「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」(米)
喪失感埋めた母子愛
2001年9月11日、米同時テロで多くの人が大切な誰かを失った。その大きな喪失感を人々はまだ埋めきれないでいるのだろう。この映画は、世界貿易センタービル倒壊から1年がたとうとするニューヨークが舞台である。
大好きなパパ(トム・ハンクス=写真左)をあの日失った11歳のオスカー(トーマス・ホーン=同右)が、父との絆を求めて歩き回る。クローゼットにあった花瓶から鍵が見つかる。これは僕に残したメッセージに違いない。ぴったりの鍵穴を見つけなければならない。袋に書かれた「Black」の文字から、彼は市内すべてのブラックさんを訪ねるのだ。観客は、多民族が暮らす多様なニューヨークの姿を、オスカーの冒険と共に体験することになる。
「リトル・ダンサー」で少年のみずみずしい演技を引き出したスティーブン・ダルドリー監督は、ここでも絶妙の手腕を見せる。オスカー役に起用したホーンは演技経験ゼロ。しかも、演じる少年はアスペルガー症候群らしい、という難しい設定である。
数字とルールにこだわり、時に感情が爆発してしまう。大きな音に、地下鉄に、橋におびえ、外を歩く時は気持ちを静めるために鳴らすタンバリンを欠かせない。父との「調査探検」遊びでの楽しそうな表情、空っぽの
冒険の末にオスカーが得るのは、彼自身の苦悩と向き合い、自分を認めることの大切さ、そして心が離れてしまっていた母との愛の再確認だ。大切な人を失った悲しみは忘れられなくても、人との心のつながりによって、喪失感は少しでも埋めることができる。それは、大震災被災者や、さまざまな困難に苦しむ世界中の人々へのメッセージでもあるように感じた。
ただ、終盤、母親がオスカーに自分の行動を細かく話すのは冗舌で説明過多。第三者的視点でさらりと描いた方が、より感動が深まったのではないだろうか。米アカデミー賞で作品賞候補となり、オスカーと共に行動する、声を失った老人役のマックス・フォン・シドーも助演男優賞にノミネートされている。2時間9分。有楽町・丸の内ピカデリーなど。(福永聖二)
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