚めても」(濱口竜介監督)、短編コンペティション部門の「どちらを選んだのかはわからないが、どちらかを選んだことははっきりしている」(佐藤雅彦、川村元気らの共同監督)の受賞があるのか、今からドキドキしています。

     全作品を見終わっていないので予想は難しいのですが、後半に上映された作品の中では、韓国のイ・チャンドン監督の「バーニング」は見応えがありました。原作は、村上春樹さんの短編小説「納屋を焼く」です。かなり脚色してあるようですが、都会に暮らす裕福な男性と地方出身の貧乏な男性が、一人の女性を巡って争う心理ドラマになっています。嫉妬や劣等感など細かな感情の描写が見事で、生きる意味を見失い、怒りの矛先をなくした現代の若者の気分が伝わってきました。受賞の可能性が高いと思います。

    • スパイク・リー監督の「ブラッククランスマン」
      スパイク・リー監督の「ブラッククランスマン」

     今年は突出した作品がなく、多くの作品に受賞の可能性があるような気がしています。受賞結果は審査員の好みによるところが大きいのですが、モノクロの圧倒的な映像美で、冷戦下の男女の愛を描いたパヴェウ・パヴリコフスキの「コールド・ウォー」(ポーランド)、日和見主義の男性が共同体から孤立し、暴力的手段に訴えるまでの葛藤を描いたマッテオ・ガローネ監督の「ドッグマン」(イタリア)は、受賞が有力だと思います。また、映画業界の男女平等の実現に向けて行動を起こした今年のカンヌだけに、3人の女性監督のいずれかに何らかの賞が授与されるでしょう。また、米国の人種差別をテーマにした、社会派の娯楽作「ブラッククランスマン」のスパイク・リー監督が、手ぶらで帰ることはない気がします。

    VR作品に特化したブースも

    • 上田慎一郎監督
      上田慎一郎監督

     ところで、今年のカンヌでは、国際見本市「マルシェ・ドゥ・フィルム」の一番目立つところに、VR(バーチャル・リアリティー、仮想現実)作品に特化したブースがありました。

     11日には、「カメラを止めるな!」で注目を集めている上田慎一郎監督が演出を担当した「ブルーサーマルVR~はじまりの空~」が上映されました。埼玉県の「彩の国ビジュアルプラザ」が行っているVRコンテンツの人材育成プログラムの一環として制作された作品で、物語と共に、グライダーで空を飛ぶことを疑似体験できます。「ブルーサーマル」と併せ、日本を代表する特撮作品「ウルトラマン」、伝統芸能の狂言を題材にしたVR作品も上映され、会場は大盛況。上映終了後は、上田監督をつかまえ、興奮気味に感想を語っていく来場者の姿もありました。ベネチア国際映画祭がVR作品の上映に力を入れていますが、カンヌも、新しい映像表現であるVRの可能性に関心を持ち始めているようです。

    • 専用のゴーグルを装着し、日本のVR作品を楽しむ来場者。思い思いの方向を見ている
      専用のゴーグルを装着し、日本のVR作品を楽しむ来場者。思い思いの方向を見ている

     映画とVR作品の違いについて、「映画だとカット割りをして、見せたいところを見せられますが、VR作品は(360度)どこでも見られるので、視線をどう誘導するかがポイントでした。映画というよりゲームの延長に近いような気がしました」と語る上田監督。これまで、娯楽性を追求した、いわゆるジャンル映画を作ってきたため、「カンヌに来ることはないと思っていました」と笑いながらも、「この映画祭に帰ってきたいからいい作品を作ろうというモチベーション(動機付け)にもなるので、映画祭というのは自分にとっても大事なところだなと思っています」と決意を新たにしていました。新進気鋭の監督にそう思わせるのもカンヌの魅力なのでしょう。(田中誠)

    短編コンペティション部門「どちらを選んだのかはわからないが、どちらかを選んだことははっきりしている」カンヌ国際映画祭公式ページ

    https://www.festival-cannes.com/en/films/dochirao-erandanokawa-wakaranaiga-dochirakawo-erandakotowa-hakkirishiteiru

    「どちらを選んだのかはわからないが、どちらかを選んだことははっきりしている」予告編

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    (c)2018『どちらを選んだのかはわからないが、どちらかを選んだことははっきりしている』製作委員会

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    2018年05月18日 15時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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